save the piazza! ---- diary

1999/8/* 後方追突厳禁車両宣言

いやーそれにしても今年の夏は暑いねえ。何? このクソ暑いのに駐車場で車の下に潜り込んで錆び取りだと? 馬鹿言うんじゃねえ、波乗りしてる方がよっぽど面白ェ! ってのが本音だけど、錆びは一刻も早く、一箇所でも多くそぎ落としたい、というのもまた事実。あーあー、誰か直してくれないかねえ、この錆び。ラーメン奢るからさあ、なんて誰に言うでもなくブツクサ言いながら、何となくリヤバンパーを取り外す。ついこの間あんなにひっぱたいたのに、やっぱりボロボロと錆びが落ちてくるのがうざったい。外したバンパーに傷がつかないように、キャンプ用の銀マットに置く。たった30秒の作業で汗をかいてしまうようなうだる暑さに、都合の良い逃げ口上を思いつく。

バンパーの骨だけ外しちまって、錆び取りはエアコンが効いた部屋でノンビリやるとするか!

我ながら何という情けない発想だ。しかし、そう思った途端、俺の身体は勝手にバンパーをひっくり返して骨とガワの分離に取りかかっている。バンパーなんかよりアンダーフロアの方がよっぽど酷いのに、本能は部屋へ部屋へと導かれていく。アンダーフロアはどうやって処理すりゃいいのか見当もつかないから、とりあえず目先のことから始めるのさ、なんて適当な言い訳をしながら、明らかに固着している14本(骨とガワ)+4本(骨とステー)のボルトにCRC5-56を吹きかけて、プラハンでガンガンひっぱたく。叩き終わったところで一服していると、何となく錆び取りをしたくなって思わずワイヤーブラシを取り出す。あれだけ面倒臭がっていたくせに、一度調子に乗り始めるとこんなもんだ。

骨そのものはガワが邪魔くさくてやりにくいので、とりあえずステーから始める。それにしても酷い錆びだなこりゃ。ちょっと擦ったくらいじゃどうにもなんねえな、とか言いながらゴシゴシ擦り続けてみたものの、恐ろしく深い錆びの谷間の前にあえなく沈没。こりゃダメだ、ワイヤーブラシなんかまるで歯が立たない。続いて金工ヤスリを取り出してガリガリ擦る。およそ相手が車の部品とは思えない勢いでガーッと擦る。あっというまにTシャツは汗だらけになり、気持ち悪いのでTシャツは脱いでしまって、日焼けと称して半裸姿でヤスリを動かしまくる。短パン1枚の野郎が手にヤスリを持って一心不乱に擦っている姿は怪しさ満点だ。

しかし、残念ながら俺の体力ではそんな強引なやり方は長続きしない。すぐに一服の時間が訪れる。ただ一服するだけでは芸が無いので、その前に試しにラストリムーバーを塗ってみたものの、所詮浮き錆び用なのでこんなガンコな錆びには全然歯が立たない。判っちゃいるけど、あんまりにも酷い錆びには何かに頼らずにはいられないのだ。それに、ラストリムーバーを塗ると赤錆びが黒く変色するので、多少なりとも作業が進んだような気がするのが良い。但し、その黒い部分をちょっと擦ると、あっという間にまた赤錆びが顔を出すのでほんの気休めにしかならない。しょうがないのでまたヤスリで擦る。気休めにラストリムーバーを塗る。また擦る。その繰り返し。いいかげん飽きた。

飽きてくると別のことがしたくなるので、骨とガワを分離する作業に移ることにする。これらは上下各7本ずつ、合計14本のボルトと、ガワを挟むようにくっついているナットで固定されている。何てこったい、錆びついたボルトを14本も外さなければならんとは。見るからに折れそうなボルトを8mmのメガネでじわじわと緩める。一応ボルトは動くけど、それが緩んでいるのか、それとも捩じ切っているのかは定かではない。どっちにしても、錆びているせいで普通にボルトが緩んでいる手応えじゃないけど、とりあえず1本は無事外せた。調子に乗って隣のボルトを外す。無事に1本外せたので、無駄な心配は要らんとばかりに強引にトルクをかけると、ものの見事に折れてしまったではないか!

嗚呼。ついにやっちまった。

いつかはやると思っていたけど、こんなに早くその時期がやって来るとは。明らかに落胆する俺。そして思わず一服するワンパターンな俺。あーあ、どうやって取ろうかねえこのボルト。しかし、よくよく見てみると、このボルトが折れたところで別に落ち込む必要は無いことが判る。ボルトの先は確かにナットに残っているけど、ガワを挟むようにくっついているナットを強引にコジ曲げると、ナットは簡単に外せてしまうし、そもそも折れようがどうしようがボルトの頭が取れれば骨とガワは分離できるのだ。ちょっと安心。そうと判れば簡単だ。残りのボルトをどんどん外していく。どうにでもなることは判っているので、メガネを動かすトルクは一番最初の比ではない。結局、14本のボルトのうち5本が折れてしまう羽目になる。

そしてやってきた分離の瞬間。苦節30分、遂にバンパーが骨とガワに別れる。あーあ、やっと外れた。しかしその喜びも、今まで隠れていた骨の裏側を見た途端に落胆に変わる。見えていた側の錆びも酷かったけど、裏側はもっと酷い。裏と言うか、さっきまで格闘していたボルトとガワに挟まれていた辺りが特に酷い。至る所が錆びていて、この部品は黒ではなくて赤錆色に塗装されているんじゃないかと思えてくる。ちょっと持っただけで手が錆色になってしまうのも困ったもんだ。これじゃあ部屋に持っていく気になれないので、仕方ないのでとりあえずワイヤーブラシで擦る。全然歯が立たないのはステーと同じ。とりあえずこの場は部屋に持っていく間に錆びがポロポロ落ちて、その挙げ句に大家に怒られてしまわない程度に擦る。ふぅ、やっと一段落だ。

■   ■   ■

早速部屋に持ってきたバンパーを見ながらしばし腕組みして考える。難攻不落の強敵、錆びに立ち向かうには、俺の右腕とヤスリだけではいくらなんでも限度ってもんがあるぞ。だからと言って、電動工具なんか持って無いし、買うほどの金の余裕も無いし、そもそも駐車場には電源が無いんだから使えるわけが無い。バンパー程度なら部屋に持ってこれるけど、まさかアンダーフロアを部屋に持ってくるわけにはいかない。というわけで、そういう貧乏人は大概にしてケミカルに頼る羽目になるんだけど、オートバックスに売っているホルツ製品がこういう酷い錆びには全くの役立たず野郎で、まるで歯が立たずに敗れ去るのは目に見えている。そんなわけでOldTimerを読み漁っていると「POR-15」とかいう名前がそこかしこに出てくる。理屈は何なんだか良く判らないけど、とにかくコレを錆びの上から塗ると、魔法のように錆びの侵攻が止まってしまうらしい。あちこちにコレを絶賛する記事が載っているし、レポートの中でも俺と似たような状況でしばしばPOR-15を使っているので、読んでいるうちにどんな錆びでもこれさえあればOKさ! ってな気分になってくる。

しかし、こんな程度の理解で衝動買い出来るほど俺は金持ちじゃないので、何故錆びが止まるのか調べてみる。実はPOR-15ってのは会社名で、そのPOR-15社の「Rust Preventive Paint」という製品なんだ、っていうことが判る。これはいわゆるサビチェンジャーみたいな錆び転換剤ではなくて、錆びと化学的に密着した上に無気孔な膜を作って完全に錆びを覆ってしまうことで錆びの侵攻を止める、というものらしい。まあ確かに空気が無けりゃ錆びは進まないんだから、この謳い文句が本当だったら効果アリなんだろうなあ。これは良いんじゃないだろうか、という気がしてくるけど、値段を見た途端愕然とする。何とたったの473ccで4950円ときたもんだ。こりゃいくらなんでも高い。コレを6本買ったら、俺のJR130が買えてしまうくらい高い。でもあの錆びを手作業でやるのはいくら何でも無理っぽいし、何よりメンドクサイ。仕方ない、多少の諦めとともにコレを買うことに決めてしまった。

こんなものがオートバックスで買えるわけが無いので、早速何処で手に入るのか調べてみると、近場では東急ハンズの渋谷店には売っているらしい。ただ、渋谷みたいなゴミゴミした都会は大嫌いな上に、往復するだけで2,000円近くかかるから、ここは通販に限る。送料は1,000円だけど、全部で30,000円以上買うと送料無料、という書き込みを見た途端、同じ会社で扱っている「ラストバスター」19,800円也が目に入る。弱い電流を常時流しておくことで錆びの侵攻を止める、という効果のほどが限りなく疑わしい製品だ。ただ、ラストバスターだけじゃなくてラストイベイダーだとかラストアレスターだとか類似品が色々あるので、多分全く効果が無いわけじゃないんだろうなあ。本当に効果が無いんだったら類似品なんか出るわけが無い。しかもどれも手法は多少違うものの、構成品や効果は全部一緒だ。但し、ラストバスターはこれらの中では最も廉価版で、作動状況を示すランプが付いていないらしい。下手すりゃ安物買いの銭失いになる可能性も否定できないけど、貧乏人にとってはランプなんかより安いことの方がよっぽど重要なのだ。聞いた話では、この類いの製品には錆びを落とす効果は当然無いけど、既に有る錆びの侵攻を止める程度の効果はあるらしいので、今の俺にはそれでも十分だったりする。19,800円でJR130の寿命が延びるのだ。そんなことを考えているうちに、徐々に購入欲が出てきてしまう。ラストバスターとPOR-15では30,000円には届かない。POR-15を2本買ってもまだ届かない。しょうがないので、その隣に載っている「METAL READY」という錆び除去剤兼下地処理剤2,500円也も買うことにすると、ようやく30,000円を超えて、目出度く送料無料になる。そんなに意地になって30,000円まで持っていく必要もないのに、何故かそうしてしまうのはひとえに貧乏性のなせる技である。結局、俺のJR130が買えてしまうくらいの金を錆び取り道具のためにに払うことになるとは。俺のJR130の価値ってのはこの程度のもんなのか?? と、自分が今まで考えていたことを一瞬疑問に思いつつ、MacintoshからFAXを送信する。

その4日後、ペリカン便の手によって注文した錆び取り用品が届く。その間に、スペアタイヤのスペースに空いた大穴を埋めるためのFRP補修用品(ポリ樹脂、硬化剤、ガラスクロス、ロービングクロス)と、どう頑張っても錆び取り不可能な袋状になっている箇所の錆び予防用にノックスドール700を横浜の東急ハンズで購入する。この間の30,000円と合わせると約40,000円にも上る大奮発だ。これで直ってもらわないと衣食住のうち衣と食を削りまくって生きている俺の努力も浮かばれない。よっしゃ、用品が届いたところでPOR-15の腕試しだ。とりあえずバンパーは置いておいて、錆び取りを終えて防錆処理を待っている給油口の処置をしてみるとしよう。

錆び取りをして、暫く手を付けていなかった給油口を見てみると、案の定折角錆び取りした部分が錆びている。しょうがないのでまた擦る。あーあ、せめてジンクプレート(錆び防止塗料)くらい塗っておけばよかった。一度錆び取りをしたので、今回は浮き錆び程度なので簡単だ。錆びを落としたところで、早速POR-15を取り出し、蓋を開ける...といきたいところだけど、この蓋が猛烈に固い。ちょっとマイナスドライバーでこじった位ではピクリともしない。蓋が固いのではなく、蓋と缶がキッチリと組み付いてしまっているみたいで、こじりすぎて蓋が歪んでしまう。何だこりゃ、いくら塗膜が固くても、蓋が柔らかいんじゃ片手落ちもいいところだ。ドライバーは諦めてスクレーパーやら何やらを使ってこじってみても、やっぱりダメ。10分ほど蓋と格闘しているうちに、また汗をかいてしまって不快な気分になる。最初から半裸で作業すれば良かった、と思ってTシャツを脱ぎ捨てると、そこに蚊が刺してきたりしてただでさえ不快なのがとんでもなく不快になってしまったりする。思わず缶をブン殴ってしまったりするが、勿論そんなことで蓋が開くわけがない。とりあえず一服して不快感を落ち着けることにする。一服しながらどうすれば開くのか考えてみても、蓋の端っこをこじるなり引っ張るなりする以外の方法は思いつかない。最後の手段として、蓋にマイナスドライバーで穴を開けるという手段もあるけど、300円のペンキならともかく、4,950円もするPOR-15にそんな荒技を使うわけにもいかない。仕方がない、こじるのは諦めて、プライヤーで蓋の端っこを掴んで引っ張ってみる。ドライバーでこじるよりは多少蓋が浮いてくるが、やっぱり開かない。ヤケクソになってさらに引っ張る。そうこうするうちに蓋自体がボロボロになってくる。缶を手にして20分経っても開かず、歪むばかりの蓋を見ているうちに、俺の怒りは頂点に達する。

ええい、いい加減にしやがれこの蓋め、不良品じゃねえのかコノヤロー!!

白昼の住宅街だということも忘れて缶に向かって罵倒する俺。人通りが殆ど無いのが唯一の救いである。叫んだところで蓋が開くわけもなく、ブツクサ言いながらプライヤーで引っ張る。そうしているうちに徐々に蓋が浮いてくる。あと少しだ。でも、そのあと少しが全然行ってくれない。既にかなりヤケクソになっている俺は、蓋と缶の隙間にマイナスドライバーを突っ込む。これは効果てきめんだった。缶の歪みと引き換えに、パコッ、と蓋が開いた。苦闘30分、ようやくPOR-15の中身との御対面だ。

塗料自体は、普通のシルバーの塗料と変わらなく見える。中毒になったら嫌なので臭いは嗅がない。缶に書いてある説明によると、長時間蓋を開けておくと劣化したり硬化したりするらしいので、適当な容器にヘラで適量を移し、さっきまで格闘していた蓋を閉める。掬うための道具が無いので、ヘラで無理矢理移すのは極めて鬱陶しい。そして、容器に入れたPOR-15を、刷毛ではなくてヘラで給油口に塗る。たかだか700円のうすめ液代をケチるからこういうことになるのだ。刷毛を使い捨てるほどの金持ちじゃないんだからしょうがない。ヘラでも塗れないことは無いので、チマチマと容器から掬いながら塗っていく。10分ほどで、錆び取りをして金属面むき出しになった部分を塗り終わる。蓋を開けるよりも短い時間で終わってしまうところが何とも情けない。あとは乾くまで待つだけだ。説明書によると、4時間から6時間ほどかかるらしい。仕方がないので、ボディカバーをかけないままにして部屋に戻って乾くまで待つことにする。あーあ、手に沢山POR-15が付いちまった。

そして数時間後、塗装面を見てみるために駐車場に行く。うん、なかなか良さそうだ。引っ掻いたり、叩いたりしても塗装面はビクともしない。ただ、容器に移した塗料が多すぎて、貧乏根性で何度も上塗りしてしまったせいか、一部に気泡が出ている。よくよく考えてみると、POR-15は錆びから水分を除去して塗膜外に放出する効果もあるらしいので、何度も上塗りしたらそうなってしまうのも全然不思議じゃない。あーあ、参った、この固い塗膜をもう一度剥がして塗り直すのか? もう嫌だぞ、あの蓋と格闘するのは。でも、POR-15の塗膜自体は良さそうだ。何と言っても、俺の手にこびりついたPOR-15が全然剥がれてくれないくらいなんだから。ま、本当に使えるものなのかどうかは、あと何年もしてみないと判らないけど。

■   ■   ■

さあ、POR-15の使い方と効果は大体判ったぞ。早速リヤバンパーの骨に取りかかることにしよう。ワイヤーブラシとスクレーパーを手に持って、部屋に持ってきたバンパーに向かって腰を下ろす。とりあえず何も考えずに擦ったり削ったりすること30分。が、しかし、全然ダメだこりゃ。判っちゃいたけど全然歯が立たない。うーん、こんなことをやっていても1年経ってもバンパーの錆取りすら終わらないぞ。仕方がないのでステーを取り外したり、ナンバー灯を取り外したりしながら現実逃避に励む。そのナンバー灯のステーも錆びているのけど、こっちの方がちょっとはマシな気がするのでターゲットをこちらに変更。でも、やっぱりサンドスポンジやワイヤーブラシではそう簡単にはいかない。相手が小さいのでチマチマと道具を動かしたところでなかなか錆は取れない。仕方がないのでスクレーパーの角で強引にほじくって錆を取る。そして案の定そのうち飽きが来る。立ち上がって何となくバンパーを眺める。現実逃避してしまったので酷い錆はそのままだ。ここでふと思う。

一体何処から何処までが錆びているんだかさっぱり判らん!

それが一番の問題だ。白いボデーだったら一目瞭然だけど、黒い骨だと具体的に何処を錆取りすれば良いのかあまりに紛らわしいのだ。そもそも錆びていないようで錆びている所も沢山有るに違いない。まずはそれをハッキリさせないと先に進まないではないか。そう思った俺はおもむろに部屋にスポーツ新聞を敷き詰め、5年前にギターの塗装を剥ぐときに使った剥離スプレーを道具入れから持ち出す。我ながらよくこんなものを捨てずに持っていたもんだと感心するが、何故あの時はギターの塗装なんか剥がそうとしていたのかの方がよっぽど疑問だ。

試しに少しだけスプレーを吹いて暫く放っておくと、おー、剥がれる剥がれる。気持ち良いくらい簡単に塗装が剥がれて地金が出てくる。表側は思ったよりも錆びていないみたいだ。調子に乗ってスプレーを吹き続けていると、まだ剥離していない部分が沢山残っているのにスプレーが終わってしまった。ま、たまたま残っていただけのスプレーだから仕方がないな。本当は剥離したらさっさと処理をしないといけないんだけど、どうせPOR-15を塗るんだから、なんて理由をつけて全然気にしない。ダイクマでスプレーを買ってきてまた剥離する。あっという間に鉄板むき出し状態まで持っていく。剥離剤で錆が取れたらいいのに。

剥離が終わってようやく錆の全貌がはっきりした。表側はそんなに重症じゃないけど、裏はかなりキテル。そしてとにかく酷いのは側面のようだ。そりゃそうだ、どう見たって構造的に水が溜まるようになっている。一体どうして側面を地面に平行になるようにして、しかもそこをネジ止めするのか理解に苦しむ。これじゃ毎日乗っているか、屋根付き車庫にでも入れておかない限り絶対錆びるに決まってる。これじゃ折角直したところでまた錆びるに決まってるわい。ブツクサ言いながら錆を擦り取る。表側はまあまあ簡単に終わるけど、裏側と側面はそう簡単にはいかない。会社から帰ってから毎晩毎晩擦り続ける。鉄板が薄いので、下手にグラインダーなんか使うわけにもいかないし、それ以前にそんなのは持っていないから意地でも手作業でやらざるを得ないので大変だ。折角買ったので「METAL READY」も使ってみたけど、あんまり役に立たない。これは素直にPOR-15の下塗りとして考えた方が良さそうだ。

大体2週間くらい擦り続けただろうか。いい加減やってられなくなって諦めた。表側はいいけど、裏側と側面はどうにもならない。もうやるだけ無駄だ。潔くPOR-15に頼ることにして、もう一度古新聞を敷き詰める。早速道具一式を持ちだしてPOR-15の蓋を開ける...が、やっぱり固い。しかも、今回は前回に輪をかけて固い。前に開けたときは30分だったのに、今回は30分経っても全然開く気配が無い。前回ボロボロになった蓋は既にスクレーパーなんかまるで歯が立たず、必殺技プライヤーを何度も繰り出しているうちに遂にメリメリッと金属の蓋が端からめくれてしまった。あーあ、もうダメだ、二度と開かんわこりゃ。もう怒るというより呆れてしまった。これは多分POE-15の密着力が強力すぎて、前に使ったときに缶の縁に残った塗料で缶と蓋がくっついてしまったんだろうけど、普通だったら缶とか蓋には塗料の密着性なんかより全然強い材質を使うもんじゃないか? それに比べりゃ何なんだこの蓋は、手でちょっと捩じっただけで簡単に曲がるじゃねえか、一体何考えて作ってやがるんだこの会社は、いい加減にしやがれコノヤロー! と、缶を見ているうちに徐々に腹が立ってくる。ヤケクソで缶と蓋の隙間にマイナスドライバーを差し込んでこじる。前回はこれで簡単に開いたのに、今回は極めて固い。腹が立っているので缶が猛烈に歪むのも気にせず強引にこじっているうちにやっと蓋が開いた。今回は1時間近くかかってしまった。っていうことは次回は1時間半か?

あーあ、やっとこれでPOR-15をバンパーに塗れるわい。しかし、その作業はと言えば、ヘラでチマチマとバンパーの上にPOR-15を落として、それを別のヘラで延ばす、という単純作業の繰り返し。こういう大物の場合は、いくら金をかけたくないと言ってもやはり刷毛を使うべきだった、と後悔したものの、それは勿論後の祭りで、ヘラなんかで塗っていては微妙な斜面を形作るようにプレスされたバンパーに塗っていくのは猛烈に時間がかかる。それどころか、ヘラで塗っているせいでたまに力が強すぎて折角塗ったPOR-15を根こそぎ剥いでしまったりするので余計に時間を食ってしまう。それでもようやく表側を塗り終わって、1日ほど放置して翌日は裏側を塗ることにする。ここでPOR-15の蓋を普通に閉めてしまうと翌日は本当に開けるだけで1時間半かかってしまいそうなので、缶と蓋の間にサランラップを挟んで軽く蓋を閉める。効果のほどはさっぱり判らないけど。

翌日、前日に塗った表側は既に殆ど乾いているようだ。ただ、案の定一部にヘラが頑張りすぎてしまった部分があるので、それはまた最後の仕上げの時にでも塗らなきゃいけない。そして、開いてくれ〜と祈りながらPOR-15の蓋をこじる。すると、5秒もしないで簡単に開いてしまった。お〜、すごいぞサランラップ、なんて喜んではみたけど、そのサランラップが蓋にこびりついてしまうのは良いのか悪いのか判断し難い。ま、下手にサランラップを剥がそうとすると、またまた手にPOR-15がこびりついてコンビニで金を払うのもためらわれるような汚い手になってしまうので、そのまま放っておくことにして裏側を塗り始める。表側は山状なので多少POR-15を多めに塗ってしまってもタレるだけなので問題は無いけど、裏側を塗っていると局所的にどんどん溜まってきてしまうのでメンドクサイ。それでも何とか塗り終えて、そのまま側面に塗ろうとしたものの、POR-15を掬い用ヘラで掬って側面に落として、それを塗り付け用ヘラで側面に塗り付ける、なんてこと自体が殆ど無理なのでもっともっとメンドクサイ。こんなことを繰り返しながらようやくバンパー全てにPOR-15を塗り終える。ついでに、ナンバー灯のステーにも塗っておく。ふーっ、これでやっと明日からは塗料臭くない部屋で寝られるぞ。

POR-15を塗り終わって暫く放置した後、バンパー全体を黒く塗る。ついでなので、本来は黒くない筈のナンバー灯ステーも塗ってしまう。どうせだからそのまま取り付けてしまった方がPOR-15の効果が判りやすくて良かったかもしれないけど、どうにもミテクレが悪いので塗ってしまった。どうせ外からは見えないので極めて適当にスプレーを吹いて完了したことにしてしまう。さ、あとはステーの新品と、ボロボロになったナットを買ってくるだけだ。あーあ、終わった終わった。何だかんだで1ヶ月くらいやってたんじゃねえか? こんだけ時間がかかったんだから、このバンパーに追突なんかしやがったらタダじゃおかねえぞ、なんてことを考えているこの瞬間は、まさかこんなところに落とし穴があったということに1ヶ月後に判る、なんてことは勿論知る由もなかったのであった。


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