8回目の車検の顛末

今年は2007年にオークションで購入したK1100RSの8回目の車検の年だ。回を重ねるごとに走行距離が減り、今回も3000kmちょっとでの車検となる。一度もタイヤ交換さえせずに車検に臨むのは前回に続いて2回目になる。馬鹿みたいに高価なタイヤを買わなくて済んだと言えなくもないが、全然乗ってもいないのに何故車検なんぞを通さねばならないのかと(以下略)

どこに頼む?

ここ4回はユーザー車検で済ませており、今回も当然そのつもりだったのだが、困ったことに本業が超多忙であった。ユーザー車検を通すためには少なくとも午前または午後に半休が必要だが、それすらままならない。自分がプロマネなら強引に決めてしまうところだが、今回は雑魚キャラの立場なので無理だ。残念だがユーザー車検は諦めるしかない。よりによってバイク自体にほぼ問題がない今回に限って何故そうなるのか。

そんなわけで代替策を考える。バイク屋に出す、ホリデー車検に出す、代行屋に頼む、といった手段が考えられるが、とにかく今回は多忙だったので金で解決することにして普通にバイク屋に出すことにした。

そこで自宅から比較的近く、BMWに拒否反応がないことが判っているバイク屋に問い合わせたのだが、多忙を理由に断られてしまった。

自分も多忙だから頼んでいるわけで、先方もその時たまたま多忙だったことに対して文句など言えるわけがない。素直に諦めて代替手段を考える。別の近隣のバイク屋も考えたが、あまり良さげなバイク屋がない。そこで10年前(自身3回目の車検時)に使ったホリデー車検を検討してみたのだが、その時の店舗は既に存在しないようだ。別の店舗はあるが鶴見区だの相模原だの随分遠い。正直めんどくさい。

ここで俄然脚光を浴びるのが、初回と2回目に依頼したガレージ湘南(以下G湘南)である。店舗が茅ヶ崎から藤沢に移転してしまってから疎遠になっていたが、自分のような馴染みのバイク屋というものを持たない者にとっては非常に使い勝手の良い店だ。

ここの車検は必要最低限の確認+通すだけ(ほぼ車検代行みたいなもの)で、外車だろうがなんだろうが手数料20000円(税込22000円)+法定費用、という明朗会計である。いわゆる車検代行屋より安い。

今回はK自体に何ら問題がないのでこれで十分だ。懸案のフロントホイールベアリングも、ここなら造作なくやってくれるだろうからついでに頼んでしまえ、という下心込みで、久しぶりにG湘南に頼んでみることにした。

連絡してみる

Webサイトには一応メールアドレスも載っているのだが、いかにもアナログっぽいあの社長がそんな手段を好むとも思えない。そんなわけで電話をかけてみる。数回のコールで出た。BMW K1100RSの車検代行を依頼したい旨を伝えると、あーいいですよー、という例の軽い調子で返される。ただ、一度現車を見てみたいと言うではないか。前はそんなことはなかったのだがどうしたことか。

10年以上疎遠になっているのでこちらのことなど覚えていないと思うし、あまりにも酷いものをいきなり持ち込まれても困ってしまうというのはちょっと考えてみれば納得できるので、素直に従うことにする。数日後の夕方に行くことにして電話を切る。

拍子抜け

数日後、仕事を適当なところで切り上げ、G湘南に電話して今から行く旨を伝える(本業は相変わらず超多忙ではあるが、夕方以降は比較的時間が取れる)。雨模様ではあったが、雨雲レーダーを見る限りK1100RSのカウリングをもってすれば対応できそうだったので臆せず向かう。

40分ほど走って東海道本線沿いの直線道路を走ってG湘南に近づくと、すごいタイミングで店舗から誰かが出てきてこちらの方をジロジロ見ている。歩道に乗り上げて店舗の前に停める。停めるやいなや出てきたオッサンが話し始める。いつもの社長ではない人物なので、Webサイトに載っているメカニックの方であろう。「光量が大丈夫かを見たかったんだけど、走ってきたのを見ていたけどこれなら全然問題ないですよ」とのことだ。どうやらR100RSあたりの電装系が弱いものと混同していたようだ。

メカニックさんがざっと各部を目視して、車検に通らなそうな大きな問題がなさそうなことを確認する。ついでなのでフロントホイールベアリング交換を依頼したい旨を伝えて快諾を得る。メカニックさんはかなり話好きな方で、あまり関係ないことも含め色々と話をする。在宅勤務続きのため他人と面と向かって話す機会が極端に減っていたのでなんだか新鮮な感じがする。

バイク自体は問題なさそうなので、あとはいつやるかという話になる。車検予約が必要とのことなので、先方の都合の良さそうな日がわかったらなるべく早めに連絡してもらう、というユルユルな合意で話は終わる。

せっかく金曜日にこんなところまで来たので、超久しぶりに大庭のラーメンショップに寄る。辻堂在住時はしょっちゅう来ていたが、もう何年ぶりになるのか思い出せない。時間が少し早めなせいなのか、雨模様だからなのかはわからないがガラガラだった。アクリル板とビニールだらけなのには閉口するが、こういう古典的な佇まいは妙に落ち着く。

車検持ち込み

次の週になり、仕事中に電話がかかってきた。週末に熊本で全日本のレースがあるから今週中にやりたいので持ってきてくれないかとのこと。10年経っても相変わらずの強引さである。この辺は気に入らない人は気に入らないのだろうが、人にはそれぞれ都合があるので自分は全く気にしない。無理なら無理で代案を調整すればいいだけの話である。水曜日か木曜日に持っていくということで合意する。

水曜日は仕事のキリが悪くて行けず、木曜日に持っていくことにした。昼過ぎに電話し、夕方持っていく旨を伝える。前日までの天気予報が大外れで前回に続いて雨模様だったのだが、上下カッパを着込んで出かけたところ雨が止んだ。前回も乗り始めたら小降りになったのだが、2回連続同じ現象というのは珍しい。

無事G湘南に到着してK1100RSを引き渡す。前回はいなかった社長も今日は出てきた。久々のご対面だが、社長はこちらが何者であるかは認識していなさそうだ。最後に会話をしたのはセローのキャブ整備をした11年前のことだから致し方あるまい。車検は明日には終わるので取りに来て欲しいとのこと。なんだか懐かしいスピード感である。翌日の予定を明確に覚えていなかったので、翌週引取では駄目かを聞いてみたのだが、置き場がないからさっさと来いとのこと。予想通りの回答だ。まあ多分大丈夫だと思われるのでOKとする。

藤沢駅まで歩いて電車で帰るつもりだったのだが、頼んでもいないのに代車の125ccスクーターが出てきた。普段はCBR250を代車にしているらしいが、それが出払ってしまっているので慌てて整備したらしい。徒歩・電車・バスのコンボは面倒くささの極みだったので大変ありがたい。

メカニックさんに抜け道を教えてもらってその通りに帰る。元・地元なので比較的土地勘はあるのだがこの道は知らなかった。乗り慣れないスクーターで、且つウインカーのスイッチが固いせいで、間違えてホーンを鳴らしてしまうこと数回。ようやく慣れた頃、江ノ島あたりで胸ポケットの電話が揺れていた。歩道に止めて見てみるとG湘南からであった。折り返し電話をしてみると、納税証明書が令和2年のものしか入っていないとのこと。OMG…

帰宅後、引き出しをゴソゴソして令和3年版の納税証明を発見した。この納税証明、左側には令和3年、右側には令和4年(有効期限)と書いてある。そのせいで令和2年モノ(右側に令和3年と書いてある)を最新版と間違えてしまったようだ。間違える自分が悪いことに疑いの余地はないが、誤解を招くような記述は避けてほしいものだ。つうかこのぐらい紙ベースはやめて電子的に処理しやがれ。クルマで出来ることが何故バイクではできないのだ。この国の馬鹿さ加減には呆れるばかりだ。

虚しいだけなので悪態はやめて晩飯を食い、どういうわけか20:30から始まる本業の電話会議をこなし、しばしダラダラしたあとに自家用車で再度G湘南を訪れ、とある手段で納税証明を渡した。

車検完了…したのだが

翌日の夕方、G湘南に電話を入れる。車検は無事通ったようだ。仕事を少しだけ早めに切り上げて、2日続けてG湘南へ向かう。今日は雨ではない。3度目の正直。天気が良すぎて稲村ヶ崎公園に立ち寄ってしまった。

気をつけていたものの何度かホーンを鳴らしてしまいつつ、途中でガソリンを入れてG湘南に到着。Kは店の前の歩道に鎮座していた。社長とメカさんの2人で古い空冷GPzにかかりっきりで忙しそうだ。代車スクーターを停めて身支度をしているうちに2人とも手を止めて歩道に出てきた。車検は何の問題もなく通ったが、ブレーキローターの冷却穴がブレーキダストで糞詰まり状態だったのでチマチマ掃除したとのこと。そんなの全然気付いていなかった。やはりたまにはプロに見てもらったほうが良い。必要最低限のことしかやらないだろうと勝手に思い込んでいたのだが、こんな地味なところをやってくれるのはありがたい。

車検自体は法定費用プラス代行費用2万円で35970円。代行費用だけ消費税がかかるので+2000円。そこにホイールベアリング交換工賃1万円+消費税1000円、あわせて48970円を支払う。前回訪問時は事務的な対応だった社長も、書類に書かれた苗字や住所により、こちらが何者であるか気付いたようだ。いつの間にか店がなくなっていてびっくりした、みたいな昔話をする。

しばしの雑談を終え、交換して戻ってきたベアリングや背負ってきたリュック等をパニアケースに入れようとすると鍵がかかっていた。開けようとすると、肝心のキーシリンダーがクルクルと空回りしてしまった。この感覚、以前乗っていたK100RS(2V)でみちのくひとり旅をしていた最中に起こった現象と同じだ。もはや鍵としての意味がなくなっているキーシリンダーを引っ張ると、そのままスルッと抜けてしまった。

うぉ~なんだこりゃ、抜けちまった、とか思わず口走るとメカさんが近寄ってきた。この鍵の扱いに関しては経験があるようで、ここに抜け止めの金具があるはずだ、なんていう話になる。よくよくロック部を見てみると確かに何かが挟まっている。ピンセットを持ってきてもらいその金具を抜くと、メカさんはおもむろにそれを持って奥の方に行ってしまった。そして鍵を抜き差しして色々やってみるのだが、金具がひん曲がっていてうまくいかないようだ。そして、その金具を押し戻すスプリングがあるはずなのだがそれも無いことがわかる。iPhoneのライトを使って地面を探すが、そんな小さいスプリングが見つかるわけもない。その間どこかに行っていた社長は呑気に「直ったか〜?」なんて言っているが残念ながら直らない。

幸か不幸かこのパニアケースには2箇所ロックがあるので、片方が駄目でも特に問題はないし、鍵がかからないだけでロック自体は有効だ。とりあえずキーシリンダー無しで去ることにする。ここ1週間で4回もやったG湘南往復もこれで最後になる。走り出すと、直ったはずのABSエラーが再発している。何度かリセットボタンを押してみたが直らない。よくこれで車検通ったな。そしてガソリンが減っているしトリップも随分進んでいる。軽トラに載せて陸運局に行くのかと思っていたのだが自走したのか。道理でクラッチが重いとかそんな話になるはずだ。まあしつこいようだが代行みたいなものなので何ら問題はない。

せっかくこんな時間にこの辺にいるので…というわけでラーメン屋に行くのは1週間前と同じ。以前の自宅の近くにある康家に寄る。

持つべきものは予備部品

ラーメンを終え、久しぶりに乾燥した路面を走って帰宅した。2007年にこのK1100RSを引き取った際にトップケース内に入っていた部品群の中にキーシリンダーが入っていたことを思い出したので、部品箱からそれを取り出す。まさかこんなことでコレが役に立つ日が来るとは。ひん曲がった金具とスプリングを取り出すべく、キーシリンダーに細いドライバーやシールリムーバー等を差し込んでグリグリしていると、どうにかこうにか部品を取り出すことができた。

その部品を脱落したキーシリンダーに取付け、パニアケースに差し込む。

とりあえずこれでロックは直ったことにする。

そして、エラーが出ているABSをリセットする。何度かやる羽目になったので勝手はわかっている。リセットを実行すると、メーター内の左右のランプが交互に点灯する状態から、同時に点滅する状態に変わった。おそらく成功だろう。

本業多忙だったせいで随分苦労したが、ようやく8回目の車検を終えることができた。G湘南まで1週間に4回も往復するぐらいなら、平塚まで1往復するぐらいできたんじゃないかと思わなくもないが、こればっかりは1日の中で自由時間が訪れるタイミングに左右されるのでどうしようもない。次にやるときはどうなるのだろうか。仮にまたG湘南だったとしても次は2往復で済むはずだが。