K1100RS 箱根伊豆ツーリング

前置き

車検を通し、ついでにフロントホイールベアリングを替え、燃料ポンプを替え(相変わらず高周波音が五月蝿いのは置いておく)、ABSユニットもリセットして、走行70,000km超えにして久しぶりに目立った問題がない状態になったK1100RS。問題はそこではない。せっかく不具合がないのに全然乗っていないということが問題だ。2021年も終わろうというのに未だ県外どころか茅ヶ崎市が最遠という体たらく。俺は整備して車検を通すためにバイクを持っているわけではない。

毎年恒例の会社創立記念日ツーリングは、仕事の都合上休めず機会を逃しており、何らかの言い訳が成立しないと乗れない状況になってしまっていたのだが、たまたまそれが成り立つ日が訪れた。

準備

とはいえ、今年に入って車検に伴うG湘南への数往復と三浦半島一周程度しかしておらず、身体がバイク慣れしていない。クソ重いクラッチを握る左手もすぐに駄目になるだろう。とても遠出など企画できない。月に数回乗ることが習慣づいてからでないと到底無理だ。

それはわかりきっているので、気合を入れて早起きしたりはせず、ごく普通に起きて家事をこなし、のんびりと家を出て天気と体調次第で行けるところまで行って帰ってくる、というテキトーな計画(にすらなっていない)で出かけることにした。

一応、前に使っていた燃料ポンプ(これも五月蝿い)と交換用工具をパニアケースに突っ込み、水筒に入れた珈琲と、途中で買い物をした時に使う保冷バッグ&保冷剤も突っ込んで準備完了とする。前日に見た居住地の天気予報は晴れだったので雨具類は突っ込むのをやめた。計画をしていないため行き先も不明で、当然天気予報も未確認である。これが後になってメンドクサイ事態を招くのだが。

出走

そんなわけで、カメラ用ウェストバッグを腰に巻いた以外はそのへんを一周するのと大差ない軽装で家を出た。混雑気味のR134をゴニョゴニョしながら走っているうちに早くも左手が痛くなる。予想はしていたがちょっと早すぎる。湘南大橋手前で再び渋滞が発生し、いつもの柳島のGSで給油した頃には、左手はまるでロングツーリングの帰り道のようになっていた。もう帰ろうかなあという悪魔の声がどこかから聞こえるが、この先は流石に空くはずだという思い込みのもと先に進む。その期待通り、西湘バイパス大磯西IC付近の工事渋滞以外は、特に混雑することはなかった。

しかし箱根までくると混みはじめる。箱根新道入口あたりを起点として渋滞が始まる。紅葉シーズンなので仕方がない。最初はおとなしく渋滞の中で待っていたが、左後方から他車が現れてスルスルと前に行くのを見ていると、左手の痛さもありゴニョゴニョしてしまった。旧料金所あたり(無料化と同時にパーキングまで潰したのはやりすぎじゃありませんかね?)で渋滞からダラダラになったので車列に戻る。

その後も交通量は多めで、それほど飛ばせないまま大観山のICに近づく。ここでまた渋滞が始まった。これはR1との合流まで延々渋滞であることが見え見えなので、一旦箱根新道から出る。大観山方面に暫く走ったところで路肩に空き地が現れたので停める。

箱根ターンパイク 伊豆箱根連絡線

Google Mapで道路状況を確認する。予想通り、芦ノ湖大観ICから先は糞詰まり状態だった。

当初は目的地を芦ノ湖スカイラインとしていたのだが、天候は明らかに悪化しており、高額な通行料を払って芦ノ湖スカイラインを走っても富士山が見えないのは見え見えだ。それは興醒めだし、この渋滞ではそこまでたどり着くのが難儀だ。そのため、そのまま大観山方面に向かい、今まで一度も走ったことがない箱根ターンパイクの「伊豆箱根連絡線」を通り、そのまま十国峠〜伊豆スカイラインというありがちなルートに向かうことにした。行き先などその場で決めるのがテキトーソロツーリングの醍醐味だ。

ちょっとだけ走るとすぐに伊豆箱根連絡線の入口になる。係員の詰所というか料金所っぽいものはあるが、とっくに終点一箇所に集約されているようで、とりあえず入るのは自由だ。入ってすぐそこに駐車エリアがあるので一旦そこに停める。さすがは有料観光道路、景観が良い。

たまたま居合わせたナンシー爺さんに捕まってしまい暫く会話し、何枚か写真を撮り、ようやくターンパイク伊豆箱根連絡線を走る。本線と違ってアップダウンは殆どないが、最初から最後まで見晴らしが良く相模湾が見えっぱなしなので、景観はこちらのほうが上に感じる。紅葉もそこそこ進んでいるが、もう一息といったところか。

しかしこの道はたったの1.7kmしかなく、あっという間に終わってしまう。料金所で160円を払い、すぐ目の前の県道を十国峠に向かって南下する。

十国峠

この県道は良い道なのだが、全く停めるところがなく通り過ぎるだけになってしまうことと、トロい車が前にいるとどうしようもないことが難点だ。今回も例に漏れず鈍臭いサンデードライバーに蓋をされてしまった。ただダラダラ走って握力を浪費しただけでレストハウスに着いてしまう。ここでは他車がたくさん停まっている駐車場ではなく、別の駐車エリアを選ぶと撮影好適地がある。

ちょっと走っては撮影、を繰り返しているうちに左手が復活しないかと期待したのだが、残念ながらそれは無さそうだ。ただ単に時間を浪費してしまい既に時計は13時。これでは下山してラーメン屋に向かっても午後休憩中だろうから、自ずと昼飯はコンビニかスーパーで買い食いということになる。

握力なし、渋滞は嫌だ、伊豆スカイラインもちょっとだけ走る、という条件から、伊豆半島東岸のR135は外し、韮山峠から函南方面に下山して伊豆縦貫道の無料区間で北上することにした。

伊豆スカイラインの撮影地

熱海峠の料金所で210円を支払い、通行券を受け取って伊豆スカイラインを走る。天気は相変わらずパッとしない。天気のせいか、交通量も少なめだ。恒例の撮影地である滝知山園地もガラガラで、アマチュア無線をやっている軽バンのオッサンぐらいしか停まっていない。

そこから出る道に停めて撮影に興じていたが、その間誰一人として通らないので全く迷惑にならない。

次の無名撮影地もガラガラ。

誰も来ないのをいいことに撮影して遊んでいると雨がポツポツときた。ん? 今日って雨降るんだっけ? と思いながら雨雲レーダーを見てみると見事に雨だ。しかも雨具を持っていない。なんてこった。

とりあえず伊豆スカイラインには雨を避けられる場所はないので、さっさと予定通り韮山峠から下山することにした。それなりの豪雨にならない限り、K1100RSのカウルはまあまあ雨を防いでくれるので、下山後にそこそこの規模のスーパーを目指すこととして、目標地をマックスバリュ函南店に定め、今日はじめてナビ代わりのiPhone6sをセットする。よりによって雨が振り始めてから装着する羽目になるとは。しかも先日2度目の電池交換をしたばかりなので防水性がない。これもカウルに覆われていてあまり濡れないだろうと決めつける。その隣にあるドラレコのモニターの方がよっぽど雨に弱い(SDカードスロットが剥き出し)ので、コレにはビニール袋をかぶせる。

準備は整ったので先に進む。幾つかの駐車場を通り過ぎたところで雨の量が増え始め、韮山峠を出るころには、まあ走っていればあまり濡れない、程度の雨量になってしまった。過度に濡れると面倒なので極力伏せながら走る。韮山峠から外界までは森林地帯なので雨は多少防げるが、その代わり濡れた葉っぱが厄介だ。慎重に走るのであまり速度も出ない。下山したら止むことを期待していたが、残念ながらあまり変わらない。しかし目的地はそう遠くない。少し走ったところでマックスバリュ函南店に到着した。駐輪エリアにK1100RSを停め、ヘルメットを持ったまま店内に入る。

雨宿り

ショッピングカートに濡れたヘルメットをぶら下げて物色する。おばちゃん、おばあちゃん、家族連れでごった返す店内に、濡れたジャケットのオッサンは異質な存在だ。買い物カゴに富士宮やきそばやら丹那牛乳やら、このあたりの定番土産物を突っ込む。さらに超遅い昼飯におにぎりセット、足りなかった時のための菓子パン等もカゴに入れる。雨雲レーダーを見てみると、17時に止むとかふざけたことを言っているが、雲の感じからすると遠からず小降りになるだろう。それにしても随分ピンポイントで降る雨だな。

店内のイートインエリアで食うと消費税が割増になるので、外のベンチで買ったものを食う。

食いすぎると眠くなるので、おにぎりセットだけで昼飯は終わりにする。BMWの説明書の教えには従わなければならない。雨も丁度上がったようだ。準備をして出かける。

帰路

マックスバリュ函南店を出て、その目の前にある伊豆縦貫道(高架)の下を走る一般道を走っていると、結果的に強制的に伊豆縦貫道に乗せられる。その後の選択肢は幾つかあるが、R1をひたすら走って箱根を越えるルート(距離的に最も短い)を選ぶ。三島塚原ICでR1に降りてそのまま箱根山登りに入る。ここを走るのは数年ぶりになるが、バイパス化が進んでいて頂上まですべて二車線化されていた。今回は雨が上がったばかりでずっとウェット路面だったのであまり楽しめなかったが、普通にドライだったらかなり走りが楽しいルートだったに違いない。まあどうせそのうちまた走る機会もあるだろう。

頂上の駐車場で一休みする。寒い。

この後は箱根新道をひたすら下り、そのまま西湘バイパスを走るので、西湘PAまで休めない。ほら、やっぱり箱根新道終点のPAを閉鎖したのは愚策じゃないか。あそこで山下りの緊張をほぐせるかどうかは大違いだったのに。古いクルマやバイクだと単なる下りでも精神的疲労が違うんだよ、そのへんのヤツとは。

ブツクサ言いながら出発する。寒さとも相まって左手の痛みが酷い。ちょっと走るとすぐに箱根新道に分岐し、あとはひたすら2速か3速で10kmほど下山するだけになる。相変わらず路面はウェットなので精神的に疲れるが、左手的にはあまり疲れずに済む。そしてそのまま西湘バイパスを疾走し、西湘PAで休憩。この時点で18:00とかだったらラーメン屋に寄ったりしながらダラダラ帰るのだが、まだ16:30だ。寄り道せずに帰宅することを選択する。

さて、あとは帰るだけ…なのだが、この日は江ノ島で何かがあったようでR134が辻堂海浜公園あたりからどん詰まり状態になる。左手握力不全状態でこれはキツい。超低速でダラダラ走るATミッションのクルマが物凄くウザいので半ば強引にゴニョゴニョする。お前から見たら俺はウザいだろうが、俺から見たお前もとんでもなくウザいのでお互い様だ、我慢しろ。止まるたびに手を激しくブラブラさせて疲れたアピールをして誤魔化すことを繰り返しながら進み、鎌倉高校前を過ぎたあたりでようやくまともに走れるようになる。

それ以降は極端な渋滞に巻き込まれることなく帰宅。走行距離はたったの186km。それでこの疲れ具合とは、我ながら情けない。

なお、自宅まで残り2kmとなったところでABSエラーが突然再発した。翌日リセットしたら直ったのだが、もうこの現象は頻繁に起こるものと思っておいたほうが良さそうだ。出先でエラーが出るとうざいったいので、リセット用の電線一式はツーリング道具一式に含めておいた方が良かろう。

撮影に関する雑感

今回のツーリングはPENTAX K-1中古良品入手後、初の遠出となる。撮影がツーリングの目的の半分を占めると言っても過言ではない。ヤフオクで落札したLowePro Inverse 100AWにK-1とsmc FA Limited 31mm/43mm/77mm の3本を突っ込んで出掛けた。随分前から持っている200AWの方が余裕があって使いやすいのだが、パニアケースに入らないので100AWにした次第である。単焦点しか使わないならこちらで十分だ。

最初の停車時と箱根ターンパイクでは43mmを使い、その後はほとんど77mmを使った。箱根ターンパイクまでは、駐車エリアの広さの関係もあってあまり下がることができず43mmが適切だったが、それ以降は基本的にガラガラで下がり放題だったため77mmが適切だった。初めて来る場所だと景色も撮りたくなるのだろうが、何度も来ている場所で且つ天気も冴えないのでそんな意欲も沸かない状況下では77mmの切り取り具合が絶妙だった。APS-Cでもそのような状況では50mmや55mmを使っていたので、ほぼそれと同じ距離感覚と言える。その感覚のまま反則レンズであるFA 77mm Limitedを使えるというのはK-1で撮る大きな利点と言える。

最初に停車したガソリンスタンドや西湘PAではiPhone11 Pro Max、もしくは首にぶら下げたGRIIIを使った。こういう記録撮影にしかならない場所ではK-1を出すのは億劫だ。撮影までに要する時間は、GRIIIを取り出すのとそれほど差はないのだが、作品になるとは思えないシチュエーションで出すのは心理的な敷居が高い。ただ、前述の通り、ほぼ見慣れた景色で且つ天気も悪かったので、ほぼK-1での撮影に終始した。

例によってRAW+で撮影しており、撮影時のJPEGは「鮮やか」なのだが、ここに載せているものはすべて「リバーサルフィルム」でRAW現像し、一部は露出を+0.5したりしている。今回のような雨が振りそうな曇天だと「リバーサルフィルム」の湿っぽさ、コントラストの強さが好ましい効果を出し、古いバイクに似合うフィルムっぽさを醸し出しているように思える。

まあこのあたりは全部自己満足なのでこのへんで。