入田浜からの帰り、伊東辺りにある「吉田家」というラーメン屋に寄ることにした。駐車場に車を停めて、何となく建物を眺めていると「ラーメン 700円」の文字が目に入った。つい先日「めじろ」で700円払って大損こいたばかりである。もう700円はこりごりだ。店に入るものと思って待ち構えていた店員達の視線を避けるように、そそくさと駐車場から出てしまった。
こうして一度はラーメンを諦めたのだが、一旦食おうとしたものをそうそう簡単に諦められるわけもなく、ラーメン以外の晩飯を食う気は毛頭無かった。しかし、伊豆のラーメン屋事情なんて知るわけがなく、何処にも寄るところが無いままに車は進み、熱海、湯河原、真鶴と通過して西湘バイパスに乗ってしまった。空腹は酷くなる一方だが、だからと言ってコンビニで余計なものを買い食いしてしまうとラーメンが美味くなくなる。そしてさらに腹が減る。まさに悪循環だ。
西湘バイパスを降りて、平塚辺りまでくれば多少は思い当たる店もあるのだが、困ったことに既に夜10時を過ぎていた。10時以降でもやっているラーメン屋は極めて限られている。最後の手段としては藤沢の「街道や」もあるし、辻堂の「樹」もあるのだが、やはり一度家系に入ろうとした手前、家系を食わねば落ち着かないのだ。そこで目指すは藤沢の松壱家。
店に着いたのは既に11時過ぎだったが、こんな時間だというのに行列が出来ている。もはや晩飯というより「飲んだ後のラーメン」の時間だろう。行列は嫌いなのだが、もはや他の店を探すほどの気力も無いく、面倒なのでここにした。
とりあえず店に入り、ラーメン(600円)の食券を買って待つ。なかなか席が空かない。目の前に居る男が実に気色悪い風貌で、しかも食うのが遅く、見ていてムシャクシャしてくる。イライラが爆発寸前のところで別の席が続けざまに空き、ようやく座ることが出来た。
店員は若いヤツばっかりなのだが、元気もあるし、やることはきちんとやっている。既に注文は通っていたので、あまり待つことも無くラーメンは出てきた。ここは家系は家系でも吉村家系ではなく、マイルド系(と俺は勝手に呼んでいる)の白濁スープである。どちらかというとアッサリした味で、それほど特徴は無いが、悪くは無い。同じくマイルド系の湘南家、辻吉家あたりがかなりダメになっているのに比べると、ここはまあまあがんばっているんじゃないかと思う。麺は程々に固くて丁度良い。具にはそれほど特徴は無い。
とか何とかクドクド書いたが、この日は疲れと空腹が酷かったので、何を食っても美味かったに違いない。
我々が食っている間に、いかにも新人歓迎会帰りといった雰囲気の、スーツが似合わない男八人衆が入ってきた。カウンターしかないラーメン屋に団体でこないで欲しいもんだ。仕方がないのでさっさと店を出た。