燃圧レギュレータ交換

前置き

水平対向エンジンのような鼓動感をどうにかすべく、アレを換えコレを掃除しソレを換え、色々やったらそこそこ調子は良くなったものの、肝心の鼓動感だけは一向に改善しないピアッツァ。もうそろそろ諦めてプロに頼んだ方がいいとは思いつつ、やれることがあるうちは自分でやってみようと思っている。それなりに面白いし。

プロだったらそれなりに高い確度で原因を当てるとは思うのだが、そこは所詮素人。ネット上にある先人の知識だとか、本棚にある古いオートメカニックだとか、いすゞのエンジン整備書だとかを見ながら、自分なりに考えて、難易度・コスト・解決する可能性等を総合的に考慮して作業項目をピックアップした上で優先順位を決め、順次実施することになる。なんだか仕事で不具合解決の作業をしているような気分になるが、これも不具合といえば不具合なので考え方は同じだ。

但し悲しいかな素人なので仮説や見立てがまるでアテにならない。金が無尽蔵にあるわけでもないため、原因がよくわからない場合は、

  • 原因である可能性は一旦置いておいて、ほぼ金がかからない箇所の交換・掃除・調整(中古品を持っていたエアフロセンサー、点火時期調整、スロットルボディ掃除等)
  • 簡単且つ低コストでできる箇所(各種ホース交換、デスビローター交換等)
  • 若干面倒だが、低コストでできる箇所(燃料フィルター等)

と言った順序で実施した上で、それでも変化がなければ「少々部品代が高い、または難易度が高い箇所を、可能性が高いと思われる順にやるだけやってみる」ことになる。

プロではなく素人故、短時間で終わらせるより低コストを重視するため、このような順序になる。今となっては、上にリストアップしたような低コスト項目は概ね実施済みになってしまっており、その次のコストや難易度が高くなる段階に移っている。これに該当するものは以下のようなものが挙げられる。

  • 燃料ポンプ交換
  • 燃圧レギュレータ交換
  • インジェクタ交換(サージタンクを外さないければならないので、難易度と想定所要時間の都合により、自力では無理だと思っている。時間が無尽蔵にあればやってみるけど今は無理)
  • O2センサー交換(部品は約1000円で購入済みで、やろうとしたが固くてはずれなかった)
  • ISCバルブ掃除(やろうとしたが固くてはずれなかった)
  • バルブクリアランス調整(シム調整式なので自力ではまず無理)

自分の場合は、そこそこ中古部品を持っていたおかげで実施済みの項目が多かったのだが、普通はここが多くなるはずだ。ECU交換、エアフロセンサー交換なんかは、普通ならこの辺に含まれるのだろう。挙げてはみたものの、自力でできないものが幾つか含まれている。徐々にそういうものが増えてきてしまう。

このうち燃料ポンプ交換は既に完了し、例によって「調子は良くなったが鼓動感は解決しない」という結果だった。既に消去法の段階に入っており、自力でできることは数少ない。その一つである燃圧レギュレータ交換をやってみることにした。

(本来、燃圧を計測してから交換要否を判断するのがスジだとは思うが、部品より燃圧計の方が値段が高いし、そもそも古いので、無条件交換とした。)

部品調達

とりあえずいすゞ純正部品の存在を調べる。モノタロウで検索するとヒットするが、例によって物凄い値段だ。

出るだけありがたいのだが、ありがたくないお値段である。ダイアフラムとバネが入っているだけの部品にこの金額を支払うのは腑に落ちない。

となれば汎用品または互換品である。汎用品として調整式燃圧レギュレータというものがあり、どちらかと言うとチューニングパーツとして売られているが、部品が製造廃止になった旧車乗りも活用しているようだ。メーカー指定の燃圧になってさえいればいいので別にこれでも構わないのだが、信頼できそうな日本メーカー製品はそこそこの価格だ。中国製の怪しい部品は格安で多数売られているが信頼性に極めて乏しい。燃料系ではあまり使いたくない。そして汎用品の場合、固定方法の検討が必要だ。それはそれでめんどくさい。

そこで互換品を調べると、DELPHI製の部品が4342円で売られていた。先日買った燃料ポンプと同じく、在庫限りのデッドストックっぽいが、まあこんなの多少古くても問題ないだろう。

燃圧レギュレータを換えて良化するという確証は無いし、どちらかと言えば違うと思う(各気筒間のバランスが崩れているっぽいのに、全気筒に関係する部品を換えても改善する可能性は低そう)のだが、もう自力で出来ることは残り少なくなっており、そして燃料ポンプと同じく「明らかに古く、単純に劣化している可能性は高く、効果有無は置いておいて換えること自体は妥当」で、且つ部品価格が馬鹿高いわけでもないので、この互換部品を発注してしまった。

交換実施…するも完了せず

10日ほどで部品は届いた。素っ気ない箱にポツンと部品だけが入っている。汎用の紙ペラ1枚の説明書は入っているが、読んでもしょうがないのは判っているので特に読まずに放置する。

週末に作業しようとしたが雨だったので在宅勤務の昼休みに実施する。大したことない作業なので昼休みで終わるだろうと読んだ上での実施である。

まずは燃料ポンプのリレーの配線を抜いてポンプが動かないようにした上で、何度かセルを回してエンジンを始動してパイプ内のガソリンを抜く。その後、今ついている燃圧レギュレータを外す。

燃圧レギュレータとファーストアイドルソレノイドの2つを固定しているステーのボルトを外す。続いて燃圧レギュレータに繋がっている燃料ホースを外す。簡単に書いたが、相互に干渉するのであまり単純ではない。ずっと前にエンジンルームの塗装をした際に一度外したことがあるので、ボルトはそれほど固くなかった。一度も外していない場合は少し面倒かもしれない。

ホースは問題なければ再利用してもいいのだが、端部が割れていたので換える。リターン側(下側)は、高圧がかからないので、以前購入したYOKOHAMAの0.2MPa対応のもの(ネットではインジェクション車不適格の烙印を押されている)を使う。

デリバリーパイプ側は、強引に引っ張るとデリバリーパイプが折れてしまうんじゃないかという不安があるので、パイプを押さえながら慎重に引き抜く。こちらは高圧側なので、新たに調達した日産純正ホースを使う。これはインジェクタ対応だとネットでは言われているのだが、触った感じはYOKOHAMAより柔らかく、本当にこれでいいのか若干の不安を覚える。まあ硬けりゃ良いというものでもないのだが。

ちなみに、デリバリーパイプ側に元々ついていたホースは、その不適格なYOKOHAMAの0.2MPa対応ホースであった。いつからついていたのかはわからないが、ニッパオヤジにエンジンを載せ替えてもらった時か、または自分のところに来る前(20年以上前)からだ。仮にエンジン載せ替え時だとしても、約10年、1.5万〜2万kmは走っているはずだし、それ以前だとしたら5万キロ以上ということになる。なんだ、高圧側もこのホースで全然問題ないじゃないか。

ホースをカッターで切って装着し、ステーから古い燃圧レギュレータを外し(この17mmナットが固くて少々苦労した)、新しい燃圧レギュレータをステーに取り付けようとしたところで問題発生。ナットが奥まで入らない。

このあたりがいかにも米国で売られている互換品の洗礼だ。ネジピッチが違うのか、ネジ規格が違うのか。目視レベルでは新旧部品でピッチや径にはほとんど違いは見られないのだが、入らないんだから何かが違うのだろう。この時点で強引に締め込むほどの勇気はない。

ステーや燃料ホースの取り外しに若干時間を要したこともあり、この時点で既に昼休みは時間オーバー。とはいえこのまま去って仕事に戻るのも心残りが多すぎる。とりあえず仮付けしてエンジン始動だけしてみた。

すると、エンジンはかかったもののすぐに止まってしまう。うぉー互換部品は失敗か、と一瞬狼狽えたが、外した燃料ポンプのリレーを元に戻していないだけだった。これを付けたら普通にエンジンはかかった。

片付けをしながら暫く暖気も兼ねて放置する。特に問題なく動いている。頃合いを見てアクセルを踏んでみると、以前よりもレスポンスが良くなっている気がする。鼓動感改善の期待が高まるが、残念ながら排気音は以前と何ら変わらない。まあ多分コレもいつもと同じ結果なんだろう。諦めがついたので潔く仕事に戻る。

ネジ山調整

鼓動感は解決しなかったとは言え、とにかくきちんと固定しないことにはまともに動かせない。まずは目視ではなく正確な計測が必要だ。新旧両者を正しく見比べる必要がある。

終業後、仮付けした燃圧レギュレータを外し、ホースには一応ガソリン漏れ止めとしてボルトを突っ込む。そしてネジピッチや外径を計測したが、有意な差は見られなかった。ほぼ同じである。どちらのネジ山も、M12の1.25mmピッチにしか見えない。

ただ、よく見てみると新品の方がネジ山が浅く見える。古いものはいかにも「ネジ」といった感じできっちりとした山と谷があるが、新品はなんだか山というより丘ぐらいの感じでしかない。山の高さは同じなので、谷が浅いのだ。この部品をどのように作っているのかは知る由も無いが、デッドストックを入手したような部品なので、金型廃棄寸前のダメロットだったのかもしれない。

というわけでネジ山をどうにかしてみる。本来ならダイスを使うのが正しいのかもしれないが、そんなものは持っていない。なんとなくこの部品の材質は柔らかそうなので、マイナスドライバーを使ってネジ山(というか谷)をホジってみることにした。

いかにも金型のパーティングラインっぽいところが変形しているので、そのあたりを中心にゴリゴリする。思った通り、鉄はそれほど硬くなく、ちょっとホジった程度で粉が出てくる。ホジった先は真鍮色に見えるので、めっきを削っているだけなのかもしれない。ちょっと削ってはナットを入れてみることを繰り返していると、ゴリゴリ開始前よりナットが奥に進んだ。おぉ、思った通りじゃないか。

珍しく予想が当たったので、さらにじわじわと奥の方にゴリゴリを進める。そしてゴリゴリすること30分。遂にナットは最奥部まで到達した。

こうなればもうこっちのもの…と思ったのだが、ステーに固定しようとしたら微妙な隙間があって相変わらずグラグラしていた。そこで適当なワッシャー(おそらくドレーンボルト用の銅ワッシャー)を挟むことで、遂に固定することに成功した。たかがステーに固定するだけでこんな無駄な苦労をするとは。しかし純正部品より1/6ぐらいの安さで互換品を購入した以上は文句は言わない。これは安く済ませた宿命なのだ。受け入れるしかない。

装着、そして試乗

そして翌日の昼休み、遂に部品を装着。既にホースやらクリップやらは装着済みなので、本当に燃圧レギュレータを取り付けるだけ。すぐに作業は終わる。

そして試乗も兼ねて、ちょっと遠めのスーパーまで食材の買い出しに出かけた。

下り坂や平坦路を走っているうちは、若干鼓動感がなくなったか? と思わせるほどの調子の良さを見せていたのだが、一旦上り坂を登ると途端に鼓動感が悪化する。

予想通りだが「調子は良くなったが、鼓動感は変わらない」という結果だった。調子を良くするためではなく、鼓動感解決のために部品を変えているのに、毎度毎度違う方向にばかり進化する。まあ、しつこいようだが、予想通りではある。

それだけならいつもどおりの話なのだが、今回はちょっと違う。走り出した途端に水温計が正常に動いていた。

このピアッツァの水温計は、どこが悪いのかわからないが基本的に一番下にへばりついており、夏場を除いて滅多に動かない。前回突然動いた際に「何か嫌な予感がする」と思ったら、その予感が的中してしまい、フューエルリッドのロックを壊してしまいひどい目にあった。今度は何も起こらなければいいのだが(というか、鼓動感が改善せず投資対効果が得られなかった時点で既に酷い目なんだが)。

「燃圧レギュレータ交換」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: 自分でとどめを刺したらしい | sabitori.com

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