低速ズボボボ病の意外な原因

年末の試運転で発覚した低速ズボボボ病の原因となったカシメ式クランプが入荷したとの連絡が入った。早速部品を取りに行って修理(というか俺がやらかした作業ミスを直しているだけ)を始めた。

念のため10個買った(多すぎ!)

戦闘準備完了

このカシメ式クランプは1個240円。馬鹿高いというほどではないが、一旦装着すると再利用不可という、このエコな時代にちょっと残念な部品だ。そうそう交換する部品ではないから仕方がないのかもしれないが、両面テープじゃあるまいし、こういう部品は再利用可能なものを使うように設計してほしい。実際、反対側のクランプはネジ式なんだし、どうして片方だけカシメ式なのか理解できない。

マニュアルの手順に従うのならスロットルボディの上下あわせて8個交換しなければならないが、少々無理矢理ながらも下側だけを交換可能であることは以前経験済みだ。しかも今回明らかにダメなのは4番だけなので、その1箇所だけを交換できるように、1番から3番までは下側のネジ式側を抜き、4番だけはカシメ式側を抜いて、クランプを交換するように試みる。こうすればクランプを使い捨てなくて済む。

失敗しないように慎重にスロットルボディを持ち上げるのだが、これがかなり固い。全然抜けないので少しずつ力任せになり、やっと抜けたと思ったら、予定外の3番までもカシメ式側が抜けてしまった。1番と2番は思惑通りいったのだが。

思惑が外れた状態

3番と4番に新品のカシメ式クランプを装着し、スロットルボディを圧入する。あとはカシメ式クランプを締めるだけなのだが、ここでミスってしまっては元も子もない。失敗しないように、前回よりもレンチの先っぽをさらに薄くヤスって最善を期す。レンチをカシメ式クランプに思いっきり押し付けてグラつかないようにしながら慎重に締める。ヤスったことが功を奏したのか、前回よりも明らかに上手く締められた。手でかなり強引に捻ったりしてみたがビクともしないので、今度は大丈夫だろう。

見た目にも締まったっぽい

ここでエンジンをかけてみると、前回まるでダメだった低速域の回転はかなりまともになった。やはりこれが原因だったか。しかし、残念ながら完調と言える状態ではなく、3秒に1回ぐらいの割合で回転が一瞬上昇する。うーん、何だこりゃ?

とりあえずこの状態で同調を取ってみる。前回作業時は二次エアを吸っている状態だったので、やはり若干のズレがある。これを調整しても、不気味な回転上昇は直らない。原因がサッパリ判らないが、とりあえずこのまま試運転に出発する。

意味があるのかどうか…

すると、前回よりはマシではあるものの、やはり低回転域は不安な状態だった。この状態ではとても2速で交差点は曲がれない。また、1500回転ぐらいでアクセルを固定していると妙な不整脈があるし、マフラーからパンという音がする時もある。

とりあえず帰宅して原因を考えてみる。東北ツーリング以降にやった作業といえば、プラグコード交換、プラグ交換、同調、クランプ交換だ。オイル交換もやったが、これはどう考えても関係ない。プラグコードとプラグは新品なので、ここに問題があることも考えづらい。クランプもついさっきやったばかりだし、念のため再度パーツクリーナー攻撃をしてみたが問題無かったので、これも違うだろう。となると、素人が貧乏工具で実施した同調作業を疑うしかないのだが、いくらバランスが多少ズレていたって、ここまで調子が悪くなるものなのだろうか???

同調に関して考えられることとしては、同調を取ったとはいえ「4気筒の数値を揃えた」だけで、その数値については気にしていなかったことと、調整をしたのがアイドリング時と2000回転であったことぐらい。他にできることも無いので、とりあえずアイドリング時に同調を取る際のバキュームゲージの示す値を少し上げて(≒アイドリングを上げて)みることにした。

アイドリング時の同調を取り直して試運転をする。先ほどよりは少しマシにはなったが、低回転域で気を使わざるを得ない状況は変わらない。これではとても使い物にならない。

今度は、問題が出ている1500回転あたりで同調を取ってみる。あまり調整する余地もないのだが、回転が上がっているためか、負圧により金魚用ゴムホースが潰れてしまっており、これで正しい数値が出ているのかどうか怪しい。一縷の望みをかけ、ホームセンターに行ってエアツール用の硬いホースを買ってきて再度同調してみるが、残念ながらあまり変わらない。作業中に手が滑ってクランプの角で指を切ったのも無駄骨に終わった。もう同調に関してできることは殆ど無い。

黒い新型ホースも役に立たず

こうなると、作業を最初から見直してみるしかない。やれることとしては、替えたばかりのプラグコードをもとの純正品に戻したり、プラグの状態を確認するぐらいだ。全くもって気が進まないが、粗大ゴミに捨てる予定だった古いプラグコードを持ってきて、まだ真新しいULTRAプラグコードと取り替える。

気が滅入る作業

まず1番のコードを入れ替え、プラグも念のため抜いて確認する。ちょっとススがついている状態だが、まるでダメというほどでもない。そもそもこんな不完全燃焼みたいな状態ではあまり参考にならない。とりあえずワイヤーブラシで掃除して再装着する。そして今度は2番のプラグコードを交換し、プラグを確認する。こちらも焼け状態は1番とあまり変わらない・・・のだが、ん???

左端に注目

プラグギャップが明らかにおかしい。というか、ギャップが無い。どうしてこうなったのか判らないが、とにかくおかしい。今回は新品に交換したので、少なくとも新品としての基準値なんだろうと思い込み、何の確認もしないでそのまま装着してしまったので、いつこうなったのかは判らない。とにかくこの状態が異常であることは間違いないので、大学4年の時にGPz750Rのタペット調整をして以来の登場になるシックネスゲージを持ち出して、プラグギャップを3番と同じ状態にして装着し直した。そしてエンジンをかけてみると、先ほどまで発生していた「3秒毎に発生する回転の上昇」が完全におさまり、実にキレイにアイドリングしているではないか。

プラグコードハイブリッド状態で確認

間違いない、コレが原因だ。新品だからって油断していた俺が馬鹿だった。プラグのギャップがダメだとこういう症状になるのか。

原因がわかったので、プラグコードを再び全てULTRAに戻し、もう飽きるほどやった同調を取る。この状態でアクセルを開けると、ちょっと前とは段違いのスムースさで回り、そして1500回転あたりでの燻りもない。当たり前だが、パンパン言ったりもしない。

大きな期待感とともに試運転に出かける。まず自宅前の細い道から出る時の低速走行で、明確に違いが判る。K1100らしいトルク感とともに堂々と進む。その後の市道走行でも全くノーストレスで走れ、さらにR134でエンジンを回してみると、いかにもKらしいシルキーフィーリングでエンジンが回る。先ほどまでの1気筒欠けているような不整脈は微塵も無く、同調効果も相まって「ゴムを引っ張って戻したような」滑らかさで、且つ力強く加速していく。これだ、これこそ俺が求めていたKのエンジンだ!

時間はかかったが遂に直った。諦めてディーラーに持っていかずに粘って良かった。こんな原因でディーラーに持っていったら馬鹿にされるどころでは済まない。「これだから素人は・・・」って100回くらい言われそうだ。もっとたくさん乗りたかったが、もう暗くなってきたので、数キロ走ったところで試運転を終えた。

想定外のことに多く遭遇したが、とにかくエンジンは「これぞKだ」と言える状態になった。さて、あとはクラッシュバー装着に伴って取っ払ってしまったカウルをどうするかだ。