Michinoku hitori tabi Part 2 寝不足、満腹、そして居眠り


Route Map 980627 本日(1998/6/27)の走行ルート
会社の先輩の家 → 東北道矢板北PA [R4,R119,東北道]
矢板北PA → 白河IC [東北道]
白河IC → 猪苗代 [R294]
猪苗代 → 米沢 [ゴールドライン,スカイバレー]
米沢 → 鳴子 [R287,R347,県道28号]
鳴子 → 横手 [R108,R13]

(某地図より無断借用)


午前5時30分、目覚ましが鳴ったのにも気付かず、先輩に怒鳴られてようやく起きた。ぬぉー眠い、眠すぎる!とんでもなく眠い! 睡眠時間1時間ちょっとでは寝た気がするわけがないのだが、それでも行かねばならないのでノソノソと起き上がって布団を片付ける。気付いたら先輩の奥さんと子供は既に起きている。ここでようやく御挨拶。眠いので自分でも何をしているのか良く判らないながらも着替えや準備をしていると、子供が俺の方に寄ってくる。しょうがないので相手をしたりしているうちに徐々に目が覚めてくるが、時間もどんどん経っていく。既に間に合う時間ではないので開き直ってのんびり準備を進める。先輩宅を出て、パニアケースに荷物を入れたり雨で濡れたバイクを拭いたりしている間にも先輩はバイクの各部をいじりながらああだこうだと言っている。クラッチを握ってしまって、その結果サイドスタンドが上がってマフラーにぶつかる音にビックリしたりしているが、理由を説明すると納得したようだ。暖気しながら談笑していると時はもう集合時間10分前、絶対間に合わない。あんまり遅れるのも申し訳ないので、しょうがねえなあ、行くか、とか言いながら宇都宮に別れを告げることとする。先輩に感謝の意を表し、まだ濡れている路面に注意しながら出発する。

早朝の宇都宮市街には車は殆ど居ない。ガソリンが残り少ないが、そこは地方都市の性で24時間営業のスタンドなど無い。俺が住んでいた頃は多少はあったような気がするのだが、これも不況のせいだろうか。本当は金をケチって矢板ICから東北道に乗りたかったのだが、大遅刻もいいところなので仕方なく宇都宮ICから乗ることにする。知っている道の筈なのにやたら工事中が多いせいで交差点で戸惑いつつ宇都宮IC到着。インター近くのスタンドならやっているかと思ったが、やっぱり営業していないので上河内SAで入れることにしてさっさと東北道に入る。そこからは怒涛のアクセリングで上河内SAでの給油、矢板ICとクリアし、ようやく矢板北PA到着。インパネの時計を見るともう7時だ。30分の遅刻。PAに入ると懐かしい面々が何故か大笑いしながら俺を出迎えた。

いやーどうもどうもお久しぶりです、なんて言いながら適当に言い訳をする。言い訳のネタは当然先輩が長々と話し続けて寝させてくれなかったことだ。しかし俺よりもっと酷いのが居て、今起きた人が居るらしい。ちょっと安心。腹が減ったがどうにも周りの雰囲気が俺に立ち食い蕎麦を食うことを許してくれなさそうなので、目覚めの珈琲だけで我慢する。今回のメンバーはZEPHYR1100、CB1000、CBR1000F、CBR600F、ZZ-R400、寝坊したVTR1000、そして俺のK100RS。他にアコードが1台。本田の社員が多いだけに、本田車が多く、しかもでかいのが多い。以前に900Ninjaで行った時は自分が最低排気量という珍しい体験をしたが、今回はそういう妙な目にはあわなくて済んだようだ。しかしこの集団はやたらと峠でのペースが速いので問題は排気量ではなくウデである。今回は荷物満載でいかにも遅そうなK100RSを用意したので遅い言い訳がしやすくて良い。しかしYさんが「そのリュック車に載せれば?」と俺の目論みを見透かしたような提案をしてきたので徐々に言い訳が苦しい状況に追い込まれてしまう。確かに荷物は邪魔くさいので載せてもらうことにする。そして俺が珈琲を飲み終わったところで出発。

まずは東北道を白河ICまで走る。久々にリュック無しで走るとやはり格段に走り易い。2車線の東北道を100km/h程度で淡々と走り、気付いてみたら白河ICに到着。なんともお気楽なバイクだ。100km/hなら限りなく快適である。白河ICを降りたところで何台かが給油し、R294で猪苗代方面に向かう。車さえ居なければ適度なコーナーがあって快適な道である。先頭のCB1000は黄線だろうが何だろうが立ち塞がる軽トラ達を追い越していく。仕方がないので後方の我々もそれに従う。こうして車が居ない状況を無理矢理作り出して走りまくっているうちに、アコードとの待ち合わせ地点のコンビニ到着。ここでようやく朝食にありつくが、昼食の米沢牛に備えてカロリーメイトと午後の紅茶に留める。

気付いたらまだ8時半なのだが、早く峠を走りたくてしょうがない集団は休みもそこそこに走り出す。カロリーメイトのおかげか徐々に眠くなってくる。たまに集落を抜けるのだがそこでもCB1000は一向にペースを落とす気配が無い。そのせいで多少は緊張感を保つことが出来るのだが、眠いものは眠い。猪苗代湖に到着し、俺ならここで一服して写真でも撮るところだがこの集団はそういうものには興味が無いのでただただ走り続ける。程なくして磐越道の磐梯河東IC出口に到着、ここで寝坊したVTR1000を待つ。待っているうちに眠さはどんどん増してくる。他のメンバーは元気だが、俺とYさんは殆ど廃人状態になっている。午後の紅茶を飲んで昼寝でもしたいところだが、困ったことにVTR1000はやけにタイミング良く着いてしまった。あぁ、もう少しゆっくり来てくれれば良かったのに。このVTR1000はまだ馴らし中のようで、500kmしか走っていない。この人、確か以前はCBR900RRに乗っていた筈だよな。金持ちだのう。皆でVTR1000を囲んでああだこうだと言っている。もう少しそのビデオデッキみたいな名前のマシンについて語り合ってくれればいいのに、その輪はすぐに解けてしまい、出発することになってしまった。

3キロ位走ってゴールドライン入口に到着。ゴールドラインは磐梯山の山腹をひたすら登り、最後に桧原湖に向けて少しだけ下るという道である。ようやく俺以外の全員が歓喜する峠の御登場だ。別に俺だって峠は嫌いじゃないが、この連中はあまりに速すぎてついていくのが一苦労なのだ。前回は途中に素晴らしく景色の良い展望台があるのも完全に無視して、ヘアピンばかりの道を三桁の速度で走りまくって初めて900Ninjaのフレームが捩れるという体験をさせてもらったが、K100RSじゃあそこまでは無理だろう、というよりコケたらいくらかかるかわかったものではないからやりたくない。しかしここは天の助けか、峠の上の方には霧が広がっている。ほんの少しだが雨も降りだしたようだ。これなら言い訳はいくらでも出来る。料金530円を払い、一気に山を登り始める。俺の前はVTR1000、後ろはCBR1000F。上手い具合に馴らし中のバイクの後ろについたので引き離される心配は少ない。気象、路面ともに良くないので、前回とは違って特に目を三角にする必要も無いペースで進むが、展望台で止まらないのは相変わらずである。まあ今回は霧でどうせ展望も良くないので止まっても意味は無かろう。他の面々もおそらくこの状況では米沢牛のことしか考えていないに違いない。淡々とした走りでゴールドラインを走り抜け、桧原湖沿いに来たあたりでいよいよ雨が激しくなってきた。道端にバイクを停め、各々合羽を着込む。K100RSなら合羽無しでも大丈夫かもしれないとも思ったが、ここからさらに峠を登るので仕方ないので俺も合羽を着る。

さて次は米沢へ抜ける最後の峠となる白布峠を抜けるスカイバレーだ。この峠の頂上を抜けると山形県に入る。相変わらずの隊列で登り始めるが、ここに来て霧が尋常ではない状態になってきた。前方視界は約30メートルも無い位なので、これはもう普通に走れるような状態ではない。雨は大したことはないが路面は相変わらず濡れているので、常に緊張感を最高レベルにして走らなければならない。何よりこんなところで事故ったら帰れないじゃないか。しかもこのバイクはBMWだ。コケたらいくらかかるか判らん。なんて考えているうちに唯一の頼りの前を行くVTR1000が見えなくなってしまった。こいつは困った。前を行くテールランプ、ブレーキランプが無いと道が判らないのだ。仕方がないので多少ペースを上げて追いついたところでいつの間にか県境の駐車場に到着。どうせ先頭のCB1000が休んでいるだろうと思ったらどうも止まらなかったようで、VTR1000はさっさと峠を下り始める。おいおい、もう疲れたぞ、休ませろ、なんて思っているうちに馴らし中のVTR1000は下りは俺のものだとばかりにさっさと見えない所まで行ってしまった。もう追いつくのも面倒なので呑気に走っているうちにようやく霧も晴れてきたようだ。ついでに雨も完全に上がった。濡れた路面以外はようやくまともな状態になったのでペースも上がる。暫く走るうちにあの霧は何だったのかと言いたくなるような太陽燦々状態になり、路面も完全にドライになった。合羽なんか着ているものだから暑くて仕方がない。さらにペースを上げ、逆にペースを落としていた先行部隊に追いつき、遠足中か何かの小学生達に手を振りながら米沢市街に入る。途中のガソリンスタンドで停車し、ここでようやく合羽を脱ぐ。口々にあの霧は一体なんだったんだ、あーつまらねえ、なんて喋りながら軽く一服する。

ここまで来れば目指す米沢牛まではあと少しだ。今回は特に予約も何もしていないので、まずは作戦会議のために市内中心部にある上杉神社に向かう。バイクを駐車場に停めてまた一服しながらこれからどうするかを考える。人数が9人と多いので、二手に別れてそれぞれ別々の店に行き、2時頃にまた上杉神社集合ということで話がまとまり、俺は以前も行った「登起波牛肉店」に行くことにする。ここから登起波牛肉店までは歩くにはちょっと遠いので、折角センタースタンドをかけたのにまた戻す羽目になった。

Uesugi jinjya 上杉神社に着いて、ようやく落ち着いて一服。

5分ほど走って登起波牛肉店に到着。むっ、何だか建物がちょっと新しくなっているぞ。入り口でいきなり戸惑ってしまう。階段を昇るといきなり人の列だ。うーん、丁度昼飯時に行ったのがまずかったか。仕方がないので待つことにする。クソッ、もう足が疲れたぞ、腹も減ったぞ、早くせい! そして10分程待つと、人がゾロゾロと出てきた。どうも大集団が席を占領していたようだ。暫く待つと片付けが終わり、ようやく席に着く。

Tokiwa beef shop やっと着いたぜ、登起波牛肉店。

前に来たときは二階までしかなかったのにいつの間にか三階まで出来ていて、しかもやけにキレイになっている。前の汚い部屋の方が汗ダラダラで汚い格好のバイク乗りには居心地が良かったのだが、冷房が効いて涼しいので良しとする。座った瞬間眠くなってしまったが、まずは米沢牛だ。メニューを見てみるが、例によって選択肢は少なく、しかも全部高い。過去二回は「特選リブアイ180グラム 6500円也」を食ったので、今回は「特選サーロイン180グラム 6000円也」にする。一応500円安いのだが、それにしたって高い。普段100グラム78円とかの肉を食っている俺としては破格の肉だ。ライス、味噌汁、サラダが付いていることを差し引いても当然高い。ま、年に1回だし、美味いのは判っているので前菜(?)のソーセージを食いながら談笑して待つ。アコードの助手席に乗るTさんはここぞとばかりにビールと牛刺しを頼む。何とも美味そうだがじっと耐えていると、Tさんは調子にのって二杯目も頼む。そんなにビールばっかり飲んで米沢牛が食えるのか、なんてからかっているうちに、おぉ、来た来た米沢牛が!

Yonezawa Beef 美味そうじゃのう。贅沢じゃのう。

早速1年ぶりの米沢牛を味わう。やっぱり美味い! しかし去年の「特選リブアイ」との違いが良く判らん。まあ美味いから良い。全部食ってしまうのが勿体無いのだが、残してもしょうがないので食ってしまう。ビールを散々飲んだTさんはやっぱりきつそうで、案の定牛刺しを残す羽目になってしまった。残り物は当然俺が頂く。これも美味い。

いやいや、美味いものを食った。食ったら早速昼寝といきたいが、さすがにそうはいかないので待ち合わせ場所の上杉神社へ向かう。既に他の店に行った三人は着いていて、出店のアイスクリームを食ったりしている。他の人達は会社への土産なんかを買ったりするが、俺は当然そんなものは買わない。バイクだからそんな荷物になるものは買えるわけが無いのだ。そのまま3時近くまでダラダラする。他の人達は帰りのコースを考えているが、俺は一人で横手までのコースを考える。一応考えてはあったが、雨が心配なので一応平坦部を中心としたコースも考えてみる。何よりの問題は横手まで200km以上あると言うのにもう3時過ぎだという点にあるが、まあ天気も良くなってきたことだし、眠くて考えるのが面倒なのですぐに止めてしまう。宇都宮軍団も帰宅の経路を決めたようだ。そろそろ出発することとする。

アコードに積んであった荷物を受け取り、出発の準備をする。俺がのんびり準備しているうちに宇都宮軍団は次の峠に向けて早くも出撃体制が整ったようだ。お気をつけてー、なんて言いながら手を振って見送る。今まで集団で走ってきて、あと200kmを一人というのは何となく寂しいものがあるが、良く考えてみたら200kmどころかこれから帰るまでずっと一人なんだよな。まあしょうがない、雨が降らないうちにさっさと先に進もう。

上杉神社を出たところで、この先のいかにも何もなさそうな行程に備えてガソリンを入れる。ここは以前900Ninjaで来たときに危うく滑って転倒しかけた因縁の場所なのでトロトロと出ていく。先程の登起波牛肉店の近くを過ぎ、R287に入る。横手にはR13で行けば何も考えなくても到着できるのだが、全然面白くなさそうなので一応東北ツーリングマップ推薦のこちらを選ぶ。とはいっても地図を見るかぎり農村をのんびり走るだけのようにしか見えないので眠くならないかどうかが非常に心配だ。しかしそんなことを考える間も無く雨が降りだしてしまう。おいおい、さっきまであんなに晴れていたじゃないか。ちょっと降り出すのが早すぎるぞ。JR米坂線の踏切を越えた煙草屋の前でしかたなく合羽を着ていると、たまたま通り掛かったオッサンが声をかけてくる。こういうのが田舎をツーリングする醍醐味だよな。東京で合羽着込んだりしていても馬鹿そうなネエチャンに変な目で見られるだけなんだから。気ぃつけてな、なんて言いながらオッサンは去っていき、ちょっと一服していると米坂線のキハ20(?)が通り過ぎていった。雨が降っているのに何となく得した気分。

合羽を着込み、一服を終えたところで出発する。しかし暫くすると雨は止む。そんなもんだよな。この道はホントに単なる田舎道なので面白くも何ともない。予想通り眠くなる。たまに雨が降ったりする中我慢して走っていたが、何度もあくびをしているうちに涙のせいかまつ毛が目に入ってしまってろくに前が見えなくなってしまった。仕方がないので長井市の役所近辺で地図の確認も兼ねて止まる。するとこういう時に限って雨が強くなる。午前中に買った午後の紅茶とガム、そしておきまりの一服で無理矢理目を覚まそうとするが、そう簡単にいくものではない。一応市の中心部なのでそれなりに車が走っているのに、そんなのを気にもせず雨の中体操をしてみると多少はマシになった。というわけでまた出発。

中心部を抜けると車も減り、最上川沿いを山に向かって走る。こりゃ雨が酷くなるかと思ったら逆に止んできて日が出てきた。すぐに暑苦しくなるが、いつまた降り出すか判らないのでそのまま走っていると、目の前にこんな馬鹿馬鹿しい看板が出てきた。

Kanban
基本的には真面目なフォントで書いてあるのに「だっちゅーの」だけインチキくさい手書きだからいたずらなのかもしれないが、こんなの置いたら逆にその電柱にぶつかる奴が居るんじゃないかと不安になるんだっちゅーの。その後暫く走っても雨が降らないので途中のダムの辺りで合羽の上着だけ脱ぐ。そしてまた一服。前方には「りんご温泉」の看板があり、しかもそれは300円らしいので是非とも入りたいところだが、眠さを助長するだけなので断腸の思いで諦める。合羽をテント等を括っているロープに括りつけて出発し、朝日町の市街を抜けて寒河江市方面へ向かう。このあたりは農村地帯らしく、道も退屈きわまりない。雨も降りそうもないのでJR左沢線沿いで適当にバイクを停めて合羽のズボンを脱ぐ。何故必ず線路沿いで停めるかというのは俺にも良く判らんが、このあたりでは既に考える能力を失っていたのでおそらくそれは本能のなす技だろう。暫く走ると工事中の高速道路と交差する。こんな交通量の少ない地域に何故自動車専用道路が必要なのか理解に苦しむ。そして俺は眠さに苦しむ。途中でR287からR347に入り、風よけ(?)の並ぶ田んぼ沿いの道を延々真っ直ぐ走る。一体いつ終わるのかと思うくらい真っ直ぐなので殆ど無意識で走っているうちに、気付いたら何回かカーブを曲がっていたことを思い出す。いい加減いつまでも本能のままで走り続けられるわけもない、と思うとぞっと寒けがするのでたまたまあった煙草屋の前でバイクを停める。缶珈琲を買ってその辺に座り込んでボーッと地図を見ているうちにまた眠くなる。もう限界だ。ここでふて寝を決め込んでつかの間の仮眠を取ることに決定。しばし意識不明の時間を取る。

何となく目覚めると、時計は既に5時を過ぎ、山の中だけに辺りも徐々に暗くなってきた。逆に俺の脳みそは仮眠のおかげか復活の兆しを見せてきた。ここから横手まではまだ100km以上ある。一応以降の走行経路を考え直してみるが、退屈そうで眠くなりそうなR13よりも、あえて予定通りのイバラの道を選ぶことに決定する。頭脳は半死状態だが、K100RSのおかげか身体はまだそれなりに元気なのが救いだ。これが900Ninjaだったらすでに上半身が硬直しているに違いない。よっしゃ行くぜ、と空元気を出しながら再出発。

尾花沢市に入り、R347から県道28号で鳴子方面へ向かう。暫く田んぼと畑しかない退屈な道だったので、久々に走るドライ路面の峠道が何とも心地よい。車が少ないのも非常に具合が良い。細かいカーブが延々続くので眠くなる暇もない。暫くするとR47に入る。JR陸羽東線、大谷川と何度も交差したりしながら走るこの道は、先程の県道28号より道幅も広く、高速コーナーが多いためBMWにはピッタリな道だ。道路も良いし、景色も良いので楽しく走っているうちに鳴子の温泉街が近づいてきた。遠方に馬鹿デカイこけしが見えるのがその証拠である。その直前で妙な名前の休憩所があったので思わずバイクを停めて休憩する。

Shitomae no seki「尿前の関」で「しとまえのせき」と読むらしい。

ここは「奥の細道」ゆかりの地らしいが、俺はそんなの読んだことないから知る由もない。それよりすぐそばの鳴子温泉郷の方がよっぽど気になるが、やっぱりここも諦め、続くR108にさっさと入ることにする。温泉街から橋を渡り、突然現れる上り坂を越えるといきなり湖が現れたりするところが中々ダイナミックで良い。暫く湖沿いを走るとまた温泉街。間欠泉もあるらしいので見に行こうとも思ったが、かなり暗くなってきたのでこれも断念して先に進む。このR108も先程のR47と同様、他の車が全く走っていない上に高速コーナー中心なので非常に面白い。ガンガン走っているうちに新道、旧道の看板が出たので新道方面へ進む。明らかについ最近出来たばかりのトンネルが延々続く。トンネル内は猛烈に寒い。あんまり寒いのでいくつかトンネルを出たところでまた休憩してしまう。

R108 roadsideこのへんの公衆電話って、やけに高いところにあって、しかもボックスごと煌々と光っているのが妙に印象的。さすがは豪雪地帯。

暫く一服しつつ地図を見つつダラダラしていたのだが、一向に他の車が来る気配は無い。本当にこれで横手に行けるのかと思っていたところにカローラとサニーがバトルしているかの如く物凄い勢いで走り抜けていった。乗っているのは普通のオバチャンだったりする。さすがに車が必需品な地域の人間の運転は違う、なんて妙な関心をするが、そんな関心をしている暇があるならさっさと先に行かねばならないので、試しにその2台を追っかけてみることにする。

これが最後だと思われるトンネルを抜けてふと辺りを見ると、山の上の方に細い道が走っている。あれがおそらく旧道だろう。あんな道をこのバイクで走る気にはならないから、俺はこの新道が出来ていたことに感謝しなければならない。この道も既に峠の頂上は越えたようで、あとはひたすら下るばかりだ。結構なペースで走っているのだが、先程のカローラとサニーに追いつく気配は全く無い。一体どんなペースで走っているんだあのオバチャン達は。ひたすら走っているうちに徐々に周辺に民家が増えてきて、R13が近づいてきていることが何となく判る。暫く川沿いを走るうちにR13との交差点に到着。ここから目指す横手までは約20km、ようやく気が楽になってきた。

しかし気が楽になるとどっと疲れも出るもので、無性に一服したくなってきたので奥羽本線沿いのパーキングで休憩。やっぱり気付いたら線路沿いだ。ここで最後の地図の確認をする。さて、今日停めてもらうバイト時代の同僚Wの家は秋田自動車道横手ICのそばだということなので、そこまでの道を調べてみるとなんのことはない、真っ直ぐ行けば良いだけだった。まあ横手ICだったら看板くらい出るだろうからそれに従えばよい、ということでさっさと出発することにする。湯沢の市街地を抜けて既に真っ暗なR13をひたすら走る。もうとにかく何処かに普通に座ってビールを飲みたい一心なのでかなり目茶苦茶な走り方になっている。暫くすると予期しないところで横手ICの看板が出たのでそれに従うと、何だかわけの判らない田舎道に入ってしまった。しかも看板も出ない。仕方がないのでたまたま前に居た車についていくと、あっちこっち走った挙げ句何とか横手ICに到着した。近くにあったSATYの駐車場にバイクを停め、ここでW家に電話することにする。

このあたりの店はみんな平屋建てで、どこも馬鹿デカイ駐車場がついていていかにも田舎の郊外の商店街(商店街の意味が都会とは違うんだよな)、といったところである。SATYのそばには「SUPER宇宙船」という全く何の店だか判らない名前のレンタルビデオ屋があったりするのもさすがである。そんなことを考えながらW家の電話番号が書いてあるPalmPilotの入ったパニアケースを開けようとすると、何と! 鍵を捻って抜こうとしたらキーシリンダーごと抜けてしまった。何だよこれ、どうすりゃいいんだよオイ。バイクは壊れなくてもこういう部品は壊れるのかい。暫く原因を探ってみるが、試しに再度鍵をかけてみると一応鍵はかかる。でもキーシリンダーは抜ける。意味無いじゃないか。しょうがないのでキーシリンダーが落ちないようにガムテープを張って誤魔化し、さっさと電話しに行く。すぐに行くから待っていろ、というのでバイクのところで一服して待つ。

すると、本当にすぐにWは現れた。俺はあえて横浜大洋ホエールズのW帽子をかぶって出迎えたので、奴は車から出てくるなり馬鹿笑いしている。こういう下らない洒落が通じる知り合いが秋田にいるというのもなかなかオツなもんだ。しばし下らないことを喋った後、Wのレガシィの後ろについてW家に向かう。すると、ホントにすぐそこだった。どこにバイク停めりゃいいんだ、というと、となりの車庫に停めろという。その車庫がまたえらい立派な車庫で、プレハブではあるが立派な屋根つきだ。さすが雪国だと妙な感心をするが、その屋根が猛烈に高い所にあるのは意味不明だ。早速センタースタンドを立て、着替え等の入ったパニアケースを外して家の中に入る。Wの奥さんとも久々の御対面。ゴミ出し用のカゴが玄関の前にあるのがいかにも地方都市である。

このアパートは2DKみたいで、余っている一部屋は好きに使ってくれという。しかも奥さんは晩飯まで用意してくれているではないか。考えてみれば米沢牛以降何も食っていなかったのでこれは感動モノだ。何とも豪勢な出迎えで、ここまで苦労して走ってきた甲斐があったというものである。しかもテレビを見るとプロ野球の巨人対横浜戦が放送されていて、横浜が勝っているではないか。全くもって気分が良い。W&奥さんと久々に馬鹿話をしながら飲むビールは非常に美味い。ああだこうだと喋りつつ明日のコースを考えるが、今日のあまりにも無理なスケジュールのせいで寝不足にも程があるので、明日は適当に起きることにして、Wが行ったことが無いという夏油温泉に一緒に行くか、ということで話がまとまり、それ以降どうするかは明日その場で決めることにする。時間はあっという間に12時。田舎の夜は早い、そろそろ寝ますか。

本日の走行距離 468km
本日の費用 ガソリン代 2006円
有料道路代 ゴールドライン 530円
スカイバレー 630円
珈琲、軽食代 562円
米沢牛 6000円(!)
手土産のソーセージ 1266円
合計 10994円
累計 15060円


Next!!   Part 3 まずは温泉、次も温泉  


Over 100,000km Project