AUTOMOBILE COUNCIL 2025

2025年1月23日。衝撃的なニュースが一部界隈に轟いた。

十字野郎(Giorgetto Giugiaro氏のことを、我々は随分前から色々な思いを込めてこう表記している。少なくとも小馬鹿にしているわけではない。その意図は示す気はない)が来日すること自体は、まああり得ることだとは思うが、今回は一般向けにトークショーをするというではないか。

ピアッツァに限らず十字野郎デザインのクルマに乗る者、乗っていなくてもクルマのデザインや工業デザインを志す者であれば、誰もが何らかの影響を受けているであろう十字野郎。一言で言ってしまえば我々のアイドルだ。それが公衆の面前に現れるというのだ。万難を排して行かないわけにいかないではないか。

ただ、そもそもAUTOMOBILE COUNCILって何?という素朴な疑問が湧く。サイトの開催概要を見るとこんな感じだ。

基本的には一般的なクルマやバイクのイベントとさほど変わらないように見えるが、入場料やイベント内容(アートやら音楽やら、クルマとは直接関係ないものがある)を見る限り、富裕層狙いなイベントのように見受けられる。そのせいか、一般的なクルマイベントの倍ぐらいの入場料をとっている。自動車趣味者の底辺に位置する自分とはあんまり親和性がなさそうだ。普通だったらこのようなイベントには行かないだろう。

しかし、十字野郎をこの目にすることができ、生声を聞くこともできるというなら、入場料なんて、もはやどうでもいいものになってしまう。御年86歳の十字野郎が次に来日して一般人の前に姿を表すことなどまず期待できない。この機会を逃せば二度と目にすることはできないだろうし、仮に逃そうものなら死ぬまで後悔するに違いない。

とはいえ、肝心のトークショーの日程がよくわからない。そこでネット上を徘徊していると、如何にも関係者らしき方のPostで、2025/04/11および12だということがわかった。

というわけで、こうなる。

ちなみにこの駐車場付きチケット、早々に無くなってしまうかもしれないと考えて焦って購入したが、開催直前まで150台の枠が埋まることはなかった。

というわけでチケットは購入した。当日までに何か準備することは…特にない。錆取りをしたり修理したりするモチベーションは上がったが、特に何もできることはない。

2025/04/11(前日)

このイベントは2025/04/11〜13の3日間だが、11日は関係者向け限定公開、12日と13日が一般向け、ということになっている。

その11日の関係者向け公開日の様子がちょろちょろと流れてきた。どうやら十字野郎のトークショーは無事開催されたようだが、観覧者が座れるエリアはさほど広くないことがわかる。

公開済みのプログラムによるとトークショーは10:30開始ということになっている。入場開始は10:00なので、入場早々に場所を確保しなければならないようだ。

その他のPostで、Asso di fioriに十字野郎がサインを書いた等、興味深いものがいくつかあった。それも含め、明日全てを目の当たりにすることになる。

ざっと予習をして、本番に備えてさっさと寝た。

2025/04/12(当日) 入場前

開催当日はピアッツァ乗りで示し合わせて隊列をなして駐車場に乗り込むことになっている。そのため、8:30頃に海浜幕張駅近くの所定の場所に集まる予定だ。

というわけで朝っぱらから幕張方面に向かう。近いようで遠い場所だ。金持ちなら逗子からさっさと横横に乗って湾岸線をかっ飛ばして行くところだが、既に入場料で大枚を支払っており余裕はない。そのためケチって下道で行く。途中の大黒埠頭あたりで軽く撮影会をする。

さすがにこの先も全部下道というのはキツい。大黒から首都高湾岸線に乗る。その後は普通に進むが、せっかく都心湾岸部に来ているので、以前何度か来たコンテナエリアで撮影会をすべく湾岸環八で降りる。そして経路を確認すると、困ったことがわかる。時間を読み違っていたようで、撮影会をしているほどの時間的余裕はなさそうだ。仕方がないのでそのままR357を幕張方面に向かって東進する。

これが結果オーライだったようで、ちょうどその頃首都高湾岸線で事故があり、事故渋滞が発生していた。特に意図したわけではなかったが事故渋滞を避けられた。そのまま淡々とR357を進み、ギリギリ集合時間に所定の場所に到着した。

ズラッと並ぶピアッツァ

そして駐車場に入場する。比較的早い段階で入ったため、無事にピアッツァ20台弱を並べることに成功した。

その後もちょろちょろと駐車場への入場車はあるが、ピアッツァのように同一車種が群をなしているようなことはない。SVXが数台いた程度だ。十字野郎デザインのクルマはそれなりにあるはずなのに、こういう行動を取るのがピアッツァオーナーだけだというのは少々意外だった。

そんなわけで並べただけである程度の満足感が得られてしまうが、これはあくまで前振り。本番はこれからだ。

入場〜トークショー開始待ち

前述の通り、トークショーは10:30開始で、さほど多くない座席の椅子取りゲームが勃発すると予想される。それに勝つためには、極力早く入場する以外にないが、駐車場に長居しすぎてしまい、入場列への並びに出遅れてしまった。これは迂闊だった。

クソっ俺としたことが…

30分ほど待って入場開始。エスカレーターをそそくさと降り、ダラダラ歩いている他入場者を尻目に、トークショー会場のセンターエリアを目指してダッシュする。既にある程度席は埋まっているがまだ空きはあった。辛うじて座る場所を確保できた。スタンディングエリア最前列の方が撮影はしやすいかもしれないが、1時間立ちっぱなしはさすがに疲れる。座れる方を優先すべきだろう。

まだトークショー開始までは30分近く時間があるが、それ以外の展示はあとでいくらでも見られる。十字野郎が座る場所との距離感を確認の上、カメラの設定を確認したりしながら時間を潰す。距離的には、今回持参したNIKKOR Z 24-200でいけそうだ。

本日のアジェンダ

動画撮影は禁止だが、写真撮影と録音は可能と認識した

十字野郎トークショー

待ち時間は案外早く過ぎ、遂にトークショー開始時刻となった。十字野郎はどこから来るのか、まさか空から降ってきたりしないだろうな、とかふざけたことを考えていたが、普通に裏から現れた。我々にとっての神が降臨した瞬間だ。

グラサン姿で登場

普通の眼鏡に付け替えた(十字野郎デザインかは不明)

トークショーは前日に続いて二日連続開催だが、前日は幼少期からデザイナーになるまで、本日はデザイナーになってから、というテーマになっている。司会の方が質問という形で問いかけ、それに十字野郎が答える形だ。

十字野郎の声は、随分前に某TV番組で見聞きしたことがあるので、全くの初めてというわけではないが、マイクを通してはいるものの肉声だ。それが聞こえているだけで感動モノで、もはや中身はどうでも良い(といっては言い過ぎだが)。勝手に想像するイタリア人のイメージそのもので饒舌に語ってくれている。ただ、かなりハスキーな声で、これから1時間大丈夫なんだろうかと余計な心配をしてしまう。

饒舌に語る十字野郎

身振り手振りを交えて語る

元いすゞの中村史郎氏から渡された書籍をめくる十字野郎

それを見ながら熱く語る十字野郎

途中で息子のファブリツィオが現れるというサプライズも含め、あっという間に1時間が過ぎた。トークショーは終了となった。至福の1時間であった。

おつかれさまでした。ありがとうございました。

十字野郎サイン入りAsso di fiori

本日の最大の目的を開始早々に終え、抜け殻になりそうだった自分を奮い立たせてAsso di fioriの展示に向かう。2003年の岡崎、2021年のISUZU PLAZA以来、三度目の対面となる。

久しぶりだな

まあまあ妥当な説明だろう。

事前の情報の通り、十字野郎のサインがボンネット左フロント部に入れられていた。

見慣れた十字野郎のサイン

サインの筆跡が以前から見ているのものと同じで、かつ非常にしっかりしていることに感嘆する。

過去2回(岡崎とISUZU PLAZA)に比べて接近できないし、内装もよく見えないので、サイン以外はさほど見るべきものはないとわかってはいるが、なんだかんだで見入ってしまう。

その他の展示

Asso di fiori以外にも、BMW M1、マセラティ・メラク、アズテック等、多くの十字野郎デザイン車が展示されている。それに加えて、世界初公開のバンディーニ・ドーラもある(恥ずかしながら初めて存在を知った)。どれもどこかしら通じるものがあるのが面白い。

十字野郎コーナー以外では、田宮ブースにあるタイレルF1、ストラトス・ゼロ、マツダブースにある十字野郎デザインのS8P等が目を引く。その他の展示はどうでもいい…とまでは言わないが、どうしても十字野郎御大降臨のインパクトが大き過ぎて、それ以外のナニカへの興味が薄れてしまう。

幕張メッセ内の食堂で少々お高い昼飯を食い、各ブースの展示を眺めたりしていたが、帰宅時間のことも考慮して若干早めの15:30頃に会場を後にした。

帰路の寄り道

往路に行きそびれたコンテナエリアに立ち寄った。朝イチの晴天ではなく、既に日がそこそこ傾いている夕方なので、どうしても薄暗い写真が多めになっていまう。出発が30分遅かったのが失敗だった。

往路と同じく首都高湾岸線はケチって大黒で降りたので、同じ場所に行ってみた。青空ではないので多少雰囲気は変わる。

途中のスーパーで買い出しをして帰宅した。事前・事後はどうでもいいとして、素晴らしい1日だった。関係者の皆様ありがとうございました。