前日と同じく5:35に目が覚めた。窓を開けて外を見てみると、空き地と民家が見える。地面や民家の屋根を見る限り、夜中に雨は降ったものの、現時点では降っていなさそうに見える。天気予報通りだ。
ではとりあえず朝風呂に入るか…と思ったが微妙に頭が痛い。昨晩酒を飲み過ぎたのか、それとも気圧が変なのか。少しダラダラしてから風呂に向かう。朝早いからかどうかはわからないが誰もいない。時間的には昨日と同じなんだが、客の入りが全然違うな。客層の違いなのだろうか。露天風呂でしばらくボケーとしていたが、その間もやはり客は来ない。空は暗いものの、雨は降らないまま。何とかこの状態をキープしてほしい。
部屋に戻り、スペシャルイギリストーストの朝飯を食う。見た目通りの味だ。
今日は帰るだけで、時間制限なんてあってないようなものだからか、天候がパッとしないからなのか、イマイチ準備に気合いが入らない。前夜に広げた電子機器の充電装備、飲み食いしたものの片付け、荷物の整理、着替え等、何をやっても遅々として進まない。前日と同じ時間に起床したにもかかわらず、出走時間は前日より1時間以上遅くなってしまった。目的がないと人間こうなってしまう。
快走農道巡り
今日の予定としては、モリタ氏激推しの農道「みずほの里ロード」で角館から横手まで南下し、そこからR398で栗駒山を超え、あとは東北道と常磐道で帰る、という極めて適当なもの。「みずほの里ロード」は全然知らない道だが、ここまでの2日間でモリタ氏推奨の道は全てアタリで、そのモリタ氏が激推しするのだから大いに期待できる。決めたのはそれらだけで、その前後はもはや考えるのが面倒なので全てGoogleさん任せだ。唯一の条件は、極力農道や県道を使うという点だけ。
宿を出てまずは北に進路を取り、しばらく走ったところで秋田中央広域農道に入る。これはたまたまGoogleさんの推奨ルートが農道だったというだけの話だが、この道がなかなか良い。交通量はさほど多くなく、たまに現れる交差点や集落などを除けば7割方は山間を走っている。思わずモリタ氏に報告したくなってしまう道だが、それほど距離が長くない点が推奨まで至らない理由かもしれない。
20kmほどで秋田中央広域農道は終わり、R46に合流する。このあたりは実は去年も鳥海山から田沢湖に向かう際に走った道だが、去年は直進した角館バイパスには今年は乗らずに市街地に入る。Googleさんの言う通りに角館市街地を抜ける。
市街地から農村地帯に入ってしばらく走ったところで、待望の「みずほの里ロード」が始まる。
はじめのうちは田んぼの中を走る道だったが、すぐに丘陵地帯に入り、ゆるやかなコーナーとアップダウンを繰り返す好ましい道になる。その後も農村地帯と丘陵部、たまに小集落といった繰り返しで、他の道との交差点も少なめで走りやすい。路面状況は平均的な農道のもので、良くも悪くもない。
このあたりは普通の農道だが、みずほの里ロードの良いところは、快走路の占める割合が高いこと、距離がそこそこあり、途中からつまらなくなることもなく、最後まで良い感じであり続けることだ。
横手の市街地に入ったところで、長かったみずほの里ロードも終わる。
南端の空き地で休憩しつつ、この先のルートを考える。天気予報を見る限り栗駒方面は雨にはならなそうだ。予定通りR398で栗駒山を超えることにする。ここ横手からR398までは、また別の農道「雄平フルーツライン」が通っているのでそれを使う。
この雄平フルーツラインは全くのノーマークだったが、走ってみるとみずほの里ロードと比べて勝るとも劣らない良い道だ。あまり高評価する媒体を見かけないのは、農村地帯が占める割合が多く、何もない丘陵地帯や山の中を走る割合が少ないとか、距離が短すぎて物足りないとか、そんなところだろうか。
しばらく続いた雄平フルーツラインは終わり、R398に合流する。稲庭うどん屋が立ち並ぶ稲庭町を素通りし、いよいよ栗駒越えに挑む。
小安峡で四苦八苦
このR398は、1998年に東から西への山下りで使った記録があるが、全く記憶にない。あれは25年以上前の話だし、今回は反対方向だし、もはや初めて通るようなものだ。
山登りをはじめたところで、ノロノロ走る地元車に行く手を遮られる。黄線だったので仕方なくダラダラ走っていると、ダム管理事務所の看板を見かけたのでさっさとそちら方向に逸れ、管理事務所前にKを停め、ダムカードをゲットする。平日ツーリングの醍醐味だ。
ダムを出て再びR398に戻る。上り坂を快走していると、先ほどから何度も看板を見かけていた「小安峡大墳湯」の駐車場に着く。R398沿いではおそらく最も著名な観光地だと思われる。時間はまだ12:00前で、この後の予定は何もなく、ただ帰るだけ。せっかくの機会なので観光しに行くことにした。
入り口で杖を貸し出している点が気がかりだったが、ここで怯んでもしょうがないので杖を手に取って先に進む。ちょっと進んだところで、ちょっとぐらい怯んだほうがよかったことに気づく。
降りるということは、あとで登るということだ。そもそも俺の両膝は今回のツーリングでかなりガタがきていて、ちょっと歩くだけでポキポキ言ったり、ろくに曲がらなかったりする。おそらく初日の630kmの高速移動で同じ格好をし続けていたことによるものだろう。そんな両膝でこの階段を降りるのはかなり厳しいが、こんな年寄りでも観光するような場所で途中で諦めて戻るわけにはいかないので潔く降りる。
ようやく最下部まで降り、川沿いを上流側に進んで岩壁を越えると、突然凄い光景が現れた。
岩の隙間から温泉が噴き出しているようだ。一応看板で写真を見てはいたが、やはり本物の迫力は桁違いだ。
たまたま通りがかったので小安峡大噴湯に寄ってみたら想像以上だった pic.twitter.com/bGhUZp1c5Y
— m.sota (@msota_RS) April 30, 2024
思いがけず凄いものを見てしまった。これは確かに観光地としてプッシュしたくなる。そして紅葉の時期になるとより魅力が高まるだろう。今の時期の新緑もそれはそれでいいんだけど。
さて、降りてきてしまったので上らなければならない。ヒーコラ言いながら長い階段を登る。登り切るとそれなりの達成感がある。ここ数日は基本的にシートに座っているだけだったので、久しぶりに運動した感がある。
ようやく階段を登り終えた。最初の駐車場からかなり離れた場所に着いたので、まともに動かない両膝を引きずりながらダラダラ歩く。なんとなく駐車場の片隅にある産直店に入り、小腹が空いたので名物だと謳っている「やきもち」を買って食う。なかなかうまい。うまかったので1つだけ食べて残りは土産にする。ついでに、温泉の地熱で作ったという切り干し大根も買う。
栗駒越えに挑む
大墳湯が思いのほか遠かったので50分も使ってしまったが、何の予定もないので痛くも痒くもない。こういう日があってもいいだろう。特に焦ることもなく先に進む。
ここから先は基本的にはもう何もない。しばらくは小安峡の温泉宿があるが、それを過ぎると宮城県側の別の温泉街まではひたすら山の中を走る。R398は、3桁国道とは言ってもさすがは国道。道幅の広さや路面状況は県道や農道よりワンランク上で、K1100RSに好適なハイスピードコーナーが続く快適な道だ。去年の秋に通った勿来から鮫川村に行くR289に似ている。
楽しく走っているうちに元有料道路の県道282との交差点に出る。ここから峠を越えて須川温泉、と言うのも考えたが、困ったことにこの先は冬季通行止めだ。その気になれば道は通せるということは一昨日の八幡平、昨日の八甲田で実際に体験している。ここを通していないのは単にやる気、または金が無いのだろう。無いものねだりをしてもしょうがないので素通りする。
楽しく走っているうちに、とうとう宮城県との県境に着く。
自分は島根と宮城のハーフで、その宮城県の方は町村合併の結果として宮城県栗原市になったので、そのルーツの場所に来た…と言えなくもないが、旧瀬峰町にある旧家はここから50km以上離れていて、まるで雰囲気が異なる。この場所に関しては、まったく戻ってきた感みたいなものはない。
この先も楽しい道が続く。全く何もない山の中なのに道路だけはきちんと整備されている。何のためにあるのかわからないほど何もない道だが、税金で作られているので堂々と使う。
ここから見る限り大した雪には見えない。八甲田に出来て、栗駒で出来ないとは思えない。やっぱりやる気が無いだけだろ。まあ需要も大して無いんだろうけど。
少々悪態をつきながら湯浜峠を出る。この先は下りになるが、くたびれるような急な下り坂ではなく、緩やかに下り続ける。相変わらず楽しい道だ。
ひたすら走っているうちに少しずつ民家や田畑が増え、花山の道の駅に着く。クールダウンを兼ねてなんとなく寄ってはみたが、特に買いたくなるようなものはなかった。
出走してしばらくすると花山ダム管理事務所の看板が現れたので、またしても寄る。そしてダムカードをゲットする。
しばし放水をボケーと眺めていると、ポツポツと雨が降り出す。慌てて出走する。山間部だけであることを祈りつつ山下りをしているうちに雨は止んだ。そして山道は終わり、田んぼの中を走る道に変貌する。
さて、そろそろ帰るか
いよいよ本格的に帰り支度をする時が来てしまった。一迫の市街地に来たところで給油し、最後のスーパーに寄る。
惣菜や冷凍海鮮類の品揃えがよく、価格も安い。魅力的なスーパーだ。色々買いたくなるがさすがに冷凍モノは諦め、適当に土産物を買う。三角油揚げが売り切れだったのは残念だが午後遅めの時間帯だったので仕方あるまい。
延長スクリーンに加え、久しぶりにBluetoothスピーカーやリモコンのスイッチを入れ、SpotifyのPlaylist選択等の高速走行準備を済ませる。買ったおにぎりを1つだけ食べ、珈琲を飲み、ガムを口に入れる。各種ケースの鍵やジャケットのジッパーなどを確認し、準備完了。
あとはナビの言う通りに長者原スマートICへ移動…という状況だったが、宮城県の農村地帯を走り足りていないので、長者原はスルーして古川まで田舎道を淡々と走る。ここまで来ると、自分のルーツがある瀬峰町まではさほど遠くないが、何の連絡もしていないし、さすがに今から行ったら帰りが凄い時間になりそうなので寄らずに帰る。
田舎なのでインターチェンジ1つ分ぐらいはあっという間だ。すぐに古川ICに着いてしまう。まだ微妙に走り足りないが、きりがないので諦めて高速に乗る。乗って早々、鶴巣PAで一休み。ゴミを捨てたり、売店を覗いたりする。
帰路は東北道ではなく常磐道を使う。さほど大きな意味は無いが、少しだけ距離が短い、交通量が少なくて走りやすい、セイコーマートに寄れる、といったところが理由か。途中で二車線区間があるのが難点だが、その追い越しやらなんやらで目が醒めるとポジティブに捉えることにする。
しかし、鶴巣PAを出てから仙台北部道路に入ると、次の鳥の海PAまで50kmも停まる場所がないのは問題だ。走行中にSpotifyのPlaylistが終わってしまったのか、Bluetoothリモコンを押しても無反応になってしまったのだが、それを回復させる手段がない。まだ眠気が襲ってきていないタイミングだったので助かったが、場合によっては致命的なことになる。
そしてようやく鳥の海PAに着く。去年とだいたい同じぐらいの時間に寄ったので、帰宅時間も似たようなものだろう。早々に出走したが、なんだか停まりたい気分だったのですぐ次の南相馬鹿島SAでまた停まる。適当にウロウロしただけで済ませ、その後はいわき市の湯ノ岳PAに停まり、これまた去年と同じく日立南太田ICで降りて給油し、またしてもセイコーマートに寄る。セイコーマートオリジナル商品を大量に買い込むところまで同じだ。
再び常磐道に乗り、谷和原ICで降りて山岡家守谷店で晩飯にする。探すが面倒になってしまい山岡家にするのもまた恒例になってしまっている。
その後は守谷SAでトイレ休憩し、いつものように大井PAのワンストップで、逗子ICまで首都高速と横横をひた走る。東北に1週間ぐらい居ると、東京の灯りを見て「帰ってきたなー感」みたいなのがあるが、たかだか3日程度だと、あまりそのような感覚はない。
逗子ICまで走り終え、GSに寄って給油してから帰宅した。去年は最後の最後にオドメーター故障に気づいてゲンナリしたが、今年は最後までノートラブルだった。それなりに整備をちゃんとやっていたとは言え、これは凄いことだ。
総括
昨年より200kmほど距離を伸ばして2,000km弱のツーリングとなった。そのうち1,200kmぐらいは単なる高速移動なので、それを除くと実質800kmぐらいか。とはいえ、自宅から800km圏内には男鹿半島も八幡平も無いわけで、これらを走るなら、この1,200kmの高速移動と、所要時間約14時間は不可欠なものだ。それだけのことを費やす価値はあるし、それを突っ込めるのは今の生活パターンだと1年にこの時期しかない。
こうして昨年行けなかった八幡平と男鹿半島に行くことができ、かなり満足感の高いツーリングになった。特に八幡平は時間に追われることもなく行ったり来たりできたし、男鹿半島も過去に比べると比較的余裕があった。その皺寄せが十和田湖・八甲田に行ってしまったが、元々無理目な行程なので致し方ない。
身体的にはさほど疲れはなく、肩や腰にも全然きていない。2月・3月頃からちょろちょろ走っていたこと、一眼レフカメラを入れたウェストバッグを背負わなかったことが関係しているだろう。全体的にはまだまだイケる感はあったが、何故か両膝だけは過去に経験がないほど痛くなった。高速道路走行で長時間硬直していたことが遠因だと思うが、それにしても酷い。帰宅後2週間を経ていまコレを書いているが、未だに治りきっていない。残念だが加齢と運動不足の2点を理由として挙げざるを得ない。
ルート選択にあたって今回導入した「絶景と快走路7東北」は非常に役に立った。ツーリングマップルは農道を採り上げないし、バイク雑誌のツーリングロード特集は毎年同じ道ばかり何度も載せるだけ。もう大抵の道は走ったという人には、この「絶景と快走路シリーズ」は大いにお勧めできる。
今回初めて長距離で使ったワークマンの安全靴の使い心地は良好だった。濡れた路面で滑ることも無かったし、小安峡の階段登り降りでも全く気にならなかった。そして、履き始めはたまに「スカッ」とシフトレバーを空振りしていたが、今回はそんなことはまったく無かった。慣れの問題と言えよう。
服装はほぼ半袖Tシャツ・長袖シャツ・スリーシーズンジャケットで、激しく暑い時に長袖シャツを脱ぐ、寒くなったらインナージャケットを着る、といった程度で対処できた。フリースやヒートテックは不要だった。グローブもメッシュとスリーシーズンを行ったり来たりしていた。雨は結局降らずに雨具を使うことは無かった。
撮影用のカメラはGRIIIをメイン、ここぞと言う時専用でK-1 MarkII + D FA 24-70/2.8を使った。GRIIIは首下げ、K-1 MarkIIは極力クッションを効かせたカメラバッグに収めてトップケースに入れっぱなしにした。旅程的に、撮影に没頭してしまうことによる時間のロスを避けたかったので、K-1 MarkIIを使う時間を減らしたかったという消極的理由と、昨年バッグの重みで肩が痛くなったことによる反省を踏まえてのことだ。どちらも一定の効果を出しているが、その「ここぞと言う時」の頻度をもう少し増やしてもよかったとは思う。
そのためトップケースの1/3ぐらいをカメラバッグが占拠していたが、積載能力の点ではなんら問題なく、最後のセイコーマートであれだけ買い込んでもテキトーに突っ込むだけだった。まだ酒3本ぐらいはイケただろう。
360度カメラのInsta360 ONE RSは、なんだかんだで結局最後までほとんど録画しっぱなしだった。大館から能代までのR7移動のような、まるで面白くもない区間で撮らなかった程度だ。おかげで360度映像素材は大量に確保できたが、困ったことに安物のレンズカバーの傷だとか、レンズカバーにこびりついたゴミの写り込みが酷く、他人に見せるものとしてはあまり使い物にならない。自分の振り返り用として使うしかないが、元々そのつもりだったので問題にはならない。
これだけ走ったのでそれなりの費用になった。ETCツーリングプランを駆使したとは言え、高速料金が高くなるのは避けられない。うち4,000円が首都高と横横だと思うとウンザリするが、この区間は金で時間を買うしかない。ガソリン代は致し方ないのだが、こうも高いと政治に文句を言いたくなる。それ以外は、まあこんなもんだろう。連休直前に予定を変えた割には宿代は安く済んだ。
こうして1年ぶりのみちのくひとり旅は完了した。昨年とは違って思い残したことはないので、来年どうするかは未定。下北半島に行きたい気持ちも無くはないが、今年以上に高速移動ばかりになってしまう。三泊四日の旅程を確保できる時が来るまで先延ばしした方が良いかもしれない。
後日談
帰宅翌日、早速洗車した。雪解け水が流れまくっている八幡平の時点で既にこうなっていた。そして東北というか地方名物、大量の虫の死骸を擦り落とした。
トップケースを使う機会はしばらく無さそうなので、テールカウルはトップケース無し用に戻した。
エンジンオイルが減っただろうから交換しよう…と思って見てみると、思いのほか減っていなかった。急に勿体無い根性が顔を出し、交換しないことにした。日帰りツーリング2回ぐらいは余裕でいけるだろう。色は汚いが、見なかったことにする。