save the piazza! ---- diary

1998/12/30 乗った瞬間、完璧に終わった

別に車が欲しかったわけじゃないんですよ。欲しかったのはバンパーだけだったんですよ。そりゃ確かにJR130 XEはメチャクチャ魅力的だけど、大体俺みたいな貧乏人が車なんか2台ももてるわけがないじゃないですか。いやホント、最初は車ごと買う気なんて、それどころか試乗する気さえもさらさら無かったんだから....

PIAZZA NERO Irmscherを手に入れて既に3年。その位経つと大概にしていじりたくなるもので、俺はこの車を初期型っぽくしてみようか、なんていう邪道なことを考えてたりしていた。そんなわけで角目2灯ヘッドライトだとか、それ用のフロントグリルだとか、小型バンパーなんかを探してはいたんだけど、これが意外と見つからない。面倒だから止めようかなあ、なんて考えていたら何と突然のエンジンブロー。これには参った。参ったついでにふっ切れてしまった。どうせエンジン乗せ換えるんだし、ついでに全塗装だ、だったらバンパーも小さいやつだ、もういいわい、全部やっちまえ! ってな感じで勝手に一人で盛り上がっていた。

よっしゃ、Eグルにでも行ってバンパー買ってくるか、確か積まれていたJR130があったな、なんて考えていたところに、都合よくウチの掲示板に現れたこの投稿。

84年式 JR130 PIAZZA XE 6万円で売ります

これを見てしばし悩む俺。6万円ねえ。部品取りでもいいなんて書いてあるくらいだから、結構ボロいんだろうなあ。でもビルシュタイン付きか。っていうことは、前後バンパー、ヘッドライトにグリル、それにビルシュタインが6万円だろ、バラバラに買うより下手すりゃ安いんじゃないのか? 余ったエンジンはどうせPF乗りが買うだろうし、ってことは俺の払う分は3〜4万だよな。まあ悪くない話だな。

こんなこと考えてしまったのが全ての始まりなんですよ!

そんなわけで早速投稿の主にアクセス。何とその人は厚木に住んでいるらしい。すぐ近くじゃないか! しかも、もう年末も押し迫っているこんな時期だというのに「見に来ていいですよ」なんて言うではないか!! こうなったら見に行くしかない。早速予定を詰めて、12月30日にR129沿いのハンバーグ屋のあたりで待ち合わせすることに決定。頭の中では色々なプランが駆け巡る。勿論この時はこの車に乗るなんてことはこれっぽっちも考えていないのは当然であり、考えるのはエンジンを何処から調達するかとか、全塗装はどこでやるかとか、オマケのビルシュタインは何処でオーバーホールしようかだとか、かっぱぎは何処でやって何処に車を捨てるとか、そんなことばかりが頭の中をウロウロしている。さて当日、やっぱり「全塗装なら色はやっぱりシルバーだよな〜♪」なんて考えつつ、車が無いので寒い中K100RSで厚木に向かうのであった。

例のハンバーグ屋の近くのコンビニからオーナーに電話する。少し先の交差点を左折して、暫く行ったところに車を出して待ってます、ということなのでそこに向かう。が、向かったつもりが道を間違えていつの間にやらR412で津久井に向かっている。こんなはずは無いので、土地勘が無いからあっちこっちウロウロしながらも、ようやくさっき電話したコンビニに戻ると、何ともタイミング良く左前方からJR130が現れるではないか! オイオイ何だよ、もっとボロいかと思ったら全然キレイじゃないか! とか考えながら、とりあえず本来の待ち合わせ場所だった筈のハンバーグ屋の駐車場に入る。

バイクを停め、どうも〜、なんて言いながらその車を眺める。うーんやっぱり初期型は素晴らしい。錆なんか全然目に入らず、その雰囲気にしばし浸る。オーナーは俺がJR130をジロジロ見ている間、逆に俺のK100RSをジロジロ見ている。一体これの何処が部品取りなんですか? 十分キレイじゃないっすか、とオーナーに突っ込むと、あれやこれやと錆びている個所やダメな部品を指摘してくれる。うーん、言われてみれば確かにあっちこっち錆びている。この車を見始めて5分以上経ってからようやく気づく俺も馬鹿だとしか言いようがない。確かに錆びてる。でも、これを部品取りってのはないんじゃないかい? 気づいたら同じことばっかり何回も言っていたようだ。いいなあ。部品取りは勿体無いなあ、って。

いつまでもこんな所に居るわけにもいかないので、すぐ近くのオーナーの駐車場に移動。俺は勿論JR130の後ろを単車で走る。うーんやっぱりヱエわいこのリヤガーニッシュ。そっちばかり見ていて、熊本ナンバーであることに気づくのはずっと後の話である。駐車場に到着、JR130のそばにK100RSを停める。

遠くから見る限りはやっぱりキレイだ。なんて言ったってカタチが良いんだからそれだけでキレイに見える。とりあえず今日の目当てのバンパーは殆ど無傷のようだ。これは良い。勿論、ライトやグリルも付いている。そしてビルシュタインは? と言いたいところだけどいちいちホイールを外すのが面倒なので下から覗いてみると、確かにダストブーツなんか付いていたりして少なくとも純正ではないらしい。ウンウン、いいじゃないですか。ただ、それはあくまでこの車が本当にボロボロだったらの話で、少なくとも遠くから見るかぎりはボロくはない。ボロくないんですよ、全然。ウーン、こりゃ参った。参ったなんて言いつつも、いつもの癖でボンネット開けたりテールゲート開けたり錆びチェックしたりする。こんなことをしているということはようやく落ち着いてきたようだ。そしてIrmのレカロとは180°雰囲気の異なるゴージャスな起毛シートに腰を下ろす。目の前に広がるデジタルワールド。おおっ、これこそピアッツァだっ! しかしそれを囲むセンターコンソールとダッシュボードが興醒めだ。例によってダメだこりゃ。ちょっとガッカリ。そして何となくエンジンをかける。初めて真剣に聞くG200WNの咆哮。ふむふむ、レスポンスも悪くない。そしてチマチマと動くデジタルタコメーター。こいつは参った、ますます部品取りじゃない。

するとオーナーは唐突に「ちょっと乗ってみますか?」なんて言うではないか。え、俺、別に車買いに来たんじゃ無いんだけど...まあいいか、折角だから乗ろう。JR130 XEを運転できる機会なんてそうそうあるもんじゃない。オーナーが助手席に乗り込む。たどたどしくセレクターをDに突っ込む。久々のオートマに緊張しながら駐車場の出口に向かってステアリングを切る...と「ゴゴゴゴゴッ」と物凄い音がするではないか。思わずブレーキを踏んで止まってしまう。何だこりゃ、何の音ですか一体、と尋ねると、どうもステアリング系統がダメらしい。うーん、こりゃ部品取りにしたくもなるかなあ。まあ仕方ない、そのまま前に進む。

うーん、いいねえ、この何とも言えない重厚さに欠ける独特の雰囲気。重厚じゃ無いんですよ。安っぽくなりそうなギリギリのところで持ちこたえている繊細な雰囲気、といったところか。とにかく、何だか判んないけど、いすゞさんが頑張って作ったんだなあ、っていう感じに満ちている。折れて無くなったリヤワイパースイッチを見ていると余計にそう思えたりする。そうなんだよなあ、やりたいことに技術や耐久性が追いつかなかったんだよなあ。狭い路地を抜けて、工事が終わって広くなったR412へ。ちょっとアクセルを踏んでみる。速い。ような気がする。デジパネはきちんと動いている。そうなんだよ! 俺は今、デジタルクルージングをしているんだよ!! 勝手に興奮する俺。明らかに滑っている筈のATさえ、ティプトロニックのように思えてくるのは何故だ。信号待ちで止まった時に不安定なアイドリングが、逆にまだ生きていることを感じさせるのは何故だ。参った、降参だ。JR130よ、お前がまだ部品取りにされたくないのは良く判った。

既にこの車を部品取り車として買う意志は完全に消え失せた。車がまだ動きたいって言ってるんだよ。そんなことできるわけないじゃないか。俺の頭の中は完全に混乱している。無言で駐車場に戻る。ちょっとコーヒーでもどうですか? というオーナーの誘いで、オーナー宅にお邪魔して頭を整理することにする。まずはオーナーに何故売りたいのかを聞いてみる。例によって家庭の問題のようだ。2月で車検が切れて、その後オーナーは地元の宮崎に戻る。奥さんにはこの車を持って帰るなと言われているらしい。こればっかりはどうにもならない。話をしているうちに、オーナーがピアッツァに好きで乗っていたことが良く判る。だったら、余計売らなきゃいいじゃないか、と思うけど、そうもいかないらしい。そこで誰かに乗ってもらうか、またはあの状態だから部品取りとして使ってもらえれば、ということらしい。

でも、一体誰があの車を買うっていうんだろう。少なくともJR130を敢えて買おうとする人なんて、今となっては殆ど居ない。かと言って、部品取りのJR130が欲しいなんていう人もやっぱり知らない。そりゃそうだ、HBLやIrmに流用できる部品なんてこれっぽっちも無い。困った。何とかこの車を延命させる方法は無いものか。答えは見つからない。オーナーも俺も頭を抱える。頭を抱えるのはオーナーだけでいいのに、何故か俺も頭を抱える。何とかしたいですね。ツブしたくないですね。また同じことばっかり何回も言っている。

ようやく最低限の回避策を思いつく。ISUZU MLのおかげで、暫定的に車を置いておく場所は何とか確保できるから、暫くそこに置いておいて、誰か買い手が現れるのを待つ、というもの。とりあえず欲しい人を募ってみるけど、駄目だったらそれでどう? と提案してみる。だけど、オーナーは売るって言ってるのに、誰が金払うって言うんだ? また頭を抱える。俺があんまりにも同じことばっかり言っているものだから、オーナーは値段を下げてくれた。ピアッツァ付きカーナビで5万円。ジェミニ付きレカロみたいなもんだなあ。さらに悩む。これから自分のIrmのエンジン乗せ換えがあるから、そんなに金は無い。

結局、何の答えも見つからないまま、今日のところは解散となった。とりあえず当たれるところを当たって、買い手を探してみます、という曖昧な結論を残して。K100RSの元へ戻る。そばにJR130が佇んでいる。この姿を見ていると、ますますツブしちゃ駄目だよ、っていう気分になる。K100RSに跨がる。ここに来るときとは全く違ったことを考えながら家に戻った。

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