PIAZZAもそろそろ錆が気になる車令になってきました。とっくに錆びているっていう人も勿論居るでしょう。そこで、定番と呼ばれる「錆びる場所」と、簡単な対処方法を紹介します。あくまで個人的な理論なので参考程度にして下さい。
PIAZZAの錆に関する基本的知識
古いとは言え、PIAZZAの設計時にはそれなりに錆対策が為されていました。例えば防錆鋼鈑や塗装もそうなのですが、構造自体があまり錆が目立たないように出来ています。
それは例えば117Coupeと比べると歴然としていて、117Coupeではルーフ前端・後端や、特徴的な形状のリヤフェンダー等、非常に目立つ所が錆びてきますが、PIAZZAの場合はあまりそういうことはありません。ざっと見た感じだと悪くないな、っていうのが結構多いのです。
但し、それはあくまで「ぱっと見」の話で、色々部品を外してみると、その裏側は凄いことになっていて「嗚呼、見るんじゃなかった」なんてこともよくある話です。このように、錆が見えないのはある意味では良いことですが、発見が遅れて見つけた時には既に手後れ、という見方も出来ますから、一概にどちらが良いとは言えません。
当然ながら、後期モデルの方が錆対策が進化しています。86型以降でだいぶ変わったようですが、このページで紹介する「錆の名所」の多くは83型JR130の錆取り経験に基づくものです。従って、83型JR130を例を紹介したところで、88型に乗っている人にはあまり意味が無いかもしれません。その辺は割り引いて考えてください。勿論、車の保管状況や利用状況によっても錆具合は極端に変わります。
錆の発見:基本編
当然ですが、白い車の方が簡単です。錆自体も目立ちますが、水垢に混じって錆色な跡があったりすると、それがすぐに判るからです(そしてその跡を辿ると錆があるのです)。黒い車だとそうはいきません。とにかくダーク系の色だと発見が遅れることが多いので、触ったり叩いたりしてみると良いかもしれません。揺すっただけで錆が落ちてくる、なんていうこともあったりします(滅多にありませんけど)。
また、「錆の兆候」を発見することも重要です。どう見ても水垢とは思えないような茶色っぽいスジ状の跡や、蕁麻疹みたいなポツポツ、ちょっとした塗装のヒビなんかを発見してしまったら要注意です。
さて、まずは何も外さなくても見える部分や、工具が要らない箇所を探してみましょう。
- フロントフェンダー先端、バンパーとの接合部(隙間から覗いてみる)
- ボンネット先端(表面は大丈夫でも、裏から見てみる)
- ドアミラーの付け根
- 屋根周り(ウェザーストリップをちょっとずらしてみると良く判る)
- ハッチゲート(ワイパー近辺、ガラスの縁、裏側、取付け部付近)
- 給油口周辺(フューエルリッド自体も要注意)
上記以外でも、パネルの端部分(例えばドアの縁やハッチゲート、ボンネット等)は何かのはずみで擦ったりする可能性があるため、他の場所よりは錆が発生する可能性が高いです。
続いてハッチゲートを開けてみます。ダンパーがやばい車ではあまり錆探しに熱中しない方が良いでしょう。当然ながら、トランクの荷物は全部外に放り出し、カーペット類は全部めくって、スペアタイヤも外します。よく錆びるのはこんなところです。
- スペアタイヤのあるところ
- 燃料ポンプ用ケーブルの蓋
- テールランプ近辺
- その他色々、隅々まで見てみる
その後は、リヤバンパーの下から潜り込んで見てみます。
- ナンバープレートの裏側、スペアタイヤのあたり
- ナンバー灯の穴からその先を覗く
リヤバンパーの下を覗くなら、ついでにフロントバンパーの下も覗きます。但し、こちらはアンダーガードがあるのであまり良く見えません。フロントバンパーの骨の錆は多少判ります。スポイラー付きだとあまり見えませんけど。
さて、そろそろ工具を持ち出して外しにかかります。いちいち外すのは面倒なので、覗いてみるだけでも構いませんけど、その結果致命的な錆を発見し損ねてもそれは自業自得です 🙂
とりあえずボンネットを開けて、ちょっとした小物を外してみると判る部分です。
- ウインドウウォッシャー液のタンクの裏側
- その反対側(リレーボックスの辺り)
- 冷却液のリザーバタンクの裏側と、それを固定する垂直鉄板の付け根
- バッテリー受け皿近辺
- ヒューズボックスの裏側と、ヒューズボックスとバッテリーの間にある垂直鉄板の付け根
- フロントパネルとエンジンルーム(?)の接合部
- フロントワイパーのモーターがあるところ(カバーを外す)
- バルクヘッドとエンジンルームの接合部
- ワイパー機構が入っている場所から出ている左右の黒い排水ゴムの裏側
まあこんなところでしょう。エンジンルーム以外は、何を外すにもちょっと大掛かり(リヤバンパーを除く)になってしまうので、それは次に示します。
錆の発見:中級編
もしバンパー、フェンダー、ライト、ロッカーカバー等を外す機会があれば(自分の車のこういう部品を外すことはそうそう無いと思うけど)、以下の箇所を裏から覗いてみることをお勧めします。判り難い表現ばっかりですが、要するに「外したついでに隅々まで、裏側まで眺めて触って叩いてみる」ということです。
- ヘッドライトの裏側あたり(特に鉄板の合わせ目)
- バンパー支柱の下の方(同上)
- フロントグリルの裏側(同上)
- フェンダー前端部のステー近辺(ステー溶接部近辺)
- フェンダー上端をネジ止めしている部分の裏側
- フェンダーアーチの裏側
- フェンダーの固定部
- ロッカーカバーの裏側(つまりサイドシル)
- リヤバンパーの裏側
- ナンバープレートステーの裏側
- とにかくウェザーストリップを外しまくって、その裏側を見てみる
- リヤサイドウインドウの後端部
フェンダーに限らず、何かをネジ止めしている箇所や、ちょっとした泥が溜まりそうな小さな隙間は要注意です。外してみると実は錆びていた、というのがよくあります。これ以外にも、フロアとガソリンタンクの間の隙間とか、そんな所も錆びるのかもしれません。
また、外装(というより室外)だけではなく、内装を外してみて発見される錆もあります。室内なんてそうそう錆びるわけがないかと思いきや、実は案外錆びるものです。特に雨漏りがある車は要注意でしょう。
とは言っても、正直言って外すのが面倒なので、車庫保管、機械洗車使用暦無し、雨漏り無し等の条件が揃っているのなら、あんまり気にしなくてもいいかもしれません。
- Aピラーの内側(機械洗車が原因との噂)
- 天井の後端
- ダッシュボードを外した裏側
- ドアそのもの(ドア内張りを外すと見える部分)
- 窓のレール
他にも色々あるでしょう。とにかく外したついでに隅々までじっくり眺めるべし。
錆の発見:上級編
外せるものは全て外して、リフトで持ち上げて眺めましょう。当然エンジンなんかも外すんですよ。そうそう、持ち上げた瞬間にボデーが崩れ落ちても責任は持てません(実際、古い車だとジャッキアップした部分が朽ち果てるっていうこともあるんですよ。ウマだけじゃなくて外したホイールも下においておいた方がベター)。
とまあ目茶苦茶なことを書いてしまいましたけど、要するに、素人が完璧を期すのはちょっと無理かな、ってことです。何もやったことが無い人がレストア屋並の仕上がりを求めるのは勿論自由ですけど、車庫も何も無い人がそこまでするのはかなり無理があります。
で、見つけた後は?
ご自由にどうぞ 🙂
直すのも、見なかったふりをするのも、自由です。
長く乗るつもりなら直した方が良いのは当然ですが、場所によっては個人レベルでの
修正はあまり簡単ではない場所もあります。また、全塗装を覚悟の上でやらなければ
ならない部分等もあり、一概にどうこうとは言えません。また、下手な直し方をする
くらいなら、実は何もしない方がマシだった、ということも有り得ます。
幾つか基本的なことを示しましょう。あくまで私の意見なので、他のレストアラーの意見と一致する保証は無いです。あくまで参考程度に。
- 直径1mmのポツリ錆の裏には、大概にして直径1cmの錆があります。
- 直径1mmのポツリ錆を放っておくと、1年後には直径が5倍になったりすることもあります。
- 交換可能な部品であれば、交換した方が大概にして手っ取り早い上に安心です。
- よっぽど薄い錆以外には、サビチェンジャーは使わない方がいいです。
- 錆を放っておいて大きくなるより、自分で処理をした結果失敗した方が、まだ諦めがつきます。
- 中途半端に削って諦めるくらいなら、何もやらない方がいいです。全部ガーッと削って、削ったその場で防錆処理をしましょう。
錆を削る!
さて、錆取りを始めますか。錆を取るにも色々あって、錆具合がどの程度かによってその後の対応が違います。削って済む話なのか、切り取ってしまった方が手っ取り早いのか、色々な状況があり得ます。切り取らないと手に負えないほど酷い錆というのはPIAZZAの場合はそうそう無い(たまにはあるけど)ので、ここでは削ることに焦点を絞ります。
錆を削るということは、当然ながら塗装も削るということです。ここで1つの決断を迫られます。外から見える部分を削る場合は、塗装することを考えざるを得ません。その勇気を出せるかどうか、というのは実はかなり大きな問題です。黒ならいくらでも誤魔化しが利きますが、それ以外の色だと簡単にはいきません。
決心がついたら、意を決して錆を削り取ります。そのためには道具が必要ですが、それは錆具合に応じて使い分けます。ペーパーで済むのか、そのペーパーにしても何番を使うのか、それとも思い切ってグラインダーを使うか。それは錆がどの程度進行しているか、そして錆が発生している場所(工具が入らない場所もある)によって決まります。パッと見はペーパーで済みそうだったのに、実はそれでは全然手に負えなかった、ということもよくあることです。最終的にはマイナスドライバーや鉄ヤスリでこそぎ落とす、ということもあり得ます。グラインダーも狭い場所には通用しないからです。これらは臨機応変に使い分ければ良いでしょう。そして錆を取った後は、速やかに処置しなければなりません。放っておくとすぐに(それこそ1分後には)錆び始めます。とりあえず後述するPOR15を塗っておくことが、現時点では最良の方法かもしれません。勿論、亜鉛系の塗料(ジンク何とか、というもの)も使えるでしょうけど、それは完全に錆を取り去ったと自信を持てる場合だけです。亜鉛系塗料は、錆の進行を止める効果はあるものの、その効果は金属が全く錆びていない場合に限って通用するからです。(これは雑誌の受け売りで、実証はしていません)
ケミカルに頼る!
錆取りの一つの王道と言えば「完全に削り取って、仮にそれで穴が開いたら溶接なりリベットなりで鉄板を留めて板金整形した後にパテを少しだけ盛って整形」といったところでしょうけど、正直言って素人には少々敷居が高い話です。そこで大概にしてケミカル製品に頼ることになりますが、その一つに、かの有名なPOR15 RUST PREVENTIVE PAINTがあります。値段も高い(500cc弱の缶入りで約5000円、170cc程度のプラ容器入りで1700円)ですけど効果も高いようです。ちなみにこの製品は、サビチェンジャーのように錆を化学的に転換するものではなく、これ以上錆が侵攻しないように、錆発生の原因の一つである空気(酸素)との接触を完全に断つ、というものです。そしてその考え方はある程度実績があるんだとか(これまた受け売りです)。しかも、能書きによれば錆の上からそのまま塗れるんだそうで、つまり完全なる大穴が開くまで錆取りをする必要は無いということです。まるで素人にとっては魔法の薬品のように見えますが、これを使うにはちょっとした注意が必要です。
- よっぽど大きな箇所を直す場合以外は、POR15は缶入りよりプラスチック瓶入りの方がいいです。大抵使い切る前に固まってしまって損します。
- 蓋を閉める際には、ふちに残ったカスを丁寧に除去しないとすぐに固まってしまいます。
- 缶入りを使う場合、蓋を閉める前に蓋と缶の間にサランラップを挟んでおくと、多少次回開け易くなります。但し、POR15とサランラップの化学的影響についてはよく判りません。
- 硬化後は猛烈に堅くなり、ペーパーでも簡単には削れません。外から見える部分に塗る場合は、あまり盛りすぎないように。POR15の周りをパテで盛り上げて整形するなんていう本末転倒な結果になりかねません。
- ヘタクソな塗り方をすると、気泡が発生して非常にみっともなくなります。一度に厚塗りはしない方が良いです。
- うすめ液代をケチって刷毛ではなくヘラで塗ったお馬鹿さんも居ますけど、当然ながら刷毛で塗った方が仕上がりがマシです。
- 普通のカー用品店ではまず売っていません。関東でも東急ハンズ渋谷店(他の支店には無い)くらいしか置いていません。素直に代理店のマナテック(雑誌に広告が出てます)から通販したほうが早いです。
- そもそも、説明書の能書きが本当なのかどうか判りません(苦笑)
同様の製品としてESCOだの何だのとあるようですが、使ったことが無いのでどんなもんだか判りません。また、同様の効果を謳ったHAMMERITEという製品があり、これはPOR15の1/3程度の価格、しかもホームセンターでも扱っている場合があるため非常に魅力的に映りますが、いわゆるレストア雑誌に登場したのを見たことが無いため、どの程度信頼していいのか判りません。更に胡散臭い製品として「サビ一番」と称した塗料(缶入り、スプレーの両方がある)がホームセンターで売っていますが、これはあまり効果が長続きしないとの報告が数箇所から上がっており、あくまで一時的対策として捉えるか、最初から使わないほうが良いかもしれません。実際、ろくに錆取りもせずに試しに塗ってみた部品は、半年後には塗料がはげ落ちてしまいました。
上記は既に錆が発生している場合の対策を示したものですが、まだ錆びていない場合の予防方法としては、ノックスドール社の製品が有名です。長いホースが付属していて、狭い所や手の届きにくい場所でも噴射できるノックスドール700(錆予防の油脂)や、VOLVO車に純正採用されていると言われるオートプラストーンというアンダーコート等は、使っている素人レストアラーもそれなりに多いようです。基本的に錆を取るものでは無いため、あくまで予防にしか使えませんが、気になる箇所(例えばサイドシルの中とか)にノックスドール700を吹きつけておいたり、タイヤハウスにオートプラストーンを塗っておいたりすると、気休めにはなるでしょう。
ケミカルではありませんが、電気的に錆の発生を防ぐ製品(ラストアレスター、ラストバスター、ラストイベイダー、ラスターミネーター、その他色々)もあります。これを新車の時から付けているのであれば、それはそれで意味があるかもしれません。但し、既に錆が発生している車に付けたからといって、錆が無くなるわけではありません。また、既に錆が発生している場合は、これらの製品は逆に錆を進行させるだけだ、という説もあり、良いのか悪いのかはっきりとしたことは判りません。一つだけ言えることは、これを付けても既に発生している錆は無くならないということだけです。
FRPに頼る!
鉄板に穴が開いてしまうと、さすがのPOR15にも手が負えません。こうなると何らかの方法で塞ぐしかないわけですが、素人には鉄板よりFRPの方が格段に扱いやすいため、こちらをお勧めします。ホルツやSOFT99が「FRP補修セット」と称して商品を出していますが、これはあまり量が多くなかったり、硬化剤が黒っぽかったりする(これは好き好きですが)ため、どちらかと言うと東急ハンズ等でポリエステル樹脂・硬化剤・グラスマットを買ってくる方がお勧めです。実はサーフボード補修キットも使えたりします(中身は同じ)。これは季節外れのディスカウントストアで安く手に入ることがあります。
鉄板と比べた場合のFRPの利点は、作業が楽、特殊な工具が要らない、作業時に柔軟性がある、ある程度はパテ代わりにもなる、FRP自体は錆びることはない(これが一番?)等が挙げられます。硬化後は強度的にも鉄板に殆どひけをとりません。少なくとも、よっぽどの広範囲の錆以外では、鉄板を使う理由が私には感じられません。但し、樹脂が硬化するのに多少時間がかかるため、垂直面に対して作業する場合には注意が必要です。タレてきてしまって非常にみっともないことになりかねません。それに、難しい曲面を出したりする場合は板金には敵いません。まずは決して見えない場所(スペアタイヤ付近が最適?)から試してみることをお勧めします。
さて、錆は見付かったでしょうか? PIAZZAを捨てるのも、直すのも、放っておくのも、貴方次第。でも、こういういじり方ってのも、それはそれで楽しいものですよ。何より、今持っているPIAZZAを少しでも延命させることができるのですから 🙂