K1100RS エアインテーク修理

暑かった夏も少しずつ終わりが近づき、徐々にバイクな気分になってきた。そこで4月に壊れてから半年近く放置していたエアインテークを遂に直すことにした。

とりあえず部品が無いと始まらないので、他の部品とあわせて注文した。割れているであろうインシュレーター(要するにゴムパイプ)だけを頼めばよさそうなものなのだが、どこかのサイトで「上下のクランプも替える」と書いてあったのを見た記憶があったので、これも同時に頼む。

部品が届いたので早速交換作業に入る。

手書きで”TOP”

ネットで手に入るPDFマニュアルによると、カウルやタンクは当然として、燃料ホース、インジェクションを外した後にこのインシュレーターを外すらしい。

そこで各種ホースを外し、インジェクションを力任せに抜いたところで、どうしていいかわからない事態になる。

  • 何だこの変なクランプは?
  • どこかにネジがあるんじゃないのか?
  • しかしそんなものはどこにもない。これはどうやって外すんだ?
  • 外すというより壊すしか無いんじゃないのか?
  • ってことは、このクランプは使い捨てなのか?

困った時のネット頼み。調べたところ、いつも修理ではお世話になるSさんのサイトに行き当たる。このクランプはカシメ式なので使い捨てらしい。しかも、買わなきゃいけないクランプはこのカシメ式クランプ(8個必要)だったらしい。俺が買った部品はカシメ式4つとネジ式4つなのだが、ネジ式は買う意味が無かったようだ。

そうか、前に見た「どこかのサイト」がSさんのサイトだったか。作業をはじめる前、否、部品を頼む前に見るべきだった。ちゃんと調べずに「どこかのサイトで見た」で済ますからこういうことになるのだ。

さらに言えば、インジェクションは外さない方が良かったらしい。インジェクションを外したらOリングも替えるべきだと書いてある。トホホ、俺はもうとっくに外してしまっているのでどうにもならん。PDFのマニュアルにはインジェクションを外す/装着するしか書いていないので、再利用可能だと信じることにする。

しかも、だ。このカシメ式クランプをカシメるためには専用工具が必要らしい。そんなことにも気付かずに作業していたのか俺は。

さて困った。部品もなければ工具もない。何もせずに元に戻すか、もう一度部品を頼んで出直すか、現状から無理矢理やってみるか、行動の選択を迫られる。しかし、どうせ壊れているのだから戻してもしょうがない。ここまでやったら行けるところまで行ってしまえ。そう思った俺は、セロー…も壊れているのでピアッツァに乗って平塚のアストロプロダクツに向かい、カシメ工具を買ってきた。クルマのドライブシャフトブーツ用と書いてあるが、形状からして問題無さそうだ。

こうなればあとはもう野となれ山となれである。インシュレーター上側のカシメ式クランプを無理矢理外し、下側のネジ式クランプのネジを緩める。これを4気筒分実施する。本来なら、インシュレーターを外すためにはスロットルボディを外すのだが、スロットルボディとエアクリーナーを繋ぐ蛇腹ホースを固定しているのがまたカシメ式クランプであり、これを外してしまうと部品が不足してしまう(そのために8個必要)。そこでスロットルボディを外さずに無理矢理インシュレーターを外してみる。少々力任せになるが、それほど無理もなく4つ全て外れる。インシュレータを見てみると、ヒビ程度ではあるが、割れているといえば割れている。

下側だけ抜いた状態

外した状態

外したモノ

この方法は、本来はよろしくないやり方に違いない。どうしても力任せに抜くことになり、他の場所(エアクリーナーボックスから出ている蛇腹)に負荷がかかることになる。この蛇腹部品はヤマハよろしくエアクリーナーボックスAssyでしか売ってくれなくて、しかも2万円を超える価格のため、どちらを大事にしなければいけないかと言えば勿論蛇腹。本来はきちんとクランプを用意しておくべきだろう。

さて、あとは新品のインシュレーターに新品クランプを仮留めし、実際にインテークに入れてクランプを本留めするだけである。

ここまでは良かった

しかしこれが大問題。せっかくアストロプロダクツで買ってきたカシメ工具では、このカシメクランプがうまくカシメられないのだ。クランプをカシメるためには、挟むための場所に工具の爪がきっちりハマってくれないといけないのだが、爪が厚すぎてうまくハマらない。予備がないクランプがグニャグニャになってしまう。これはまずい。でももう後には引けない。

別の工具屋に工具を買いに行くか、手持ちの何らかの工具でどうにかするか、少々悩んだ結果、買ってきたばかりの工具の爪を鉄ヤスリで削って爪を薄くして、強引にカシメることにした。工具は目的を達成するためにあるのだ。俺の目的はクランプをカシメてエンジンを直すことであり、工具を愛でることではない。

遠慮無く爪を削った結果、少々不恰好ではあるが、無事にクランプをカシメることに成功した。カシメることばかり気にしていたので、スロットルボディが本来の位置より1~2mm程度浮いてしまっていることに後で気づいたが、今更どうしようもないので見なかったことにする。

辛うじて締まっている

さっさとエンジンをかけて確認したい衝動を抑えながら、外した部品群を装着する。ネットで調べたところ、インジェクションのOリングにはエンジンオイルを塗るという話があったのでそれに従う。新品Oリングじゃないけど今更どうしようもない。燃料ホースと燃料タンクを接続し、アクセルワイヤーとチョークワイヤーを装着する。そして燃料ポンプの配線も接続して準備完了。キーを捻って少しだけ待ってセルを回すと、エンジンは無事にかかった。アイドリングも、アクセルを捻った時のフィーリングともに問題ない。

早速試運転したいところだったが、サイドとアンダーのカウルは台風で倒されて傷ついたために修理中だった。うーん、どうしよう。とりあえず疲れたので一休みする。

しかしやはり満足しきれず、夜になってカウルレスのまま試運転に出かけた。エンジンのフィーリングは問題無さそうだ。以前発生していたズボボボという症状はなく、普通に乗れる。気分良くR134を走り、そのまま西湘バイパスに乗ろうとしたところで、突如ズボボボが再発。しかも全く吹けずにパワー不足なため、4月の発症時より酷い(4月は3000回転以下はダメだがそれ以上は普通に走れた)。

西湘バイパスには乗らずに一般道をぐるっと回ってR134のファミリーマートに停める。だいたい察しがついていたので、センタースタンドを立ててプラグコードのカバーを外すと、案の定プラグコードが抜けていた。しかも1本だけじゃなくて2本。ズボボボとかいう不整脈で想定外の振動でも発生したのだろうか。

もう外れないようにプラグコードを押しこみ、カバーを装着して再び試運転する。その後は西湘バイパスでも全く問題なく走ることが出来た。

こうして結果的には走れるようになったのだが、事前の勉強不足のため正しくない手順で部品を脱着せざるを得なかったのは反省しなければならない。また、やってみて判ったことではあるが、素人が手を出すには少々難しめな分野の修理だった(やっていることは大したことないけど、クランプをきちんと締めることが難しい)。だからといって敬遠するほどのものでもないので、仮に今後同じ事態に遭遇したら、今度は予備のクランプをたくさん用意しておいて、精神的余裕をもってやりたいところだ。

作業時の走行距離:約52,000km