ローダーに載せられたピアッツァを見送ってから数日後。そろそろ昼休みという頃に電話が鳴った。発信元は工場。曰く、
- インジェクタの交換は問題なく終わった
- 吹け上がりは良くなった
- しかしアイドリングは相変わらず良くない
まあ要するに「ガソリン漏れは直って普通に乗れるようになったが、鼓動感は何も変わらない」という結果だ。
最悪が「交換に失敗(交換中に何かが壊れた、互換品は使えなかった、不良品だった etc)」、最高が「交換成功により鼓動感もバッチリ改善」だとすれば、今回の結果はその中間あたりか。落ち込むような話では無いのだが、そこそこ期待感があったため、どちらかというと残念感の方が強い。
とりあえず一旦引き取る
ではどうするか、なのだが、点火系、燃料系、吸気系などの周辺部で出来ることはあらかた実施済みで、ほとんどやれることが残っていない。残念ながらエンジン本体に疑いの目を向けざるを得ない。
インジェクタ交換以前から言われていたのだが、バルブクリアランスがおかしいか、ピストンリング異常等により圧縮がおかしい気筒があるのではないか、というのが工場の見立てである。
じゃあとりあえずコンプレッションやバルブクリアランスを確認してみよう…といいたいところではあるが、これも以前からそうなのだが、あまり乗り気ではなさそうだ。こちらの工場は主に足回りやブレーキといった車体各部やエンジン周辺に関する修理を主とした認証工場であり、エンジンの中身や板金、各種チューニングやワンオフ制作といった作業は得意ではない。それでもバルブクリアランス調整が比較的簡単なロッカーアーム式のエンジンならやってくれたかもしれないが、G200Wはインナーシムなので面倒くさい部類に入る。
そんなわけで、これ以上の追加作業は依頼せずに引き取ることにした。
引き取り後の走行感
木曜日の在宅勤務終了後、バス→電車→電車→バスと乗り継いで引き取りに向かう。3回中2回の乗り換えで「乗りたかった便に目の前で逃げられた」ため、予想よりかなり遅れて工場に到着した。相変わらずなホワイト企業ぶりで、既に誰もおらず真っ暗。このところ2回続けてローダーで修理に出して終業後に引き取っており、工場の誰とも会っていないまま直っていて不思議な感じがする。
さて、緊張のエンジン始動である。前回はいきなりバッテリー上がり(実はバッテリーは問題なくてカットオフスイッチの接触不良だったのではないかと思う)を食らって焦ったが、今回はすぐにエンジンはかかった。
アクセルを軽く煽ってみると、回転具合は妙に滑らかに感じられる。とはいえ、インジェクタ交換以前も冷間時の始動直後はそこそこ滑らかで、温まるにつれて鼓動感が悪化したので、乗ってみないと何とも言えない。
本来はじっくりと暖気すべきだが、時間は既に19:30を回っており、諸事情により殆どの飯屋が20:00で閉まってしまう関係上、移動を急がざるを得ない。ローダーのニイチャンが過剰にセットした防汚用品を取っ払って運転席に乗り込む。
走り出しは軽快だった。インジェクタ交換前より吹け上がりが良くなっている。鼓動感も若干抑えられている気はするが、そう思い込みたいだけかもしれない。それ以上のことは把握しきれないまま、すぐ近くのラーメン屋「小林屋」に到着。辛うじてまだやっていた。いつもの味噌ラーメン(650円)を注文する。
この日はやけに気温が低く、夜は寒かったので、熱い味噌ラーメンは特に美味く感じられる。最近ラーメンの頻度が高いが、それでも週イチだ。問題視するレベルではない。
無事に腹は満たせた。今度こそエンジンの確認だ。
引き取り後の走行感
再度エンジンをかけてラーメン屋を出る。このあたりはひたすら平坦路なので、登り坂の鼓動感を確認すべく湘南銀河大橋へ向かう。何度か信号で停まるが、アイドリングが少々高い。インジェクタを換えてから何もしていないのだろう。吹け上がりはやはり良くなっており、思わず調子に乗ってアクセルを踏んでしまう。2000回転前後で鼓動感が発生するのは相変わらずだが、やはり以前よりは控えめになっている気はする。
そして湘南銀河大橋に到着。本来は坂の下で一旦停止してからゼロ発進した方が良いのだが、すぐ後ろに他車がいるのでそんなことはできない。法定速度を守ってダラダラ走るのが限界だ。そのままなるべくアクセルを踏まずに坂を登ると、やはり少しだけ鼓動感は小さい気はするが、出ている事自体は変わりはない。
アイドリングの調整をしたくなったので、橋を渡ったところにあるコンビニに入る。キャンプ用ヘッドライトを忘れたことを悔やみつつ、エンジンを止めてドアを開けると、点くはずのルームランプが点かない。何かおかしいと思いつつキーを捻るが、メーター周りの一切の照明が点かない。これはおかしい。とりあえずボンネットを開けて中を覗き込むと、先日取り付けたばかりのバッテリーカットオフスイッチからケーブルが落っこちていてブラブラになっていた。全く電気が来ていないのだから真っ暗になって当たり前だ。走行中に発生しなくてよかった。これはキャンプ用ヘッドライトを忘れた罰である。
今回は工具箱を降ろしてしまっていてろくな工具がないので、カットオフスイッチやアーシングケーブルといった余計なものを取っ払った上で、バッテリー端子をドライバーの柄で叩いてバッテリーに圧入する、という乱暴な手法でその場を回避する。工具箱は無くとも、せめてコンビネーションレンチぐらいは積んでおくべきだった。ついでなので、ECUをリセットしてからエンジンを始動し、その状態でアイドリングを下げて再出発する。
R129、R134と、ひたすら平坦な道を淡々と走って自宅に向かう。ECUリセットにより少し調子が良くなった気がしたのだが、間違えてATが2速に入っていただけだった。回転数が高めだと鼓動感を感じにくくなるため当然の話だ。途中で辻堂の西友に寄って食材を買い込んで心をリセットしたり、用事もないのに湘南モノレールに並走する山道を走ってみたり、趣向を変えながら状態を確認するが、印象はあまり変わらない。
平日夜の遅めの時間帯であり、道がガラガラなこともあってすぐに自宅近辺まで来てしまったのだが、まだ少々走り足りない。そのまま県道を進み、このクルマの鼓動感ベンチマークロードであるいつもの山坂道(湘南国際村へ向けて登る坂道)を走る。
ここでもやはり結果は同じ。ほんの少し良くなった気はするが、鼓動感は残っている。約20kmほど走って印象が変わらないので、こういうものなのだろう。適当に写真を撮り、さらにもう少しだけブラブラしてから帰宅する。
これからどうする?
まずは互換品インジェクタが無事に機能し、ガソリン漏れの心配もなく走れるようになったことを祝うべきだろう、とは思うのだが、鼓動感が解決しなかったことがどうしても引っかかる。悪い言い方をすれば、ただガソリン漏れが直っただけなのだ。安バーボンを呷りながらネットを彷徨いつつ今後のことを考える。
これまでの作業で多くの補機類を交換または清掃した結果、鼓動感の発生原因がエンジン本体にある確率はかなり高いと考えられる。あえて言えばディストリビュータ本体とキャップは換えていない(キャップは別の中古品にしたが)ので若干の怪しさはあるし、他にも何かしらあるかもしれないが、一般に吹け上がり不良の原因と言われている箇所はほとんどやり尽くした感があり、工場からもバルブクリアランスが気になるといったような話があったことから、エンジン本体を疑わざるを得ない。
エンジン本体の問題は幾つか想像することはできるが、せめてコンプレッションぐらいは計測してからでないと何も言えることがない。しかしコンプレッションゲージなんて持っていないし、わざわざ買うつもりもない。ここから先はもうさすがにプロの領域だろう。
上述のように、いつもの工場ではエンジン本体の整備は遠回しに遠慮されている感があるので、エンジン整備やオーバーホールを得意としている工場を探して依頼したほうが良さそうだ。とはいえ、いすゞのG型エンジンに滅法強い工場、なんていうものが2021年時点で存在しているわけがなく、比較的古典的なエンジンに対応できる修理工場やチューニングショップ等を探して相談してみることになるだろう。
当然ながら懸念されるのは部品状況で、とりあえずバルブクリアランス調整用シムを調べたところ、モノタロウではたった1つしかヒットしなかった。他車用流用またはワンオフ制作は避けられなさそうだ。仮にピストン周りが駄目だとするともっと問題だ。G200Z(SOHC)用なら辛うじて海外にあるが、日本国内専用品のG200Wは絶望的だ。流用可否なんて自分には勿論わからない。
今すぐ修理に出さなければならないほど深刻な状態でないので、もう少し考えることにする。
逆じゃね?
翌日の昼間に、インジェクタの取り付け状況を確認した。素っ気ない互換品だが、新品は気分が良い。
1年前に取り付けたカプラーのゴムブーツが早くも破れているのはご愛嬌。一応カプラー自体が防水仕様であり、ゴムブーツは気分的なものとしてつけているだけなので不問とする。
その佇まいを眺めているうちに一つ気付いた。4番のインジェクタ、交換前と逆向きに付いていないか?
こんなのどっち向きでも関係無いだろうけど、どこかと干渉してカプラーが外れなくなったりしないだろうな…?
というわけで一応カプラーを抜いてみたところ、以前より狭いため少々外しにくいが、脱着自体は特に問題なかった。というわけで、どうでもいいものとして放置確定とする。
強引に外したバッテリー関連のケーブルを元に戻し、簡単に外れないようにプラハンで叩き込んで、今回の作業は終了となった。
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