ラブ? ビジネス?

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仕事と私とどっちが大事なの? なんていう話では勿論ない。

久しぶりに二泊三日で兵庫沿岸部に出張にきた。この客先に出張する場合、大抵は姫路に泊まるのだが、どういうわけか姫路のホテルがどこも満室になっている。明石も同様。しょうがないので神戸方面で探してみると、それなりに沢山出てくる。安い順でソートしてみると、新開地にあるウインベルマジックという、なんだか妙な名前のホテルが一番上に出てきた。

とてもビジネスホテルらしからぬ名前のそのホテル、ダブルルームのシングルユースで定価17,000円のところを3,980円なんていう、どう見てもまともな商売をしているとは思えない値付けをしている。これは怪しい。部屋の写真を見てみると、狭い部屋にベッドと机を詰め込んだような、ごく一般的なビジネスホテルとは正反対の、無駄に広い空間に白い巨大ベッドがデーンと構える、不思議な空間が現れた。ますます怪しい。そこで口コミを見てみると「どう見てもラブホテルじゃないか、ふざけるな」的なものもあれば「この価格でこの設備なら文句は無いどころか素晴らしい」的なものまで、とにかく賛否両論。とんでもなく怪しい。

姫路のホテルが全て満室だったのも運命だろう。このわけがわからんホテルを予約してしまった。

仕事を終え、電車に乗って新開地に着く。地下からの出口を出ると、すぐそばにそのホテルはあった。普通のホテルなら、それなりに大きいガラス張りのエントランスが待ち受けているところだが、このホテルがそんな当たり前の受け入れ方をする筈が無い。人間用ではなくクルマ用のエントランスがデーンとあり、人間用のものはその裏にこっそりと存在する。手でボタンを押さないと開かない自動ドアを開けると、磨りガラスの向こう側には、まるで結婚式場のようなわざとらしい階段が待ち受けていた。

階段を上がると、グランドピアノとウェディングドレスが飾ってある。その奥には、わけのわからない鞄などがショーケースに飾ってあり、その奥にフロントがある。このフロントもどう見てもビジネスホテルのそれではないが、だからといってラブホテルのフロントとしても微妙だ。そもそもフロントが無いところの方が多いのではないだろうか。フロントのオバチャンに、予約したmsotaです、なんて言うと、ごく普通に鍵を出してきて、二泊分の代金を請求される。名前や住所の記入なんていう野暮なものは勿論無い。

IMG_4222 なんだこれは

エレベータを降りると、そこはちょっと前に見た階段から、そのまま続いているような廊下であった。少なくともビジネスホテルのそれではない。

IMG_4221 期待感が高まる

部屋の鍵を開けるとスリッパが2足置いてあり、もう一つ別のドアが待っている。この無駄なドアこそがまさにラブホテルの証であり、ますます期待が高まる。そしてそのドアを開けると、いよいよ「元ラブホテル」がその正体を現した。

IMG_4217 仕事マインドがまるで高まらない部屋

まず目に入るのは、ピンクのソファとガラスのテーブル。そして巨大なベッド。枕が一つだけしかないことが、この部屋はビジネス用であると必死に主張してるようだ。ベッドに座ると、目の前の壁はピンク色。テレビを付けると、いきなり流れてくるアダルトビデオ。風呂/トイレが別なのは当たり前で、風呂のドアは巨大な一枚ガラス。広いバスタブの前にはテレビ。クローゼットと思われた扉の裏で、500円で売っているスキン。そしてとどめは、全くもって無意味な高機能照明スイッチ。

これらの装備からも、この部屋はラブホテルの部屋としても、ビジネス(?)ホテルの部屋としても使われていることがわかる。実際、いわゆるラブホテルとしても営業しており、それっぽい客にも遭遇する。こっちはどうでもいいが、向こうはちょっと嫌かもしれない。

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そして今俺は、恐ろしく快適なテレビ付きの風呂から上がって、ビールを飲みながらこの駄文を書いている。いやーこれは素晴らしいホテルだ。この部屋に唯一足りないのは机と椅子のセットなのだが、このホテルにそんなものを求めてはいけない。新幹線車内とホテルでアプリ開発に没頭するために持ってきたMacBook Proは、机上ではなく膝の上に乗り、単なるブログマシーンと化してしまった。それが唯一の誤算だったが、しつこいようだが快適なビジネス空間をこのホテルに求めてはいけない。むしろ3980円で過ごせる快適空間に合わせて、この2日間を楽しむべきだろう。

こうしてアプリ開発の進捗はさらに遅れ、やらなきゃいけない筈の本業の後始末は、さらにやる気のしないものになってしまったのであった。