北海道2010 Day1 茅ヶ崎~新潟~小樽

俺にとって北海道ツーリングは3回目になるが、今回はちょっとばかり特別である。まずバイクがセローであるということ。そして、初のソロ北海道であるということだ。

バイクが今までのTDM850、K1100RSからセローになり、林道も含めて行動可能な範囲が広がった(但し後航続距離は減るが、これは仕方がない)。これは大きい。今まで敬遠してきたところに行ける。そもそも、去年来た時に、気になったところ(そして、諦めたところ)が軒並みダートの先だったので、そこに行けるようにセローを買ったのだ。

そして、今回はソロだ。ソロというのは、良くも悪くも自由で、自己責任である。何処に行こうが、全く走らないでススキノに入り浸ろうが俺の勝手だ。反面、感動の共有とかそういう面では著しく劣り、困った時に助けてくれる人も居ない。

まあ、それはどっちもどっちだ。とりあえず今回はソロであることを楽しみたい。

今回の北海道ツーリングは、行きは新潟~小樽、帰りは苫小牧~仙台のフェリーである。初めて北海道に行った2006年と同じ組み合わせだが、今回は帰りの苫小牧~大洗航路が既にキャンセル待ちだったので、仙台航路しか選択肢がなかったのだ。

新潟出航は10:30で、その2時間前に乗船手続きをするように指示がある。とはいえ、実態は1時間前でも全く問題無い。一応目標は9:00に設定して、出発時間は2:30にする。K1100RSだったら3:00でも余裕な気がするが、セローだと2:30でもきつそうだ。そのため、出発前の仮眠でどれだけきちんと寝られるかが重要になる。

ロングツーリング前日は、未だに緊張で寝られないことが多いため、睡眠導入剤を飲んで11時ごろに床に入ったのだが、やはりまともには寝られなかった。ロングツーリング出発前夜恒例の、古久家の味噌ラーメンが多すぎてもたれているのかもしれないが。寝たのかどうかはっきりしないまま3時間が経ち、目覚ましに起こされた。しょうがない、もう行くしかない。

ボケーとした状態のまま、朝飯だかなんだか判らない飯を食う。自宅での最後の朝飯は、先日御殿場で買ってきたソフト麺と、レトルトの安っぽいカルボナーラソース。とりあえず腹は膨れた。眠気どめにカフェイン飲料と錠剤を飲む。何となくだるいのでシャワーを浴び、着替えをする。今回は林道走行をする予定のためニーシンガードを持って行くのだが、積む場所が無いので新潟までの移動でも装着する。まあ別に悪いことではあるまい。本来はオンロードでも膝カップぐらいは着けるべきなのだ。

部屋の隅に集めてあった荷物をセローに積む。概ね前夜のうちに終えておいたので、あまり手間はかからない。セローはやはり積載能力が低いので、極力最低限の荷物に留めた。それでも、一眼レフを入れたウエストバックをホムセン箱に入れる余裕を確保すると一杯一杯だ。

先日購入したnavicoの目的値を新潟港に設定する。同じく先日購入したMotion X GPSを起動する。出走時のオドメーターをノートに記録する。iPhoneとメットをオーディオケーブルで繋ぐ。ETCにカードを挿れ、シガーソケットを接続する。以前より多少増えた出発前の儀式をこなしているうちに緊張が高まる。予定していた2:30に遅れること15分。セローに跨り、気合をいれる。エンジンをかけて、隣人の安眠の邪魔にならないようにそそくさと出発する。

navicoはどうやら第三京浜経由で関越に乗せたいようだが、その指示は一切無視し、いつもの裏道を通って八王子に向かう。違うルートをとるたびにnavicoはけなげにリルートするが、俺の意図を察知したかのように、第三京浜経由をやめて厚木から東名経由にする。さらに無視すると、今度は川越経由になった。しつこく無視して八王子ICから中央道に乗る。さすがにこの先は俺もnavicoも同じルートだ。navicoのリルートは意外とまともだ。諦めが早いのは重要なことだ。

その先はひたすら走るだけになる。八王子JCTあたりで一瞬エンジンが吹けなくなったかと思ったが、何のことはない、単に勾配がありすぎて力不足なだけだった。高速道路において、セローは正直言って非力だ。いつものKのペースに比べると、同じ時間をかけても3/4ぐらいしか進まないような気がする。追い越し車線を走る機会が殆どない。その遅れた分は、休み時間を減らして取り返すしかない。幸い、リヤシートの荷物が多く、寄りかかった状態で走れるため、ノンカウルの割には比較的疲労は少ない。しかし、姿勢の問題なのか、風圧が強いからなのだろうか。膝と腿あたりの硬直感が激しく、降車時に足をつくのが大変だ。

高坂SA、赤城高原SAと小休憩。普段だったらSAの売り場をウロウロして無料の茶を飲むのだが、今回は単に止まって一休みするだけ。

赤城高原SAで給油。標高が高いため少々寒くなったのでインナーを着込む。出走後、navicoの現在地表示がおかしくなる。予定外の下牧PAで停止して修正を図る。どうやらiPhoneがGPSを捕捉していないようだ。アプリを終了させたりしても改善せず、iPhoneを再起動したところ正常になった。やはりこういうところは専用機に劣る。

2006年の時は、仕事が多忙で疲れきって慢性的寝不足だったこともあり、このあたりで激しい睡魔に襲われ、谷川岳PAで地面にしゃがみこんでの仮眠を強いられた。それに比べると、今回は特に疲労もたまっていないし、各種カフェインも効いているのか、多少眠気を感じる程度だ。ガムだけで充分対応できる。実は仮眠で結構寝られていたのかもしれない。

その後は越後川口SA、黒崎PAで休憩する。新潟の水田地帯はひたすら鮮やかな黄緑で美しいのだが、単調なので次第に飽きてくる。腹が減ったので、黒崎で朝飯にする。とは言っても既に本日二食目だ。頼んだ天ぷらそばは、ごく普通の冷凍そばだった。新潟なんだから、へぎそばぐらい出てくればいいのに。

新潟亀田ICで高速を降りる。とにかく長かった。しかし、八王子からここまで乗っても1000円。ここから新潟港まではそう遠くない。あとはnavicoの指示に従い…といいたいところだが、過去に通った道だし、看板も散々出るので困ることはない。

市街地に入ると急激に暑くなってきた。インナーを脱ぎたくなる。新幹線の高架下をくぐろうとするとMaxが走ってきた。それなりに混んでいる市街地を抜け、スタンドでの給油、セブンイレブンでの晩飯買い出しを済ませ、ようやくフェリーターミナルに到着した。5年ぶりの新潟港だ。そういえばこんな場所だった。時間は9:20。予定より20分遅れ。案の定、8:30に来なくても何の問題も無い。

乗船手続きを済ませて駐車場に戻り、写真を撮ったりしていると、乗船指示が出た。前のバイクに続いてフェリーに乗り込む。取り回しが面倒な大型バイクだと、フェリーの乗り降りはそれなりに憂鬱な行為なのだが、セローだと楽勝だ。バイクを壁に向けて停める。どういうわけか、荷物を全て降ろすように指示が出る。隣のアメリカンのニイチャンは非常に苦労していた。何も考えずにただ上から重ねてくくりつけるからそうなるのだ。

船内用にパッキングしてあった荷物を持ち、客室に向かう。俺の二等寝台は上段だった。周りは皆ソロの人のようだ。ブーツとGパン、ニーシンガードを脱ぎ、ジャージとサンダルに着替えて船内を探検しているうちに、もう出航時刻になっていた。

それなりに汗をかいたので、さっさと風呂に入る。風呂はすいていた。窓の外を景色が流れていく。いい風呂だ。風呂上がりは勿論ビールなのだが、困ったことに座る場所がない。暫くボケーとしているうちに空いたので場所を確保して売店に行く。当然サッポロクラシック、のつもりだったのだが、エチゴビールなるものが売っていたのでこれにしてしまう。サッポロクラシックなんて北海道に行けばいくらでも飲めるのだ。エチゴビールは今しか飲めない。そのエチゴビールは、サッパリした味でなかなかであった。

酒が入ると、急激に眠気を感じるようになる。次第にSoftBankの電波も入らなくなり、やることがなくなる。自分の寝台に戻り、荷物を整理して仮眠する。レストランだのナントカショーだのといった案内放送が頻繁に入るため、そのたびに起こされる。

夕方になって再び散歩に出る。デッキに出てみると、前後左右ひたすら海で、それ以外何もない。海も天気も穏やかで、雨の気配は全く感じられないが、北海道はまだまだ先だ。どんな天候が待ち構えているかわかったものではない。電波も一切入らないので、天気予報も見られない。全ては再び電波を掴む小樽入港直前に判るのだ。

あとは淡々と時間が過ぎるのを待つのみ。晩飯にカップラーメンを食い、新潟行きフェリーとの行き違いを鑑賞し、ビール(今度こそサッポロクラシック)と新潟の日本酒を呑みながら地図を眺て妄想に耽る。

上陸後のルートは2パターンある。今回の行き先は道北と道東。先に道北に行くか、道東に行くか。それによって明日の予定も決まる。どちらになるかは、明日の天気、それと週間予報次第だ。一応どちらのパターンも検討はしてあるが、雨が降るとその途端に全て破綻するので、細かく考えてもあまり意味はない。なるようにしかならない。

ちなみに、このクソ長い文章は、フェリー先端のデッキで、iPhoneにBluetooth接続したELECOMの小型キーボードで書いている。iOS4になって便利になった。さすがにフリック入力でこれは書けない。10年以上前、PalmPilotとGoTypeという専用キーボードで同じようなことをしていたことを思い出した。あの当時のPalmがいかに先進的というか、面白いことをやっていたかがよくわかる。荷物は厳選すると言いながらもこんなものを持って来てしまったのは、やはりソロだからだろう。連れがいたら、こんな長文を書いている時間は無い。

明日の小樽到着は4:30。その一時間前に放送で起こされる筈だ。明日は長い一日になる。そろそろ風呂に入って眠りにつくとしよう。