9月21日は珍しく丸1日自由時間となった。大抵の場合は夕方までに帰宅しないといけないけど、この日はそれがない。せっかくなので遠出を決め込んで行き先を考えてみた。
費用のことを考えると、ツーリングプランがある中央道で長野方面になるけど、あちら方面には最近何度も行っていて新鮮味がない。そこで15年前にやらかして無念の撤退を強いられたつまごいパノラマラインを走ることにした。
さらについでに国道最高標高地点の渋峠、と言いたいところだけど、日帰りでそこまで行こうとすると高速道路の割合が増えすぎて面白くない。火山活動のせいで通行止め区間があるのが痛い。パノラマライン周辺の、行ったことがないスポットを訪問することも考えたものの、せっかく気候的に良い時期なのでビーナスラインも走りたいという欲が出てしまい、ビーナスラインとパノラマラインをハシゴすることにした。
若干出遅れて5:00過ぎに出発した。諏訪南ICまで高速道路なので最初から延長スクリーンを装着しておいた。
少しだけ道路代をケチって寒川南ICから圏央道に乗る。厚木PAでWC休憩をして、その後は八ヶ岳PAまで無停車で走る。127kmなので大した距離じゃない。問題は距離ではなく霧だ。走行に支障があるほどじゃないけど景色がろくに見えない。音楽を聴きながら淡々と走り続けた。
諏訪南ICで降り、すぐそばのGSで給油。長野県のガソリン代は相変わらず高い。八ヶ岳ズームラインとエコーラインを経てビーナスラインに向かう。
ビーナスラインを少しだけ走って蓼科湖の道の駅で防寒のためインナージャケットを着込む。さすが日曜のビーナスライン、変なバイクとクルマが多くてフツーのミニバンが肩身狭そうにしている。悪い気分じゃない。
着替えを終えてさっさと道の駅を出てビーナスラインを走る。この区間を走るのは相当久しぶりだと思われる。いつ以来なのか思い出せない。途中でビーナスラインから外れてロープウェイの駅がある場所に向かう。以前は横岳とかピラタスとかいう名前だった気がするけど、今は北八ヶ岳ロープウェイと名乗っている。八ヶ岳から随分遠いのになんでわざわざ北八ヶ岳なんて名乗るんだろう、と思って調べてみたら、このへん一帯の山々をそう呼ぶらしい。勉強になった。
なんでわざわざこんなところに来るかというと、以前ISUZU MLの全国オフで何度かやってきた思い出深い場所だから、というのと、単純に景色が良いから。しかしガンガン登っているうちにどんどん霧が濃くなり、それは頂上まで来ても変わらなかった。
懐かしい場所ではあったけど、残念ながら景観的には期待外れだった。とっとと降りてビーナスラインに戻る。この区間は林間道路が多く、路面も濡れ気味だ。
女神湖から白樺湖へ降り、車山方面へ向かう。林間ルートは終わり草原エリアに入る。天気は若干雲が多めの晴れ。高原らしく涼しい。これは快適だ。
ここから車山・霧ヶ峰あたりはビーナスラインの景観的なメッカといった場所なので交通量も多く、走るという点では大して面白くないが、景色は素晴らしいのでキョロキョロしながら走る。
霧ヶ峰からはそのまま美ヶ原に向かわず、茅野方面に少し降りる。このマイナー県道が良いことは5年前に走ってわかっている。
さていよいよ美ヶ原へ向かう。ここから先は景観より走り重視な区間…なんだけどそこは日曜日、交通量が多すぎてあまり楽しめない。わかっていたことなので諦めて淡々と走る。それは予想通りなのでいいとして、和田峠あたりから急に雲行きが悪くなるのは予想外だった。霧がどんどん濃くなり、霧雨、小雨と悪化していく。それにつれて車の流れも悪くなり速度がどんどん落ちていく。もちろん気温も下がる。寒い・濡れる・トロい・何も見えない、の四重苦にただひたすら耐えるだけの時間が続き、気づいたら美ヶ原高原美術館の駐車場に着いていた。
道の駅というか美術館の売店というか、いろいろ売っているところで土産物と軽食のカレーパンを買う。いい感じのTシャツを2400円でゲットできたことが救いだ。来た甲斐があったということにしておく。
ちょっと待ったら霧が晴れるとは思えないのでさっさと山を下る。相変わらずダラダラしたビーナスラインを戻り、和田峠で県道にそれる。山を下るにつれて霧が少なくなっていく。和田宿本陣の前のコスモスが綺麗だったのでなんとなくそこで停まり、買ってきたカレーパンを立ち食いした。
ここからパノラマラインまでは、強引な計画を立てたために発生した「淡々走行区間」だ。とはいえ、その手前の湯の丸高原はまあまあ良いので無駄ではない。そして、モリタ氏推奨のチェリーパークラインにも行ってみる。よく参考にさせていただいているこちらのサイトでも紹介されているので、良い道に違いない。
WCのために立科の道の駅に寄ったりしつつ東信地区の田舎国道・県道を走る。あんまり来ないエリアなのになんとなく懐かしい感じがするのは、田んぼ・大きな家・たまに現れる寺社仏閣などが作り出す典型的な日本の田舎な風景だからだろうか。
長和町、立科町を抜けて東御市に入ると少し都会感が出てくる。R18をまたいで浅間サンラインを東に走る。この道は悪くないけど交通量が多めだ。そして途中で曲がってチェリーパークラインに入る。この道はとにかく峠までひたすら登り続けるピストン道路だ。その先もあるけどダートらしいので実質ピストンだ。
そのチェリーパークラインは、途中まではほぼ景観が開けず、タイトターンも多い、走りに徹する類の道だ。登り切ったところに超有名な何かがあるわけでもないので交通量も少ない。路面は良くも悪くもなく普通。新緑だったり紅葉だったりすると良いのかもしれないけど、夏の終わりの深緑の葉っぱだと少々趣に欠ける。そんな道をひたすら登り続け、あと少しで頂上、というところでいきなり視界が開ける。
ここに来るまでは若干のビミョー感があったが、それを吹き飛ばす景色だ。こんなのが見られるなら、そりゃ推奨したくなるでしょうよ。
この先には高峰高原ホテル、ビジターセンターがあり、このあたりでUターンとなる。さらに奥のダートの先には高峰温泉があり、ストリートビューを見るとバス停が写っているので、ダートとは言っても酷道ではなくフラットダートのようだ。Kじゃまったく行く気になれないけど、オフ車で景色を眺めながらダートを走って温泉に浸かるのも悪くないだろう。そんなことができるのは何年先なのかは知ったことではないけど。
今日はクソ重いKなのでさっさと来た道を戻る。ついさっき見たあの景色を見ながらの山下りは爽快だ。とはいえ爽快なのは最初だけで、あとは景観が開けない中をひたすら下るだけ。ただ、登りとは違って勝手がわかっているし、何故か上りよりは閉塞感がないのでなかなか楽しい。Kみたいな重いバイクだと、上りは楽しくても下りは楽しめないことが多いけど、この道は珍しく逆だった。
ふたたび浅間サンラインに戻り、湯の丸高原に向かう途中の道の駅雷電で、雷電という名前のビールを買う。なんで東御市なのに雷電なんていう名前なのかと思ったら大相撲力士の雷電の生誕地なんだそうだ。最近は由来がよくわからない、ふんわりした名前の道の駅が多い気がするけど、こういうのは悪くないな。
ちょっと進んだところを右折して湯の丸高原に向かう。チェリーパークラインに比べると全体的にゆるやかで走りやすい。楽しく走っているうちに頂上に着く。奥の方にキャンプ場がある。ここはK100RSに乗っていた頃にキャンプをしに来たものの、既に暗くなりかけていてキャンプ場を見つけられず、どうしようもないので勝手に林の中にテントを張った懐かしい場所だ。
湯の丸高原自体には特に用はないので先に進む。すると妙に整った峠道が現れた。確かここは勝手キャンプをした時はショボい1車線道路、15年前にやらかした時は工事中だった気がするけど、こんな綺麗になっていたとは。
大して車も通らないのになんでこんなに投資したのかさっぱりわからないけど、まあそんなのは気にしてもしょうがない。この先もいい感じの田舎道を快走し、気がついたらパノラマラインの南ルートに合流していた。
R144をまたいで、パノラマライン北ルートに入る。ここからが本日のメインイベントだ。ようやく15年前のリベンジの時間だ。ビーナスラインもチェリーパークラインも湯の丸高原も、どれもこれも全部前座だ。随分長い前座だったな。もうちょっとで日が暮れるぞ。
意気揚々とパノラマラインを進む。R144から入ってすぐのところでリヤサスが外れた記憶があるけど、自分がこうだったと思っている光景が見当たらない。とにかくものすごく暑かった記憶があるので、脳内で勝手に道脇の木々が何もない状態に変化してしまったみたいだけど、実際には木が生い茂っていて、全然記憶と合致しない。15年も経つと記憶なんてなんの役にも立たない。結局「ここだ」という場所を見つけられないまま「愛妻の丘」に着いてしまった。
ここ愛妻の丘も、以前(15年前はJAFによる救助後にここまで走り、不安があるのでここで諦めて戻った…はず)来た時は何にもないただの丘だった気がしたけど、今となっては随分観光地化してしまっている。
例の場所がわからないのは気持ち悪いので、愛妻の丘からR144方面に戻る。途中で良い景色の場所があったので寄り道する。
どうにかして記憶と目の前の景色を紐付けようとしながらゆっくり走ったものの、やっぱりイマイチはっきりしない。R144の交差点に着いてしまったのでそこでUターンし、まあ敢えていうならここかなあ、という場所で停める。
15年前にやらかした場所を正常な状態でしれっと通過する、というのが今回の最大の目標だったので、それを達成した、ということにしておく。
というわけで一定の満足感を得たので、あとはパノラマラインを普通に楽しむ。とはいえ、だいぶ日が傾いてきているので、あんまり余裕はない。
走っていると目の前に虹が現れたので適当に停める。
楽しかったパノラマラインも終わってしまった。時間は既に17:00。時間があったら逆方向にも走りたいところだったけど、さすがに余裕があるとは言い難い時間になってしまった。
この先の選択肢は2つ。渋川方面に出て関越道で帰るか、軽井沢に出て上信越道+関越道で帰るか。寒くなかったら軽井沢という手もあるけど、これから軽井沢に行くのはちょっと寒そうだし、周りが暗くて残念感が強そうな気がした。そのため、淡々と国道を走って渋川を目指す。生活道路なので交通量が多めだけど、八ッ場ダム建設の関係で高規格のバイパスがちょいちょい現れるので平均速度は高めだ。
1時間以上淡々と走り続けて飽きてきたので、だだっ広いコンビニ駐車場の隅っこに停める。昼飯もショボかったし、だいぶ腹が減ってきた。渋川市街地も近いので何かあるだろうと地図を見てみると、すぐ近くにこのあたりのローカルラーメンチェーン店「おおぎや」があるようだ。ローカルチェーンという言葉に強く惹かれてしまう俺は迷うことなくそこを目指すことにした。10分ほどでおおぎや渋川店に着いた。
テーブル席は家族連れで半分ぐらい埋まっていたが、さほど混んではいなかった。特に誰に案内されるでもなく、適当にカウンターに座る。この店の売りは味噌ラーメンらしいので、それを頼む。さほど待たずして出てきた。
味の方はというと、チェーン店らしい無難な味噌ラーメンで、寒い場所だからか若干辛味が強いかなあと感じられる以外は、さほど特徴はない。まあそれがローカルチェーンというものなのでなんの問題もない。満足して店を出る。
帰路に着く前にスーパーに寄りたいので探してみると、ちょっと離れたところにツルヤがあった。なんだよ、長野県にしかないと思っていたら群馬にもあるのかよ。まあ今日は半分以上長野だったからツルヤでいいか。というわけで駒寄スマートIC近くのツルヤ吉岡店に向かう。
そこまでの道は、北関東らしくやたらとだだっ広くて、店舗があるエリア以外は真っ暗。そしてツルヤ周辺はヤマダ電機やジョイフル本田などの巨大店舗が並んでいて、これもまたいかにも北関東。予期しないところで北関東感を味わえて満足感が高まる。たった11ヶ月だけど栃木県民だったので、北関東感はそれなりに馴染みがあるんですよ。
ツルヤ自体はいつものツルヤで、毎度お馴染みの土産物をいくつか買う。群馬の地酒がないかと思って見てみたけど、そこはあまり力を入れていないようで、いつものツルヤオリジナルの長野の酒の方が種類が多い。今回は東信エリアがメインだったので佐久の地酒を買う。
さて、あとは帰るだけとなった。近くにGSがなかったので少し離れたところまで走って給油し、またツルヤ周辺まで戻り、駒寄PAのスマートICから関越道に乗った。その時点で既に20:00過ぎ。藤岡や花園あたりの渋滞を気にするような時間ではなくなっていた。高坂SA、厚木PAの2ストップで往路と同じく寒川南ICまで走り、こんな時間でも混んでいる柳島のGSで給油し、ガラガラのR134を通って帰宅した。朝5:00過ぎに出て23:00の帰宅。走行距離は673km。それなりに走ったな。
6月あたりからやたらと暑い日が続き、最近はずっと暑さやエンジンの熱との戦いに終始してしまっていてツーリング自体を楽しめないことが続いていたが、9月中旬の信州方面はようやく暑さが和らいでおり、久しぶりに普通にツーリングをすることができた。暑いとわかっている時期に無理矢理出かけてもあんまり良いことはないと思い直した。来年の夏はどのぐらい暑いのかはわからないけど、どうしてもバイクに乗りたくなったら原チャリの出番を増やした方がよっぽど楽しいだろう。バイクに適切な気温を選ぶのは大事なことだ。
今回は元々若干無理目な計画で、もし時間があったら他にも行きたいところはいくつもあったけど、そのほとんどが行けずに終わった。まあそうなるだろうと予想していたので、そんなもんだよな、という感覚だ。パノラマラインをはじめとして、かなり久しぶりに群馬県を走ったけど、両側の長野県や栃木県とは微妙に違う何かがあった。関越道メインのツーリングプランがないので、費用のことを考えるとどうしても遠慮しがちになってしまうけど、二輪車定率割引を使えば大きく変わるわけでもないので、土日に時間があればまた行ってみてもいいんじゃないかと思い直した。