外装部品の全塗装は終わった。あとはこれを組み付けるだけなのだが、単純に外した部品を装着するわけではないので、案の定あれやこれやと引っかかる。
インナーカバーをぶった切る
K1100RSのアッパーカウルには、(こう呼ぶのが正しいのかどうか判らないが)俗にインナーカバーと呼ばれるものがあり、アッパーカウルとガソリンタンクの間にある数センチの隙間を埋めるような役割を担っている。
これがないと走れないわけではなく、むしろ何の関係もない部品である。ただ、このような外観だけにしか寄与しない部品は、二輪車界では高級車に相当するBMWらしい部品であり、これがないと急激に安っぽくなることは否めない。
したがってこの部品はあったほうが良いとは思うのだが、今回はミドルカウルを装着するのをやめてしまった関係で、インナーカバーが無駄に長くなってしまい、宙に浮いてブラブラしてしまう。
そこでどうするかと言うと・・・
100円で落札したK100RS用インナーカバーを現物合わせで切断してしまった。
このインナーカバー、100円なのに非常に程度が良く、K1100RSのものを切ったほうが良い気もしたのだが、サイドカバー形状が変わった関係で取り付け部分が若干変更があるため、部品自体が異なっている。そのため、当初の予定通り、100円のものを切ることにした。
ちなみにこの切断作業は思ったほど簡単ではなかった。このカバーは単なるプラスチックの成形部品ではなく、波板状の金属板を分厚いゴムで覆った、手の込んだものである。そのため非常に頑丈で、ズッシリと重い。
性能だけを考えれば、こんな部品を使う理由が全くわからないが、BMWなりの何らかのこだわりがあってこのような構造にしているのだろう。そのため金ノコで時間をかけて切断したのだが、ゴムが厚すぎる関係で金ノコが真っ直ぐに進まず、意図しない方向に切れてしまった。
そして実際に装着してみると、片方はちょっと長すぎ、もう片方は短すぎるという、実にだらしない結果になってしまった。安物の金ノコを使った俺が悪いのだが。
ラジエーターガードは無視
ミドルカウル除去に伴ってラジエーターガードも外した。何もないのも多少気になるので、K100RS用の部品をとりあえず100円で落札してある。これを分解して金網だけうまいこと使えないものか、と画策してみたが、当たり前の話だが少なくともポン付けは無理。
では加工すれば付くかというとそんなわけもなく、全く話が進まない。ステーなり何なりを自作するか特注して、既存のステーやボルト穴に噛ますようにしないと固定できなさそうだ。そんなことをやっている暇もないし、そこまでの価値も感じられない。
当然の結果として「無視する」ことになった。
とりあえずエンジンをかけたい
こうしてようやく本当に準備完了。遂に全塗装した部品の装着作業に入る。どれからやってもいいのだが、兎に角エンジンがかからないとお話にならないので、まずはガソリンタンクから始めることにした。
タンクを車体に載せ、外してあったホースと燃料ポンプハーネスを繋ぎ、給油口キャップを取り付ける。携行缶に入っていたガソリンをタンクに入れ、キーを捻る。当たり前だがポンプは動く。そして暫く待ってからセルを押すと、ガソリンが全くなかっただけに少々ブスブス言ってはいるが、普通にエンジンがかかった。まずは一安心だ。
カウル装着開始
残すは各種カウル類である。まずは既存のものを外さなければならない。過去にやったことがあるので、やり方が判らずに苦労するということは無いが、単純に時間がかかる。
まずは大物、アッパーカウルから始める。カウル付きバイクの外装脱着は、大概にしてこのアッパーカウルというものが最もメンドクサイ。K1100RSもその例に漏れないが、多くの部品は既に外してあるのでそれほど苦労はしない。
ライトのハーネスを抜き、各種インナーカバーを外し、カウルを留めているいくつかのネジを外してライトユニットごとカウルを外す。そして外したアッパーカウルから、スクリーンやライトユニットを外す。ここまでは比較的順調だったのだが…
K100RS 4V以降は、カウルとミラーの間に2cm厚ほどのゴムを挟むようになっている。外したアッパーカウルからこの部品も外し、全塗装したカウルに装着しようとすると、何かがおかしい。
何と、固定ボルトを通す穴の数が合わないではないか。全塗装したK100RS 2V用のものは2つ、K1100RSのものは3つ穴が開いている。要するに4V以降は3箇所固定するようになったということだろう。ここまで来て現れた思わぬ落とし穴に狼狽える俺。おかしいぞ、アッパーカウルの品番はどちらも同じなのに…
少々動揺しつつ固定用の金具をあてがってみると、どうやらカウルの穴は単純に1つ増えただけで、それ以外の穴の位置は同じであることが判った。穴の位置が双方バラバラだと困ったことになるのだが、そうではなくて助かった。そうなれば話は早い。足りない穴を追加で開ければ済む話である。
早速金具をあてがって穴の位置をマジックで印をつけ、電動ドリルで穴を開ける。それ自体は大したことがない行為なのだが、仮にドリルがズルッと滑ったりすると全塗装が台無しになるので、この穴あけ作業は非常に慎重に行う。精神的に疲れる作業だ。
穴が3つになったカウルに、ゴムとベース金具をあてがい、長いボルトを通す。穴の位置が微妙にズレている気がするが、今更どうしようもないので強引に通す。とりあえずベースは固定できたので、良しとする。ミラー本体はカウル装着後に付けることになる。
反対側も同様に穴を開け、ミラーのベースを装着する。そこに新たに調達した割れていないスクリーンと、古いカウルから取り外したライトユニットを固定し、ようやくアッパーカウルそのものの準備が終わる。
そのカウルをK1100RSに装着する。手が滑って落っことしたりすると最悪なので慎重に。フロント側4箇所とサイド2箇所の主たるネジを固定すれば、もう落っことすことはない。外したインナー類や水温計、ガソリン計等を装着し、ぶった切ったインナーカバーも装着した。さらにミラーも圧入し、アッパーカウルの取り付けが完了。
その他のカウル
アッパーカウルに比べると、その他のカウルは簡単だ。
とりあえずシートを外し、続いてテールカウル一式を外す。このテールカウルはアッパー側とアンダー側の2つの部品から成っており、今回塗装したのはアッパー側だけなので、外したものをさらに分解する必要がある。これはネジ4箇所で外れるので大した話ではない。
今回落札した部品はテールカウルとグラブバーが別扱いだったのだが、困ったことに固定用ネジ類が付属していなかった。そのため、これらのネジも既存のものを外して転用しなければならない。
あれやこれやと部品を入れ替え、K1100RSに装着する。単体で見ると企画倒れに思えたテールカウルの塗り分けも、装着した姿を見るとそれほど悪くはない(良くもないが)。元々ついていた「RS」エンブレムの収まりが悪そうであることには変わりはない。
そしてサイドカバーも装着する。これは本来であればゴムのベースに圧入するだけなのだが、困ったことに落札時点でサイドカバー側の固定部が折れてしまっており、3箇所中2箇所しか固定できないため、完全な固定はできない状態だ。
本来なら塗装する前に直すべきなんだろうけど、セットで使用するテールカウルが装着されていない状態だったので、必殺技「現物合わせ」をすることが出来なかったので放置してしまった。そんなわけで、この時点ではとりあえず2箇所のボスを圧入して仮装着しただけで終わる。
これでようやく全てのカウルを取り付けたことになる…と思ったらフロントフェンダーが残っていたのでこれも装着。
始動確認
サイドカバーが無いので仮の姿ではあるが、とりあえず公道を走れる状態になった。この後予定があったのであまり時間はないのだが、走りたい衝動を抑えきれず、試運転に出かけてしまった。ガソリンがろくすっぽ入っていないので遠出はできない。むしろ給油しに出かけるようなものである。
カウルやトップケースを外したため、ほんの少し軽くなった筈なのに相変わらずクソ重いK1100RSを方向転換し、ゆっくり走りだす。ガソリン残量が殆ど無いせいで給油ポンプの音が大きい気がするが、それ以外はごく普通に走る。替えたのは外装だけなので当たり前だ。走ってもらわないと困る。
今まで真っ白だったタンクやアッパーカウルに青が混じっただけなのだが、走っていても随分と違うバイクになった気がする。よくよく見てみると塗りがよろしくなく、特にスーパーソニックブルーはムラが多いのだが、所詮素人の自家塗装なんてこんなもんだ。それよりも自分で全てやった満足感と、カラーリングが変わったことによる新鮮さを楽しんだほうがいい。
とはいえガソリンが無いのでそんなに楽しんでいる余裕もなく、すぐにガソリンスタンドに到着。そして時間的余裕もないのでそのまま帰宅。ほんの少し走っただけだったが、縦Kのエンジンフィーリングはやはりいい。
サイドカバーはゴムで付ける
さて残すはサイドカバーだけとなった。元々はΩ型のツメのようなもので、プラスチックの弾性で固定していたと思われるが、それが折れてしまって存在しないため、きちんと固定できない状態だ。車体側には水平方向に5mm径程度の金属棒がシャシーから出ており、ここに10mm径程度のゴムパイプがあり、そこにツメが噛むような形だと思われる。
見たこともないツメを復活させることはおそらく難しいので、何らかの代替案を模索する。主な案としては
- サイドカバーから何らかのツメを生やし、金属棒に何らかの手段で引っ掛ける
- サイドカバーに何らかの板状のものを固定し、それに穴を開け、金属棒を通す
- サイドカバーにゴム状のものを固定し、それに金属棒が通る程度の切欠きを設け、弾性で留める
「何らかの」ばっかりであることが気に入らないが、妄想レベルだとこんなもんだ。最も簡単で且つ手元に材料があるのが3つ目の案なので、とりあえず適当にゴムを切ってやってみたが、弾性で「留める」ためには金属棒が細すぎて、簡単に外れてしまう程度にしかならない。これでは固定手段としては使いものにならないので、早々にこの案は却下になる。
続いては2番めの案を試す。板状のものとして、プラ板や金属板でも良かったのだが、とりあえず手っ取り早いものとして3mm厚のゴム板で試してみた。ゴム板に金属棒を通す穴を開け、反対側をガムテープでサイドカバーに仮止めした状態で車体に装着してみると、少なくとも3番目の「弾性で留める」案よりは格段にまともに留まる。サイドカバーにはガムテープで仮止めしているだけなのでガタガタしているが、そこをきちんと固定すれば使えそうな状態だ。下手に頑張ってプラ板や金属板にすることに比べ、弾性がある分だけ必殺技「現物合わせ」にも都合が良く、また加工性も良い。なんだかこれでいい気がしてきたぞ。
しかしさすがに3mm厚では頼りないため、これを2枚重ねにしたものを作り、再度仮止めしてみた。やはり問題ない。というわけで、この案に決定。ゴム板をボンドG17で2枚重ねに接着し、それを収まりが良いように角をそぎ落とした上でサイドカバーに固定する。本来は双方に穴を開けてネジ止めでもすべきところだが、現物合わせのしやすさを重視してタイラップで適当に固定し、それをガムテープでグルグル巻きにして固定できたことにする。
こうして遂に3箇所固定できるようになったサイドカバーをK1100RSに装着する。これまで何度も試してきたので判っていることではあるが、やはり問題ない。
これでカウルに関しても遂に終了。あと残すは1つだけ。
画竜点睛
最後はコレを貼って完成。
貼ってしまうと、もう後戻りはできない。そう簡単には塗り直しはできない。率直に言ってウレタンクリア塗装の仕上がりには納得できていない。しかし「お前はまたタンクとアッパーカウルを外して塗り直したいか?」と言われたら、一切迷うこと無く断る筈だと言い切れるほど塗装にはうんざりしているので、それ以上考えずに貼ってしまった。
「何も貼らない」っていう案も勿論あったけど、取り付け場所を塞いだり削ったりしなかったため、何もしないと逆にみっともないので貼らざるを得なかった。後になって思えば、とりあえず最初は適当なパロディステッカーでも作って貼っておいたほうが面白かったかもしれない。
何はともあれ、やっと本当に走れるようになった。その後の試運転の結果も問題なし。
せっかくなので塗ったばかりのカウル類にワックスをかけて準備万端。ツーリングに出かけるのを待つだけとなった。