K1100RS ブレーキ周りを一新

3月に半年ぶりに少しだけ動かし、そしてまたしても数カ月間の惰眠を貪っていたK1100RS。例年であれば4月か5月に一度ぐらいはツーリングに出かけるのだが、左肩・腕の痛みの問題もあって動かせないままツーリングシーズンは過ぎ(Vespa LXで出かけることでツーリング欲そのものは満たした)、Kなんて見向きもしなくなる猛暑の季節となった。

この暑苦しい中、高温発熱体であるKに乗る気は全く無いのだが、困ったことに9月に車検が切れてしまうため、最低限のメンテナンスをしなければならない。判っている問題点としては、燃料ポンプが五月蝿いことは一旦忘れたとして、前後のブレーキに以下のような要対応箇所がある。

  • フロントブレーキパッドが残りわずか
  • リヤブレーキマスターシリンダーのオイル漏れ

車検だけを考えれば、黙っていればバレない範囲ではある。ただ、どちらも(特に後者)気分よく走れない類のものなので、秋のツーリングシーズン前にやってしまいたいし、できれば車検前に済ませて堂々と検査に出したい。そして、どうせやるなら、何かのついでにMoto-binsで買ったVenhill製ステンメッシュブレーキホースに交換してしまいたい。

そんなことをぼんやりと思っていた時に、急にその機会がやってきた。客先都合に合わせて仕事するつもりでいた祝日が、諸般の巡り合わせで急に暇になり、休めることになった。仕事のつもりだったので自宅には自分だけしかいない。激しく暑いので出かける気にもならない。じゃあブレーキでもやるか、ということになった。

リヤブレーキマスターOH & リヤブレーキホース交換

リヤブレーキマスターOH

1年前にキャリパーを中古品に入替え、パッドも交換したが、今度はマスターシリンダー側をどうにかする番になった。このマスターシリンダーは2014年に交換した中古品だが、走行約10,000kmで駄目になった。以前はまるごと入替えたが、どうせ中古品を買っても同じ事態になるので今回はOHキットを使って中身を最新化する(これが本来やるべき対応だろう)。

マスターシリンダーは以前脱着しているはずなのだが、7年前ともなると全く手順を覚えていない。ステッププレートの外し方は完全に忘れており、試行錯誤しながら外してはみたが、ここまできて先にマスターシリンダーへのブレーキラインを外さなければならないことに気づく。そもそもブレーキオイルを排出するのが先だろうということにも気づく。ヘタに一度やったことがあるとろくに手順も考えずにやってしまう悪い癖が出た。

仕方ないので一旦外したステッププレートを圧入し、ブレーキのブリーダーボトルを持ち出し、あちこち緩めたりペダルを押したりしてオイルを抜く。続いてマスターシリンダーからパイプを抜き、そしてようやくステッププレートを外す…のだが、今度はブレーキランプスイッチのコネクタを外さなければならないことにまた気づく。ふたたびステッププレートを戻し、コネクタを抜き、タイラップを切ってブレーキランプスイッチの配線を自由の身とした上でステッププレートを外す。これで外れるかと思いきや、リザーバータンクを抜くためにはバッテリーをずらさなければならず、そのためにはECUを外さなければならず…といった感じで、一つ外すために関係ないものをいろいろ外さざるを得ないのが実にうざったい。ブツクサ言いながらアレもコレも外し、ようやくマスターシリンダーを外せるようになった。

マスターシリンダーは2本のネジで固定されており、片方はペダルを戻すスプリングと共締めになっている。これらを両方抜いてマスターシリンダーを外す。

この状態で、ピストンを押しながらマスターシリンダー横にある小さいネジを抜くと、ピストン全体を取り出すことができるようになる。

抜いてしまえば、あとは新品に入れ替えるだけ。随分前に買っておいた新品を部品箱から引っ張り出す。

マニュアルの指示通り、ゴム部分にブレーキオイルを塗布してピストンを押し込み、押したままの状態で横のネジを締め、ダストカバーを付けてオーバーホール作業自体は完了。

飛んでったアレ

あとは装着するだけなのだが、スプリングと共締めの方は実に締めづらい。スプリングの端部にスペーサーを入れ、そこにネジを入れ、ステッププレートに固定するのだが、スプリングが強いせいでネジをネジ穴に入れる事自体が難しい。手が3本欲しくなる。

なかなかうまく行かないので、バイスプライヤーの力を借りてやってみたのだが、これが大失敗だった。何かのはずみでバイスプライヤが外れてしまい、その瞬間スプリングが戻り、そこに入っていたスペーサーが吹っ飛んでしまった。

飛んだ先はK1100RSのエンジンまたはエアクリーナー周辺だと思われるが、あまり根拠はなく、どこに行ったのかさっぱりわからない。床に落ちた音は聞こえなかったのでどこかに吸い込まれていると考えられるが、どこに飛んだのか不明確なので探しようもない。

この手のものは大抵出てこなくて、忘れた頃に突然現れるものと相場が決まっている。潔くこのスペーサーは諦めることにした。特殊なネジ等ではなく、単なるスペーサーだったのが不幸中の幸いだ。これならホームセンターで適当なものを買ってくるか、パイプを切断すれば対応できそうなので、わざわざ純正部品を注文する必要もなかろう。

とにかく何らかの形でスペーサーを調達しないと先に進まない。Vespa LXでホームセンターに行くことも考えたが、部品を無くしてウンザリした心のまま猛暑の中を30分かけてホームセンターに向かう気力はない。

リヤブレーキホース交換

そんなわけで、次のやるつもりだったブレーキホース交換を先にやってしまうことにした。

ブレーキオイルは抜いてあるので、キャリパーとABSユニット(に繋がる金属パイプ)の間にあるホースを留めているネジ類を緩めて外し、ステンメッシュブレーキホースに交換して取り付けるだけ。リヤ側にステンメッシュを奢る必然性についてはなんとも言えないが、1本£24.50(3700円ぐらい)で、純正は$52.89。わざわざ純正を選ぶメリットはない。

こちらは少し前にキャリパー交換をしたこともあってネジが固いとかいうこともなく、特に問題が起こることもなく簡単に終了。

普通なら続いてブレーキオイルを入れてエア抜きをするところだが、残念ながらそれはできない。そして相変わらずホームセンターに行くほどの気力はない。気分転換も兼ねて、Vespaで海水浴に行ってしまった。

汎用スペーサー取り付け

そして夕方、気分も新たにホームセンターに向かい、スペーサーを調達する。事前の計測によると、内径6mm、外径10mm(つまり肉厚は2mm)、長さは10mmまたは15mmのスペーサーがあればBestなのだが、残念ながら肉厚2mmのものがなかった。そのため、肉厚1mmの内径6mm、内径8mmのものを購入して、2本重ねて使うことにした。長さはどちらが正しいかの自信を持てないので10mm、15mm両方買った。ハマらなかった方が無駄になるが、一袋100円もしないので、往復するガソリン代を考えれば買ってしまったほうが得だ。

気温が下がってきた夜9時過ぎに作業を再開。代替品スペーサーをあてがってみると、やはり長さは10mmだった。

今度こそ吹っ飛ばさないように慎重に組み付ける。しかし慎重になりすぎるとバネの力に勝てないので、慎重かつ大胆にバネを縮めながら押し込む。

なんとかスペーサーを飛ばすことなく作業を終え、ステッププレートを車体に装着する。

続いてリザーバータンク、スイッチのコネクタ等を元に戻し、概ね整ったところでブレーキオイルを入れ、まずABSユニット、続いてキャリパーからエア抜きをする。以前買ったブリーダータンクがまたしても活躍する。ABSユニットも含めて完全にブレーキオイルが抜けているためさすがに少々時間がかかったが無事に終わる。効き目のほどはよくわからないが、ペダルを押した感じはごく普通。まあブレーキは乗ってみないとわからないのでこんなものだろう。

フロントブレーキパッド & ブレーキホース交換

こうなるとフロントもやってしまいたくなる。こういうのは勢いが大事だ。特に暑い時期はそうだ。一度ダラけると二度と進まなくなる。翌日の午前中もまた少し時間があったのでフロントにとりかかる。

ロア側ホース、パッド交換

とりあえずフェンダーを外してみると、どういうわけかスタビライザー(というほど強固なものではないが)を留めているネジが2本無くなっている。いつの間に無くなったんだコレ。

手持ちのネジを探してみると、8mmでちょうどよい長さのボルトがあまりない。六角ボルト1本、キャップボルト1本それぞれあったので、とりあえずこれを装着する。

そしてリヤの教訓を思い出し、まずブレーキオイルを抜く。ブリーダータンクにガンガン吐き出す。ABSユニットからも吐き出す。そしてキャリパーを外す。普通ならブレーキホースはそのままでキャリパーだけ外すのだが、今回はホースも変えるのでホースごと外す。ホースの上側(スタビライザーに固定されている分岐)のネジを外してキャリパーとホースを丸ごと外す。

そしてキャリパーとブレーキホースを分離すべくネジを緩めようとしたのだが、これが困ったことに実に固い。

ここはダブルナットなのだが、反対側に回しているんじゃないかと心配になるほど固い。手でキャリパーを抑えて緩めようとしてもびくともしないので、せっかく外したキャリパーをまたフロントフォークに戻してネジ止めする羽目になる。その状態でハンマーで叩いたりしてようやくキャリパーからブレーキホースを外すことができた。こういう不毛な作業をしているとどんどん時間が経ち、家庭の事情によりこの中途半端な状態で一旦作業中断となる。

その後も隙間時間にチマチマと作業を進め、ABSユニットから出ているパイプから分岐までのホース、分岐から左右キャリパーへのホース、ブレーキパッドをそれぞれ交換する。これらは基本的にただ入れ替えるだけなのでそれほど苦労はしない。どちらかというと、慣れているが故の油断の方が危険だ。

アッパー側ホース交換

ここまではまあいい。問題は、マスターシリンダーからABSユニットへ繋がるパイプへのアッパー側ホースの交換だ。マスターシリンダー側は外すだけだからいいとして、パイプとの接合箇所が燃料タンク下の狭苦しいところにあるのがやっかいだ。タンクを浮かせて後ろにズラし、フレームの下に無理やり詰め込まれているハーネス群をどかしたところにその接合箇所はある。奥まっていて手も工具も入りづらい。

ハーネスを外してしまえば多少やりやすくなるとは思うが、あまり気がすすまないのでそのまま工具を押し込んで緩める。普通のスパナかフレアナットレンチしか入らない上に、ストロークを十分にとれないので、これは外すのに何十分かかるのかと思ったが、一度緩めてしまうとあとは手で回せたので助かった。場所が場所なだけに水や埃が入りにくくキレイなまま保たれていたからだろうか。

こうして抜く方はそれほど苦労せずに終わったが、懸念していた通り入れるのに苦労する。まずそもそもの配置に無理があってホースが接合部からいきなり上方に曲がるようになるので、真っ直ぐにねじ込むこと自体がやりにくい。そして手もほとんど入らないので、ネジを回すこともやりにくい。押し込みにくいホースを左手で支えつつ右手でネジを回すのだが、なかなかネジが噛まない。20分ほど格闘してようやくネジが噛み、ようやく結合させることに成功した。

続いてマスターシリンダー側も固定し、遂にフロントのブレーキライン全体を交換できた。

ブレーキオイルを入れ、ABSユニットと左右キャリパーのエア抜きをする。オイル漏れがないことを確認し、何箇所かのネジを増し締めした状態で一旦試運転をする。試運転後にオイル漏れ確認をしたいのでフェンダーは未装着のまま。

そのあたりを1kmほど走ってみたが、パッドを変えたばかりで効きが甘いことを除けば特に違和感はない。以前は車体を押したり引いたりしたときにフロントに引っかかりを感じたが、それも無くなっている。原因がブレーキ周りなのか、スタビライザーのボルトなのかは不明。

問題なさそうなので、ブレーキを握った状態でマジックテープで留めて一晩馴染ませる。

翌日ブレーキラインとマスターシリンダーを見てみると、マスターシリンダーのタンク部からオイルが滲んでいる。ここのダイヤフラムを持っていたことを思い出したので、交換して再度マジックテープ攻撃をする。

試運転とその後

新品ダイヤフラムが奏功したのか、オイル滲みはなくなった。こうなると暑いとはいえ少し走りたくなる。幸いこの日は曇っており灼熱というほどではない。各部を増し締めし、フロントフェンダー一式を装着して試運転に出かける。20kmほど山道と海沿いを走ってみたが、ブレーキ周りは特に問題はない。ABSエラーも全く出ない。ステンメッシュホースにしたのでタッチが良くなるのは想定通り。効き自体はそれほど変わらないのも同じく想定通りだが、7万キロ走った純正ゴムホースよりは良いに違いない。

問題は、停止時にフロント周りからコトコト音がすることだ。音がしたりしなかったり、いまいち再現性がない。大した根拠は無いがブレーキ周りから出ている音ではないような気がする。

翌日、フロントを持ち上げて回してみると、ホイールが特定の位置に回ってくると音がすることがわかった。

なんとなくホイールベアリングのような気がするが、所詮素人判断なのでわからない。キャリパーを外してみればブレーキなのかどうかの切り分けはできるが、正直めんどくさい。

ベアリングの部品はMoto-binsで買ってあるのだが、自分で交換できるかというと微妙。どっちかというと無理な気がする。諦めてプロに頼みたいところだが、いわゆる馴染みのバイク屋みたいなところが無いのが問題だ。以前駆け込み寺的にお世話になっていたところは藤沢なので、今となっては少々遠いし、Webサイトを見たところ多忙そうだ。近場にまったく店が無いとは言わないが、部品持ち込みでやってくれるかは不明。そしてもうすぐ車検が切れる。どうするのが最良の選択なのだろうか。