この店は、元々は平和学園の近くにあったのだが、何がどうしたのか、今は茅ヶ崎駅南口からすぐそばの所にある。駅前に移転するなんて、ずいぶん出世したもんだ。駅前だから、車だと行きづらいような気がしてしまうのだが、近くのコインパーキングのタダ券を貰えるので、実はそれほど困らない。問題は、そのタダ券が20分間用のものであることなんだけど。せめて30分にしてくれよ。
俺がこの店を知ったのは大学時代の話なので、もう10年以上前の話になる。バイト先の先輩に連れられて何度か行った。先輩に勧められるままにつけ麺を食っていたような記憶がある。普通のラーメンも食ったような気がするのだが、どんな味だったかはもう全然思い出せない。
ちなみに、以前金太郎ラーメンがあった場所は、今は「一世」というラーメン屋になっている。何故か気が進まなくて入ったことが無い。「一世」の前は「大亀」という店だったのだが、やっぱり入る気がしないうちにつぶれてしまった。
話がそれた。
この店は、基本的には「一昔前のラーメン屋」である。店名からして古くさい。メニュー数がやけに多いとか、店員がオッチャンとオバチャンだけだとか、隅っこでテレビが流れているとか、一番安いのは500円だとか、とにかく少々古くさい。別にそれが悪いと言いたいんじゃない。それどころか、どっちかというと古くさい方が好みだ。
ちょっとだけ今風にしているところが、スープに「こってり」があったり、チャーシューがロースとバラ肉を選べたりするあたりか。以前はこんなバリエーションはなくて、醤油に味噌、あとはつけ麺とか冷やしラーメン(冷し中華ではない)なんてものしか無かったような気がするんだけど。
その色々なメニューの中から「金太郎ラーメン(500円)」を選んだ。これが少々紛らわしい。大抵の場合、店名を冠したラーメンっていうのは、その店の最も一般的なラーメンであることが多いのだが、ここはちょっと違うみたいだ。
「金太郎ラーメン」は「こってりスープで、チャーシューがバラ肉」ということになっていて、単なる「ラーメン」というのは「こってりじゃない普通のスープで、チャーシューは肩ロース」なんだそうだ。
とは言うものの、チャーシューは希望を言えば変えてくれるので、実質的にはスープの違いでしかない。さらに言うと、チャーシューメンだのモヤシラーメンなんてのも、みんなスープを選べるので、結局「金太郎ラーメン」なんていうネーミング自体が無意味なのだ。こういう突っ込みどころ満載な古くささがたまらない。
ここのラーメンは、出てくるのもやけに早い。こういうところも少々古くさい。「こってり」のスープは、背油で無理矢理こってりさせたような感じで、家系のこってり感とは根本的に違っている。ベースのスープが豚骨じゃないんだから当たり前だ。ここのスープはおそらく魚貝系で、あえて言うなら会津ラーメンに似ている。麺は、どさん子ラーメンなんかで出てきそうな黄色い縮れ麺で、味にしろ食感にしろ、全て見かけから予想できる範囲内。これもまた古くささを感じさせるところだ。
この店は、普通のラーメンを頼んでも、チャーシューが三枚も載っている。エラい。バラ肉のチャーシューは、煮込みすぎた豚の角煮の如く柔らかく、個人的にはかなり好きなんだが、脂身がダメな人にはお勧めできない。肩ロースの方も、少なくとも平均点以上。
昨今の蘊蓄まみれなうざったいラーメンに疲れた時は、こういう古くさいラーメン屋で、どこか懐かしいラーメンを食うと、妙に落ち着く。これで500円なんだから、何のモンクがあろうか。