再び、SRX

YAMAHAのSRXというバイクには、他のバイクとは少し違った思い入れがある。

初めて乗ったオートバイ(原付除く)ということもあるが、750と900、合わせて4万キロ近く乗ったNinjaだとか、最近再び手に入れたBMW Kシリーズとは、また違った何かがあるらしい。

そのSRXとの出会いは、自ら進んで選んだものではなかった。中型自動二輪免許を取ってバイクを探していたときに、たまたま大学の同級生の、友達の、その兄貴が売りたがっていたのがSRXだったという、ただそれだけの話だった。安く乗れれば何でも良かった俺は、6万円というそのバイクを、とりあえず見に行った。

学校帰りに小田急線の鶴川駅まで出向くと、そこに紺色のSRX-4がいた。400ccとは思えないほど細いタンクには、赤地に白字で「故障」と書いたステッカーが貼ってある。何故かと思ったら、ミラーが両方とも無い。ミラーが無いというか、マスターシリンダーのところにあるミラー取り付け部が、折れていて無い。そしてリヤタイヤはスリック状態。よくここまで替えずに走ったな。それ以外は、猛烈に駄目な部分は無し。これで6万円。ヤフオクはおろかネットすら無きに等しい時代であり、個人売買のルートは雑誌の個人売買欄ぐらいしかない。他に安く手に入るアテもなく、こんな程度のものでも買うしかなかった。特に欲しかったわけでもないのに。

このSRX-4には、1年ちょっと、約1万キロ乗った。その殆どが大学への通学とバイト先への通勤。(くどいようだが)特に欲しかったわけでもないのだが、いつの間にか気に入っていた。当時、大排気量且つスポーティ路線のオンロードシングルといえば、SRXかジレラ・サトゥルノぐらいしかない時代であり、マイナー指向の俺にはたまらないものだった。リヤフェンダーを取っ払ったり、黄色と白のツートンに自家塗装したりしながら毎日乗っていた。乗っていて最も印象深かったのは、真冬にデコンプワイヤー、チョークワイヤーの両方が切れてしまい、始動性が劣悪になり、出かけるたびにキックしまくったこと。100回くらいは蹴ったのではないだろうか・・・体力があった学生時代だからこそ出来た話である。

しかし、乗っていくうちにパワー不足が気になり、カウル付きに乗りたくなったこともあって、限定解除してGPz750Rを買ったと同時に、バイトの同僚に譲った。残念ながら売却してから1週間後に盗まれてしまったらしい。

20071225-srxninja.jpg 手前がSRX-4、後ろがGPz750R

その後はGPZ900R、K100RSとひたすら4気筒ツアラー路線だったのだが、SRXを手に入れる機会が無かったわけではない。K100RSを手放して2年後、久々にバイクを買おうとした時に真っ先に思い立ったのは、キックの3型SRX-6だった。前に乗っていたのが2型だったから、その次の3型しか頭になかった。ほとんど買うつもりになっていて、先にマグラの36Φステアリングだけオークションで落札したりしていたが、なかなか良い出物がみつからず、結果としてTDM850を買ってしまった。そしてその次はK1100RS。

こうして俺自身はSRXを所有することはなかったのだが、どういうわけか手元にやってきてしまった。

11月末、第三京浜をピアッツァで走っていた。その横を、ブルーメタリックに全塗装して、ショートフェンダーに改造したSRXが、独特のシングルサウンドを奏でながら走り抜けていった。それを見た時、俺の中に潜んでいたSRX虫が目覚めてしまったらしい。

嗚呼、こうして金食い虫がまた一匹・・・

  • 注1ちなみに4型からはSRX-4ではなくSRX400と名乗るらしい