(つづき)
まあそんなわけで、もう自宅まで数分だし、道もガラガラだし、かなり気が抜けた状態でR134を大した速度も出さずにダラダラと走っていた。そこに急に左前方から「バコン!!」という轟音が発せられた。
最初に思ったのは「何か踏んだ?」だった。1ヶ月ぐらい前に江ノ島あたりでKで何かしら踏んでビックリした記憶が強かったので。
しかし、これはそんなもんじゃなさそうだ。まず左前方が明らかに下がっている。そしてガーっと凄い音がする。ハンドル操作もほぼ無理で、速度は落ちる一方。
次に思い出したのは、15年前に嬬恋パノラマラインでK1100RSのリヤサスが外れた時のこと。あの時は完全に操縦不能になり、リヤタイヤがリヤのインナーフェンダーに擦れまくって急激に減速して停まった。今回もそれに近い。
それかタイヤがバーストしたか。でもちょっと音が違うか。
とにかくタイヤより先に金属部分が接地しているのは間違いない。
クルマやバイクで何かやらかしたことがある人はわかるだろうけど、こういう時は妙に世界がスローモーションになり、考えがあちこちに及ぶ。普段の仕事でこのぐらい頭が働けばいいのに。
実質何もできないまま、ピアッツァはその場で不動状態になった。幸いなことに直後に他車はいなかった。まずハザードランプを点け、ハッチゲートオープナーを引き、後方を確認して外に出て、ハッチゲートを開けて三角表示板を出す。たまたま工具が自宅にある状態なので、荷室に邪魔なものがなく出しやすい。組み立てた三角表示板をピアッツァから数メートル離れたところに置く。
左前タイヤ辺りを見てみると、わかっちゃいるけど車高が落ちまくっている。タイヤがフェンダーの中に完全に入ってしまっている。下から覗いてみると、ロアアームがほぼ接地した状態になっている。何かが外れてこうなっちゃったのだろう。
どうにもならないのは明白なので助けを呼ばなければならない。その前に一応警察に電話をかける。110番に対してすぐに反応はあったものの、困ったことにBluetoothがカーステレオのアダプターと接続状態になっていて通話できない。仕方がないのでいったん通話を切り、Bluetoothをオフにしたところで先方から入電。
車両故障で身動きがとれなくなり、R134を塞いでしまっていることを告げる。偶然ながら左に寄っており、交通量も少ないので、交通的には致命的な状態にはなっていない等の話をする。管轄の警察が向かうとのことで話は終わる。
次いでJAFに連絡する。サスペンション周りの故障で自走不可能につき、ローダーではなくレッカーでの救助を依頼する。こちらへの到着は23時頃になるとのこと。今は20時半をすぎたところなので、あと2時間半待つのか。長いな。しょうがないけど。
外でボケーとしていると警察が来た。何しろ動かすことができないので警察も勿論何もできない。これが交通整理が必要な状況だったら何かしてくれたのかもしれないけど、そこまでの状況でもない。パトカーの赤灯が目立っている間に運転席ドアポケットからエーモンの非常信号灯を出し、三角表示板の前に立てる。これで警察的には満足したのか、あとはJAFとよろしくやってください、ということになって去ってしまった。
やれることはやったのであとは待つだけ…なんだけど、さすがに2時間半は長い。とりあえず家族へ連絡を入れ、たぶん帰りは相当遅くなるであろうことを告げる。Twitterに淡々としたつぶやきを投げ、さてこれからどうすりゃいいんだと途方に暮れる。
突然左前からバコンという音
→地面をガリガリと金属音
→何とか左に寄せたけどこれが限界
→警察に連絡
→JAFに連絡、到着予定23時
→パトカー到着、三角表示板もあるし交通量も少ないので交通整理不要と判断される
→ボケーと待つ pic.twitter.com/56HHvtyxBg— m.sota (@msota_RS) November 29, 2025
JAFの人は、時間も時間なので工場はやっていないだろうから、いったん自宅に持って行って翌日二次搬送することも可能、と言ってくれたけど、自宅はレッカーで引いた状態で行けるような場所じゃない。こんな時間に連絡がとれる工場なんて多分無いだろうから、どっかの工場の前に勝手に置いて帰るぐらいしかないんじゃなかろうか。
そんなことをボケーと考えていると横浜方面から入電。状況からしてボールジョイントがどうにかなったんじゃないですかねえ、なんて話をする。これからどうすんの、といった話になり、何度か板金修理に出したことがあるハトリックスに持って行ったらどうか、という話になる。普通の工場はこんな時間は勿論やっていないし連絡不能なんだけど、ハトリックスなら連絡が取れる可能性がある。いったん交渉を依頼して電話を切る。
次いで長野方面からも入電。やっぱりボールジョイントかねえ、という話になる。今回のギシギシ音の作業でその辺りを触ったなら、ネジが緩んでどうこうという話も考えられるけど、何もしていないとのことなのでその線も無さそう。JAFではなく任意保険のレッカーが距離無制限なら長野まで持って行っても…なんていう話にもなったけど、残念ながら120kmまでだった。何かわかったら連絡を入れるということでいったん終わる。
そして再度横浜方面から入電。ハトリックスからOKが出たとのこと。直通連絡先を入手したので直接連絡をとり、JAFの作業が終わって時間などの見通しが立ったところで再度連絡することになった。
そんなわけで、一番肝心なところは自分では何もできなかったものの、みなさんの支援により窮地を脱出できる見通しがたった。ありがたいことだ。
そもそも、左フロントがこんな状態になったというのに、ロアアームが削れた(と思われる)以外に致命的な損傷は無さそうだというのは、まさに不幸中の幸いだ。これが籠坂峠の下り坂だったりしたら目も当てられない。間違いなく大破して再起不能になっていただろう。
こうなると本当にただ待つだけになる。よりによってラーメンを食わなかった時にこんな事態になってしまった。さすがにじわじわと腹が減ってきた。今ここにあるものは土産用の菓子類、ほうとうの生麺、酒、ビール。あとは小腹減り対策として旅行時に常備しているコーヒービートと、早朝に入れた紅茶。周辺にコンビニのような都合のいいものはない。土産や酒に手を出すわけにはいかないので、コーヒービートと紅茶でこの場を凌ぐ。
何もすることがないので、国道上に佇むピアッツァを外から眺めたり、適当にツイートしたりする。
各所からの支援により港北の工場に持ち込ませていただくことに決定。あの〜予定はいくらでも早まっていいんですよJAFさん。 pic.twitter.com/c4KKlLccZI
— m.sota (@msota_RS) November 29, 2025
50mぐらい離れたところからの見え具合を確認してみた。たしかに危険性は少なそうで、警察が帰ってしまうのもわかる。 pic.twitter.com/OTlwv9mV1m
— m.sota (@msota_RS) November 29, 2025
ここからガリガリした跡が始まっている。30mぐらいか。 pic.twitter.com/sQAUmfb8F2
— m.sota (@msota_RS) November 29, 2025
それでもまだまだ時間は余りまくっている。どうしようもないのでDAZNでサッカーのJ2最終節を見たりしていると、ようやくJAFがやってきた。
おそらく20代後半ぐらいと思われる隊員さんは、状況を見て手際よく準備を始める。まずはジャッキアップして故障箇所を確認する。フロント側はジャッキが入らないほど車高が落ちていたので一旦リヤ側を上げ、次いでフロントを上げ、さらにホイールを外す。
案の定ナックルがプラプラしている。予想通り、ロア側のボールジョイント周りの損傷だ。どうやらボールが抜けてしまったようだ。
普通だったら左右のフロントタイヤを下から持ち上げてレッカーをするところだけど、今回はこの状況なので、下手に持ち上げるとタイヤがフロントフェンダーに当たり、フェンダーを損傷する可能性がある。そのためロアアームを持ち上げる方向でやってみることになった。
そして、搬送先のハトリックスまでは30km以上あり、そうなるとJAFの無料範囲(20km)を超えてしまうので、任意保険会社に連絡した方が良いとのこと。自分は保険会社への連絡、隊員さんは作業と二手に別れて進める。
困ったことに任意保険証券のコピーが見つからないので、ネットで保険会社の契約者サイトにログインして連絡をとった。今回は特別に対応するけど、次回からはJAFより先に保険会社に連絡して欲しいとのこと。何も考えずに条件反射でJAFに連絡してしまったが間違いだったか。
保険会社関連は終わったけど、レッカー作業が一筋縄ではいかないようだ。カニの爪のようなアタッチメントを何かしらに噛ませることで持ち上げ&固定したいところだけど、そのカニの爪が入る場所がない。牽引フックのところを持ち上げたいところだけど、今のレッカーにはそのための道具がないらしい。カニの爪をあそこに、ここに、こっちに、と色々やってみたものの、どれもうまくいかない。
時間だけがどんどん過ぎていく。隊員さんも困り果てている。俺は何もできないので、隊員さんが「じゃあ今度はこれでやってみていいでしょうか?」に、はいと答えるだけ。
色々やってみたけど、ロアアーム方式は結局固定する手段がなく断念。フェンダーの損傷は覚悟の上で、ホイールを装着し、ボールジョイントは放置したまま普通に持ち上げる方針とした。
恐る恐る持ち上げてみると、懸念していたフロントフェンダーへの食い込みは発生しない。これならイケそうだ。結局これが一番良かったのか〜、随分遠回りしてしまいましたね〜、なんて話しながらホイールの固定、リヤ側の対応などを進める。
ようやく作業が終わりそうだ。2時間近くかかったけど仕方がない。文句などあろうはずがない。JAFのレッカー車は高速道路は走れず、かつ狭い道も走れないため、藤沢方面まで出て大回りして港北に向かうとのこと。自分は荷物を持って歩いて帰宅し、自家用車でハトリックスに向かう。別に行かなくてもいいと言ってくれたし、実際何もできないけどそうもいかない。
帰宅後、そそくさとカップ焼きそばを食って自家用車で出発した。深夜もいいところなので道は空いている。途中のコンビニで缶珈琲を買ってハトリックスに向かう。レッカーはひと足先に到着していた。
隊員さんとハトリックスの社長に礼を言いつつ珈琲を渡す。今後の対応として、今回壊れた左ロア側のみならず、上下左右4箇所のボールジョイントを全て純正新品に交換する方向でお願いした。過剰反応な気もしないでもないけど、今回こんな事態になったにもかかわらず大事に至らずに済み、ここまでの搬送もJAFの会費と任意保険のサービスの範囲内で0円で済んだのだから、そのぐらいは投資すべきだと考えた。その分工賃も増えてハトリックスの売り上げにつながるだろう。
さて、あとは帰るだけ。ひと段落したのでドッと疲れがくる。そもそも今朝は5時起きだったので、30分の仮眠を除けば22時間ぐらい起きつづけている。そりゃ疲れるはずだ。ガムと珈琲を補給しながら帰宅した。
無事帰宅。
いや〜長い1日だったな。
風呂入って酒飲んで寝る。— m.sota (@msota_RS) November 29, 2025
翌朝は自治会の大掃除だけど、申し訳ないけどサボらせていただくことにして爆睡した。












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