センターコンソール合皮張替え

前置き

JR130のセンターコンソールは、入手当初からボロクソで、早々にダッシュボードともども合皮で覆い隠す仕様にしてしまっていた。その合皮も当初施工から約10年後に一度張り替えており、現在の合皮内装は2代目である。

ちなみに、入手時点のセンターコンソールのボロクソさは只者ではなく、三段だったものの一段を切り取って強引に2DIN化したくせに、実際にはショボい三菱純正1DINだけが入っていて上下スカスカでマルチドライブモニタすら無いという、どうしようもない状態だった。

合皮2代目のダッシュボードや内張りには特に問題は見られないのだが、センターコンソールについては元々初代に比べて出来が悪く、やり直したいと思っていた。初代の両面テープが早々に剥がれてしまったことを踏まえて構成を変えてみたものの、やはり早々に剥がれてしまい、メンディングテープで誤魔化したまま10年近く経っていた。比較的目につく場所なのでやり直したくてしょうがなかった場所とも言える。

初代、2代目ともに基本的には両面テープを駆使して作成していたのだが、その粘度では強度的に無理があり、きちんとやろうとしたら針と糸で縫製しないとどうにもならないということは薄々わかっていた。直角に近い角度で曲がっている箇所があるため、両面テープごときでは対抗できないのだ。すぐに剥がれてしまってみすぼらしくなってしまう。

とはいえ、DIY関連の小細工はそれなりに得意としている自分でも、縫い物は守備範囲外だ。そのため長年一歩踏み出せずにいたのだが、エンジンの復活等もあり、徐々に張り替え欲が高まってきた。ずっと避けてきたのだが、そろそろ覚悟を決めて縫製にトライすべきだろう。

なお、今回のこの決断の背景にはこちらのサイトにある素晴らしいプロの作業がある。これはおそらく数十万は下らない仕事だろうし、自分の素人作業では到底そのレベルには至らないのは判りきっているのだが、縫製を避けていてはその入口にさえ行けないということもまた明確に示されたと考えている。

実験結果

とかなんとか大げさに書いたが、縫製がそんなに難しいことかというと、自分にとって敷居が高いだけで、たぶん一般的にはそんな大したことではないだろう。縫い目が外に見えていて、且つそれがきっちり揃っているレベルで仕上げようとすると猛烈にハードルが上がるが、縫い目は裏側に隠し、単にカーブ状に合皮を縫合するだけなら、それほど難しくない気がしている。

とまあ、とにかく「気がしている」だけなので、屋根裏部屋にある合皮を持ち出し、お試しで適当に切れ端をカーブ状に縫合してみたところ、結果的には「気がしている」ことが間違いではなかったことを実証することになった。合皮は柔らかいので針が通りやすく、カーブ状にただ縫うだけなら全然大したことではなかった。超複雑な形状だったらどうなるのかはわからないが、幸いピアッツァのセンターコンソール形状はそこまで複雑ではない。

裁断&試行

予備で持っているセンターコンソールを使って型を取る。型というほど大げさなものではなく、適当な紙にセンターコンソールをあてがって、ペンで線を引くだけ。本来はここできっちり精度を高めたほうがいいのだろうが、形状的に高精度でやるのは困難だろう。

とはいえ、現状ではそれを信じるしかない。まずは左側側面部と上面・前面部を型紙モドキを使って切り出す。

大体の場所に印をつけてまち針で接合しただけの状態であてがってみる。悪くはない。

縫製開始

小学生の時に家庭科の授業で買わされた裁縫箱を棚から出し、縫製を開始する。

大体の場所に印をつけて、まち針で接合した上で縫合していく。止め玉だの何だの、小学校の家庭科の授業で習ったようなことを思い出しながらやっていく。年令を重ね過ぎて手先が衰えている上、老眼も酷くなっているので、針に糸を通すとか、止め玉を作るとか、そういう基本的なことでいちいち時間がかかってしまう。

それでもどうにか針を進め、ある程度進んだところでセンターコンソールに現物をあてがう。それを繰り返しながら作業を進める。上部の平らな部分へ向かうカーブのところで四苦八苦したが、どうにかこうにか左側だけ一段落させる。うむ、悪くないではないか。

調子に乗って反対側(右側)も進める。左側のときは何も考えずに線のとおりに縫えば良かったのだが、反対側は張り具合を見ながら縫合部が角にくるように現物合わせで幅を調整しなければならない。引いてある線があてにならないのだ。何度もあてがったり外したりを繰り返しながらじわじわ進める。

そして遂にガワの縫合を終える。縫い物などやったことがないオッサンの作業としては上出来と言えよう。

このようにカーブに沿って滑らかに曲がるところが、両面テープでは対応しきれなかったのだ。長年の悩みが縫製により解決した瞬間である。

新旧を比べると、まさに雲泥の差だ。

実はここからが山場

というわけで外側ができてご満悦状態になっていたのだが、実はここからが山場である。真ん中のオーディオ&マルチドライブモニタ部の加工が残っている。これが後期コンソールなら何も考えずにただ大穴をあければおしまい(例の業者の仕事もそう)なのだが、87.5型までの三段コンソールは内側もきっちり加工しなければならない。ここでミスると、これまでの作業が水の泡だ。

まずは現行のコンソールに貼ってある古い合皮を剥がす。基本的にはタッカー留めで、両面テープを併用したものだ。なんというテキトーな仕事だ。そこそこ大変だった縫製作業を終えた今となっては、堂々と過去の自分に「お前の作業は手抜きの極みだ」と言える。そのクソみたいな合皮を、手作業で毟り取るように剥がす。

剥がしたものはゴミでしかないが、一部は今回の作業の型紙代わりに使うことができるのでとっておく。

ここまでは前段でしかなく、これから先の作業が本番だ。縫製したガワをコンソールにあてがって、切り抜くべき箇所にまち針で印をつけた上で、カッターで切り込みを入れる。上下はそのまま利用し、左右は別のパーツを縫合するという算段である。うまくいくかはよくわからないのだが、最悪の場合は上下も併せて縫合することになる。いくらなんでも面倒なのでそれは避けたいのだが。

上に続いて下も同様に切り込みを入れ、結果的に真ん中に大穴を開ける。

続いて、左右の内側サイド部を用意する。先代から剥がした古い合皮を型紙代わりにして切り出す。とはいえ、先代は完全に現物合わせであり、寸法が妥当なのかは正直なんとも言えない。

そしてそれを縫合する。もうかなり慣れてきており、この程度の直線的な縫合ならすぐに終わる。

それを左右両方やったところで、縫合作業は完了となる。あとはコンソールに貼り付けるだけなので、最大の山場は超えたと言える。

コンソールへの貼り付け

出来上がった合皮のガワをセンターコンソールに貼り付ける。ここは残念ながら相変わらず両面テープである。「超強力極薄両面テープ」みたいなものは持っていないので、ごく普通の百均で売っているやつをそのまま使う。

とりあえず一旦張ったところで一段落。最後のタッカー作業は深夜にバチバチ大音響を立ててやるわけにはいかないので、ここまでで一旦終了とする。

うむ、良いではないか。少なくとも先代よりは格段に良い。懸案だった上下の隙間も辛うじて発生しなかった。ごまかせる範囲内だろう。

総仕上げ

最後にタッカーでバチバチと留め、余分な合皮をハサミで切り取って、作業完了となる。

そして車体へ取付ける。ダッシュボードと接触する端部を丁寧に押し込んで装着する(プロはこの際の隙間を適正にすべくコンソール側を削っているようだが、素人はそこまでしないので、無理矢理押し込むことになる)。

うむ、これは良い。素晴らしい出来栄えじゃないか。素人作業としては十分じゃないか。なんでこれを22年前にやらなかったのだろう。今よりよっぽど時間も暇もあったのに。