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1999/11/* やはりコイツは柔らかくなければならない (2)

グローブボックスの革張り仕様化(つうてもビニールだけど)を成功裏に終わらせた俺は、数日後には再び町田の東急ハンズに赴いていた。前回買った1m分のビニールレザーは、パーセルシェルフとグローブボックスに貼った時点で使い果たしてしまった。ダッシュボードにも貼るんだったら、当然ながら同じものを買い足さなきゃいけない。一度動き出すと止まらない俺は、風邪っぴきで会社を休んでいるにもかかわらず、わざわざ雨の中をJR120に乗って町田まで行ってしまった。別に会社なんか行ったところで大した仕事は無いし、家に居たってグレーのダッシュボードが目に付いてしょうがないのだ。眼前の敵を放っておくのは気分が悪い。だったらやっつけてしまえば良いではないか。気分が悪いのを放っておいてはイカン。病は気からと言うではないか。そうしていつものように自分勝手に結論づけた俺は、例のビニールレザーを3m分購入した。ダッシュボードだけなら明らかに余るけど、こういうのは在庫が無くなってしまっては二度と手に入らなかったりするし、失敗した時のことを考えて慎重になりすぎて、結局失敗したりするのが一番タチが悪いのだ。二度と手に入らないのはデジパネだけで十分だ。たかだか1280円くらいケチっても仕方がない。ついでに間に挟むスポンジも買ったりして東急ハンズをウロウロしているうちに、だんだん風邪がぶりかえしてきた。どうせ水曜日だから他の店なんかやってないから、これ以上歩く必要は無い。ヨタヨタとJR120に乗って家に戻る。

買ってきたブツを持って部屋に入る。さっきまでフラフラしていたのに、転がっているダッシュボードを見ると俄然勢いが出てくるのは不思議なもんだ。とりあえず珈琲を飲みながら計画を練る。さて、どこから始めるかねえ。いきなりデカイ部分に貼るよりは、誤魔化しが効くところからやった方がいいだろうなあ。失敗してもビニールレザーをそんなに損しないし、やった分だけ技術的にマシになるだろうし。とは思ったけど、そもそも貼る箇所なんて3箇所しか無いのだ。センターコンソール部分と、メーターの側にあるエアコン吹き出し口の右側と左側。上側は右も左もどちらとも2枚のビニールレザーを貼りあわせなくちゃいけない。これはちょっと難しい。一番誤魔化しが効きそうなのはどう見たってセンターコンソール部分だ。ここはセンターコンソールは勿論、グローブボックスとか、メーターとかで覆われてしまうから、あんまり仕上げにこだわる必要が無い。よっしゃ、ここから始めるとしますか。

この部分は1枚貼りで済みそうなので、やることはグローブボックスと全く同じだ。既に俺的には絶大なる信頼を勝ち取っているケーヨーデーツー謹製安物両面テープを貼り付け、その上にスポンジを貼るところから始まる。しかし、グローブボックスに比べると若干メンドクサイ形状が災いして、あれやこれやと考えることが多い。ネジ穴が下の部分に幾つかあったり、吹き出し口があったりするので、これをいちいち避けるように貼らなければならない。それに、ここには後でセンターコンソールが嵌まるし、上端部には黒いプレートが入るので、こいつらの邪魔になっては本末転倒だ。前回余ったスポンジとビニールレザーを借り留めして、転がっているプレートやらセンターコンソールやらを嵌めてみて具合を確かめる。この程度の厚さなら大丈夫そうだ。早速両面テープの紙を剥がして、適当な大きさに切ったスポンジを貼り付ける。余りの部分は現物合わせで切っていく。こんなのどうせ伸縮するんだから型紙なんか作る必要など無い。現物合わせが一番確実だ。よし、準備完了。

続いてビニールレザーも現物合わせで切る。相手がスポンジだと仮留めが難しいので、手で押さえながら適当な大きさに切って、四角い状態のまま両面テープで貼り付けてしまう。その後、やっぱり手で押さえながら要らない部分を切り取る。ここで切りすぎてしまうとまた最初からやり直しなので、余白は沢山取っておく方が良い。余った部分は裏側に巻き込んでしまえばそれで良いのだ。どうせ見えやしないし。そしてネジや吹き出し口の部分を適当に切り取って、裏側に巻き込んだ部分をタッカーで強引に留めてしまえば完了だ、と言いたいところだけど、グローブボックスの時に比べるとどうにもR部分が上手くいかない。グローブボックスより倍くらい厚いし、余白が多いとその分シワが増えるし、余白が少なすぎると留められないので、結局適当なところで折り合いをつけるしかない。なるべく見えない部分にシワが来るようにして裏から留める。まあこれで良しとしよう。これ以上は無理だろ。ここまで終わったところでグローブボックス、プレート、吹き出し口を試しに付けてみて、それなりに満足しながら一服する。

しかしここから先が大問題だ。今度こそ1枚モノでは済まないのだ。例のホチキス結合作戦を発動させる必要がある。こうなるとさすがに現物合わせするにも限界があるような気がするけど、だからって型紙取ってもしょうがないような気もするので、とりあえずビニールレザーをあてがってみる。3mのビニールレザーはこういう目的には大きすぎて、ちょっとお試しモードであれこれやるのは極めてうざったい。ビニールレザーの山をああだこうだとひっくり返したりしながらダッシュボードにあててみる。こんな状態でそれっぽい形に切るのは大変なので、最低限必要な大きさに四角形に切る。身軽になったビニールレザーを再度あてがってみると、何となく現物合わせでいけるような気がしてきた。とりあえず前面の分をそれらしい形に切る。ここで例によって余りを大きくしてしまったのだが、これが後でメンドクサイ作業を招いてしまうことにこの時点で気付くはずは無く、そんなこと全く気にせずに前面部分にだけ両面テープでスポンジを貼る。側面なんか貼ってもしょうがないだろ。どうせドア閉めたら触れないし。こんなところ柔らかくなくたっていいじゃないか。

続いて側面部分も現物合わせで切る。ただ、ちょっとばかし形が難しいので、一気に全部切るわけにもいかないので下端のR部分以下はほっぽらかしで、ダッシュボードの前面部分にあたる直線部分だけを切る。切ったところで適当に2枚を合わせてみても、この時点ではバラバラなんだから上手くいくわけがない。こっちを押さえればあっちが浮いて、あっちを押さえればこっちが浮いてしまう。仕方がないのでマスキングテープで適当に止めてみたりしても弱すぎてダメ。何てこったい、これでは全然この先の見通しが立たないではないか。このままじゃどうにもならないので、適当にホチキスで2枚合わせてみることにする。とりあえず上側から始める。この適当なホチキス止めがそのまま最後まで生きるとは思えないし、ヘタな部分を仮止めして、最終的にビニールレザーの外から見える部分に穴があいてしまうとみっともないので、仮止めなのに妙に緊張する。何とか3箇所ほど止めてみてかぶせてみる。まあこんなもんかねえ。それにしても下端のR部分が問題だ。こんな形ホチキスなんかで出せるのか? 出せるワケねえよなあ。でも他に手が無いよなあ。そこだけ縫うなんてワケにもいかねえしなあ。接着剤なんかどうせ効き目無いだろうしなあ。あーあ、どうしよう。とりあえず一服だな、ここは。

結局ホチキス戦法に徹することに決定。良く考えてみれば俺は風邪をひいているのだ。メンドクサくて今更道具なんか買いに行く気になれない。そこで、ダッシュボードに乗っているビニールレザーのホチキスで仮止めした部分以外を、懲りずにマスキングテープで押さえてみる。そのままそっと持ち上げてひっくりかえしてみると、その途端マスキングテープは意味がなくなってしまう。クソッ、やっぱりこんなのダメだ。仕方がないので、前面側はダッシュボードに押し付けて、側面部分だけビニールレザーを持ち上げてペンで線を描いてみる。横から線なんか描いたところで、きちんとダッシュボードの縁に沿って描けているのかどうかなんてわかったもんじゃないので、こんな線は意味がないということにすぐに気付く。うーん、こりゃダメだ、手が無いぞ。やっぱりボール紙で型紙くらい作るべきだったか。しかし、行き当たりばったり人生を標榜する俺にはそういう用意周到な手段はどうにも落ち着かないのだ。こうなったら最後の手段「第六感」に頼るしか無いだろう。勇気を出して、仮止めだけしたビニールレザーをひっくり返す。そのままの状態で、簡単そうな上側の直線部分からパチパチとホチキスを止める。今度は本チャンなのであんまり適当なことは出来ない。ま、直線なので何とかなるだろう、ということでさっきの仮止めよりは間隔を詰めてパチパチ止める。ある程度終わったところでダッシュボードにかぶせる。うん、まあまあだ。多少自信が出てくる。しかし、その自信を持って臨んだR部分は見事に惨敗。やってもやってもうまく合わない。毎度止める部分が奥の方すぎて全然形が出ない。しかも、ビニールレザーを切るときに余白を大きくしすぎたのが原因で、邪魔クサくてしょうがない。畜生、これじゃホチキスが届かないぞ、邪魔な部分が大きすぎて挟めないではないか。結局かなりの余白部分を切り取ったり、何度もホチキスを止めたり外したりを繰り返して、R部分だけは何とかそれっぽい形に仕立て上げる。やっと一段落だ。ダッシュボードにかぶせてみて一服する。あー疲れた。

しかしこれだけではまだ終わらない。ダッシュボードはドアトリムとの関係で妙な形をしているので、側面部に貼ったビニールレザーは、再度前面に向けて90度折り曲げて貼り付けなければならない。この角度が微妙なので、単純に折ってしまうとビニールレザーが余ってしまって何とも不自然なシワが出来てしまう。ここまで変なシワだと、いくらなんでもAsso di fiori云々で誤魔化すわけにもいかないので、色々と試行錯誤をしながら押さえつけ方を考える。何度かやってみても、どうしても角が出来てしまう。あーあ、やっぱりホチキスじゃRは無理だな、と完全に諦めに入ってしまったので、これ以降Rの出来に関しては気にしないことにする。そして、何とかうまくいきそうな所を見つけて、R部分以降の下端部のホチキス止めに入る。

これがとんでもなく面倒だ。そもそも無理がある折り曲げ方をしている側面側のビニールレザーと、前面部から続いているビニールレザーを止めるのだ。それを何の仮止めもなく正確に止めようなんて、そんなことが上手くいくはずが無い。R部分を止めたときの倍くらいの試行錯誤をしながら何度もホチキス止めを繰り返す。何度もやっているうちに、例によってビニールレザーの余白が邪魔になってきて、切ったり止めたり嵌めたり外したりの繰り返しにいい加減腹が立ってきた頃、ようやくそれっぽい形になってくれたようだ。

合わせ終わったビニールレザーをダッシュボードに被せる。多少の不満はあるけど、もうこれ以上やるのは面倒だ。もういいや、止めちまえ、止めちまえ。ビニールレザーを外して、両面テープをダッシュボードに貼る。まずは前面部から両面テープの紙を剥がして、ビニールレザーを被せる。形が微妙なので、ここでヘタクソな固定をしてしまうとこれまでの苦労が水の泡なので妙に慎重に被せる。続いて側面部に移るが、ビニールレザーをめくりながら両面テープの紙を剥がすのは何ともやりにくくてしょうがない。しかも途中で90度曲がるのでさらに大変だ。これが一直線だったら外側だけ適当に止めておけば済むっていうのに、こんな形だとそういうサボりも出来ないのが腹立たしい。そしてようやく全て止め終わったところで、エアコン吹き出し口とプレートを嵌めてみる。あーあ、やっと終わったよ。今度ばかりは、突っついて感触を楽しんだりするより、終わってくれた、って感じ。うーん、やっぱりRなのに角張ってるってのは変だねえ。まあいいや、どうせ乗ってる時は見えないし。それにしても疲れた。まだ半分残ってるけど、また同じことをやる気にはなれんぞ。今日はもう止めよう。

そして1週間後、残ったメーターの左側の作業に入る。大きさ的には一番デカイんだけど、結局のところ前面部分がデカイだけで、それ以外はやることは全然変わらない。一番面倒なのは側面と前面を繋ぐ処理なので、前面なんかデカくても小さくても全然関係ないのだ。従ってやり方も全く同じで、例によって現物合わせでビニールレザーを切って、そしてまたもやホチキスで止めたり外したりの繰り返しという学習能力が備わっていないことを証明するようなやり方で、相変わらず型紙を取ったりしない俺に対して、いい加減自分で自分を怒鳴ってやりたくなるところをグッとこらえながら何とか作成完了。前面のプレートとか、側面の送風口、グローブボックス、デジパネなんかを載せてみて具合を見る。う〜ん、ま、こんなもんでしょ。素人が行き当たりばったりでやったにしては良く出来てるんじゃないかね。ちょっとシワ具合が適当だったり、Rの処理が目茶苦茶だったりするけどさ、全部俺が自分でやったんだぜ、見たか俺の貧乏パワーを! おいそこのお前、つまんねえ所にケチつけてるんじゃねえ! ってな感じで内装関係の作業を進めながら勝手に調子づいている間に、錆の野郎が着々と落とし穴を仕掛けていたのであった。今度こそ大変だ!


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