K1100RSで長野ツーリングに出かける前週のピアッツァ横浜オフでの出来事である。
確か「給油口近辺の錆発生を防ぐためにパテか何かを盛ったりする」的な話がきっかけだった気がするが、フューエルリッドを開け、用事が済んだので閉めようとしたところ、少々滑りが悪くて閉まりが悪かった。
そこで少々強引に閉めたところ、物凄く嫌な手応えがあった。そう、ロック用の棒が折れてしまったのだ。
注油するなり、もうちょっと丁寧に閉めるなり何なりすれば良かっただけの話なのだが、過去何度もこうやって強引に閉めて何ともなかったが故の正常性バイアス的な自爆行為である。その場では冷静を装ってはいたが、内心自分自身に腹が立って仕方がなかった。
腹を立てていても折れた棒が繋がるわけでもない。ツーリングを控えて忙しいというのに対策を考えざるを得ないのだが、その場では「そのままネジを埋め込んでロック棒代わりにしている」という経験談を伺った(つまり、知らなかっただけで過去に事例はあった)。まあとにかく純正部品が妥当な価格で出さえすればそれほど問題にはならない。
とりあえず、フューエルリッドがプラプラしていると他人に迷惑がかかる可能性があるので、プラスネジ2本を抜いて外した状態で帰宅した。
純正部品を注文したのだが…
部品番号を調べ、モノタロウで検索してみると、普通にヒットした。値段もそれほど法外なものではない。このぐらいなら色々と試行錯誤する時間を考えれば許容範囲である。というわけで早速注文した。
コレで万事解決、と思っていた数日後、残念なお知らせが届いた。
そういう可能性もあるだろうと予想はしていたのでそれほどショックではないが、面倒くさい。ただ走るだけならガムテープなり何なりで止めておくか、フューエルリッド無し状態でもいいのだが、永遠にそのままというわけにもいかない。何か考えざるを得ない。
とりあえず外してみる
どうするかはまだ何とも言えないが、とにかく一旦外してみないことには対策も立てようがない。フューエルリッド側のナットを緩めるとロックの金具一式自体は外れるのだが、ワイヤーのテンションが強いせいか、それ以上全然動かない状態になる。これではどうにも先に進まないのでどこかを緩めてテンションを弱くしたい。反対側のロック解除レバーとロックの間のどこかでワイヤーを固定していると思われるので、ワイヤーが通っている右リヤ内装を外してみた。すると、内装の裏側でワイヤーがガムテープ留めされていた。
その先は、この場所を通ってフューエルリッドのロックにつながっている。
ガムテープを外すことでロックが裏側から取り出せるようになった。あとはワイヤーとロックを外すだけだ。
ロックピンはこの場所にあった。
ロックは手で自由に動かせるようになったので、開いた状態のまま折れたロックピンの反対側を外してみた。若干強引ではあったが外すことができた。
(この時点で「折れているからこそ外れた」ことに気づいてれば、この後に試行錯誤した幾つかの案は門前払いにできたのだが、残念ながら気づいていなかったので、無駄な時間を使ってしまった)
案1:接着方式
相手はプラスチックなので、とりあえず接着方式を試してみる。単に接着しただけではおそらく強度不足で、棒の中心に穴を開けて金属製の心棒を通す等で補強する必要はあると思うが、まあいずれにせよ接着剤は試してみたい。プラ部品の接着といえばプラリペアである。
廃材置き場にあった適当な木に6mmの穴を開け、それを半分に切って治具を作る。そこにロックピンを置いてプラリペアを塗布する。
この状態で1日放置し、固定しているセロテープを外して触ってみると、いとも簡単に折れてしまった。少なくともプラリペア等の溶剤系でどうにかなる材質ではないようだ。何らかのエンプラだと思われるが詳細は不明だ。ではエンプラ用の接着剤ならくっつくかというと、まあ無理だと思ったほうがいいだろう。
案2:心棒方式
仕方ないので、接着剤はアテにせず、心棒をメインとする方向に転換する。棒を通すには穴を開けなければならない。小学生の頃に何故か購入し、何十年も使っていなかったピンバイスと、ダイソーで買った2mmのドリル刃で穴をあける。
本来は垂直が求められるところだが、どうやったって無理な話。若干ズレた状態で貫通した。そこに2mmの棒を通して、少なくとも横方向(フューエルリッド方向)からの圧力には耐えられるようにした(つもり)。
この状態でロック金具にピンを装着しようとしたのだが…
困ったことに、物理的に全く入らない。入れようにも、角度が合わないのだ。
じゃあ新品はどうやって組み付けたのか。このロック金具は、固定側と動作側の2つを中央1点でカシメるように繋ぎ合わせているが、ロックピンも含めた3つの部品を組み付けた後に、その金具同士を繋ぎ合わせたとしか考えられない。ここがネジ等ならどうにかなるが、困ったことにカシメ状なのでどうにもできない。
つまり、折れたロックピンを繋いで差し込むという行為自体が無意味だったのだ。最初からこれに気づいていれば無駄な時間を使わずに済んだのに。
案3:ロックピン自体を自作
仕方がないので別の案を考える。ロック自体は分解できないので、この状態でどうにかできるものを考えるしかない。そうすると、何らかのネジ状のものを使うことになる。
ピンが通る穴の直径は5.9mm。そのため、それ以下の太さで且つネジが切ってあるスペーサー的なものを使うか、またはスペーサーの中に長いネジを通すか。前者の方がスマートなのだが、適切な部品を見つけることができなかった(実は6mmのネジ切りつきスペーサーを買ったのだが、当然のように入らなかったので使えなかった。5mmのものは見つけられなかったし、仮にあってもガタが大きすぎるので使いたくない)。そのため、後者のスペーサー+長いネジ案となる。
手持ちのボルトやナットを寄せ集めて試作したところ、まあなんとか使えるんじゃないか、程度の状態にはなった。
最終的には以下の構成となった。
ネジやナットをバラ売りしている店で買えば100円以下で完成する。
・M4 50mmのなべネジ 1本
・M4 フランジナット 3個
・M4 ナット 3個(フランジナットとダブルナットとして固定するために利用)
・M4ボルト用 20mmスペーサー(外径5.5mm)
スペーサーの外径が5.5mmなので、金具側パイプ(5.9mm)との隙間が0.4mm。若干大きいが仕方ない。
ナットはダブルナットとしたが不安が残るのでネジロック剤を塗布している。
そして、フューエルリッドと当たるネジ頭を削る。
そしてロックを車体に装着。無事に閉まるようになった。
その後、ワイヤーも接続し、普通のレバー操作でも問題なくフューエルリッドを開けられることを確認し、ようやく作業完了となった。
課題
というわけで、ようやく普通に外を走れるような状態になった。やはりフューエルリッド無しで走るのはあまり気分がよろしくない。
課題としては、ロックピンがエンプラから金属になってしまったので、フューエルリッド側が削れること。どうにもならないのでPOR15をフューエルリッド側に塗って補強したが、剥げるのは時間の問題だろう。