冬の夜中に安バーボンを飲みつつ、なんとなくツイートに返信したことからソレは始まった。
古いALPINEヘッドユニットの8DIN端子(CDチェンジャー制御用)に、CDチェンジャーを偽装してRCA inputを割り込ませるアダプターを販売したらマニアに爆売れすると思います。
— m.sota (@msota_RS) February 4, 2022
ALPINEの旧いヘッドユニットからiPod/iPhoneに入っている音楽を再生する試みは以前からなされているが、一般的にはカセットアダプターを使って再生するか、FMトランスミッターを使うことになる。これらは、いずれも欠点(カセット部からケーブルが出ていてみっともない、音質が落ちる等)があり、究極の手段として「iPod/iPhoneをCDチェンジャーであるが如く振る舞わせる(偽装する)」手段が無いかと一時期模索したことがあったのだが、ざっとググった程度では見つからず断念していた。FMモジュレーター方式チェンジャーのユニットを活用してどうのこうの、という話は聞いたことはあったが、電気に詳しくない自分には敷居が高すぎた。
iPodが普及した頃のALPINEヘッドユニットには当然そのような機能はあるし、AUX端子も追加されているため手段はいくらでもあるのだが、JR130で使っている古い7618Jにはそんな機能はないし、AUX端子もない(あるにはあるが、CDチェンジャー用なので、単体では使えない)。
ここ数年はBluetoothレシーバー兼FMトランスミッターを使って音楽再生しており、それで特段困っていることはないのだが、音質劣化だとか、特有のメンドクサさ(Bluetoothが通信を見失う、バッテリーをカットオフすると周波数あわせが必要になる、ラジオとの切り替えが面倒等)もあり、漠然とした不満を持っていた。
そんなわけで上記のコメントに至ったのだが、深夜の酒パワーのせいかどうかはわからないが、話はトントン拍子で進み、実現可能性の実機調査を依頼することになった。詳細は省くが、以降は以下の流れである。
- 7618Jの動作するサブ機を用意する(その過程でハーネスがないことが発覚して複製する羽目になる)
- サブ機を提供して、容易に実現できるかの解析調査を依頼する
このメンチカツは調査の手付代わりである。
手土産購入の上で都筑PAに向かう pic.twitter.com/8c8rcqUvQo
— m.sota (@msota_RS) February 27, 2022
その後は次のような経緯となる。
- 調査の結果、一筋縄ではいかないことがわかる
- その過程で「妄想そのまんま」な機器があることが発覚
その怪しい機器がコレだ。
旧い7618Jにおいては、AmazonやeBayに転がっている単純な8DIN⇔AUXの変換ケーブルではダメなことはわかっており、この機器がそれと同等であることが懸念されるのだが、説明を読むとコイツはそんな単純なモノではないことがわかる。なにしろヘッドユニット側からFF/REW操作ができることが明示されているのだ。ALPINEのCDチェンジャーのプロトコルを解析した上で何らかのエミュレートをしていないとそんなことはできない。これは期待が持てる。
この時点でほぼ発注する気になっていた。その後はこのような経緯を辿った。
- その業者に「7618Jで動くか」を聞いたところ、OEM元のURLを示され「ここを見ろ」というしょうもない返事をもらう
- 互換性に関しては全く情報は得られなかったが、この機器のマニュアルを発見し、これはイケそうだと確信する
- 若干悩んだが、eBayでコレを発注する
- よくわからん理由でキャンセルを食らう
- 独Amazonに最後の一台が残っていたのでそれを発注する(その独Amazonの唯一のレビューが「7618Rで動いた」というものだった)
こんなことを書いた通りで、ほぼ躊躇なく発注に至ってしまった。
こういう言い方はよろしくないかもしれませんが、未だに旧式ヘッドユニットに拘る人はほぼ間違いなく酔狂な人なので、ちゃんと動作する変換ケーブルが登場したら1万円ぐらいまでなら躊躇なく投下すると思います(笑)
— m.sota (@msota_RS) February 5, 2022
色々と調べる過程で、この機器は中国の会社が開発し、それをこの独逸の会社が自社製品として流通させていることがわかった(明言されていないが、どうみてもそう)のだが、ALPINE用というより、たまたまALPINEのOEMを使っていたHonda/Acura用で、それ以外にも多数の自動車会社の純正オーディオに適用させていることがわかった。様々な会社の通信プロトコルをリバースエンジニアリングし、ケーブルもそれに合わせて作って適宜対応させていたことに恐れ入る。この頃の中国企業の商魂たるや恐ろしいものがある。2020年代以降は、色々な意味でそんなことはやらないだろう。
問題は、旧来の30pinインターフェースしか持ち合わせていない点だ。Lightningケーブルは用意されておらず、iPhone5以降で使うなら変換アダプタが必要だ。しかしうちにはiPhone4sがあり、最後の手段は残されている。
ユニットの到着に合わせて、iPhone4sの動作確認をする。もう何年も電源すら入れていなかったが普通に動作した。OSはiOS6、フラットデザインになる前の最後のスキューモフィズムデザインで、今見ると新鮮だ。
30pinコネクタしかないみたいなので休眠していたiPhone4sをLossless音源再生専用機にすべく準備してますw
古すぎてSpotifyとかは動かないのでiPod相当にしかなりません pic.twitter.com/NvwFaKn0MI— m.sota (@msota_RS) March 2, 2022
発注から数日後、思いのほか早くブツが届いた。
本業超多忙の最中、深夜の隠密行動で取付作業を実施した。
数十回単位でセンターコンソールとヘッドユニットの着け外しをしている自分的には、接続自体は極めて容易である。準備万端のiPhone4sを接続して動作確認する。期待通り、iPhoneの音楽を見事に再生してくれた。
このTwitterのツリーに書いた通りで、7618J+このアダプターで、iPhoneの音楽再生に成功した。若干の癖はあるが、有線でiPhoneの充電をしつつ音楽再生できるというのは大変画期的なことだ。
独Amazonから例のブツが届いた。結論から言うと、ビンゴ! である。iPod購入以来、ほぼ不可能だろうと思い込んでいたことが、この小さい箱で簡単に実現できてしまった。 pic.twitter.com/vE1UDxdhNA
— m.sota (@msota_RS) March 20, 2022
いささか古い話だが、30pinの頃はこの変換アダプターとカセットアダプターを使って有線で再生できていた。カセット部からケーブルがプラプラしていてカッコ悪いが、有線なので音質は良かった。
Lightningになるとこれが使えなくなり(30pinアダプターを使えば良かったといえばそれまでの話だが)、Bluetooth系にシフトし、結果的にFMトランスミッター+Bluetoothアダプターに落ち着いていたが、やはり有線の安心感に代わるものはない。
早速、とっくに絶版となっている30pin – Lightningアダプターの調達に走ったのは言うまでもない。サードパーティ製アダプターはオーディオ再生できないので、純正品を確保せざるを得ない。その変換アダプターと、Lightning延長ケーブルを接続することで、常用しているiPhone 11 Pro Maxを用いて快適なiPhone音楽再生環境を得られている。当たり前だが、iPhone側から操作すれば、SpotifyもTune in Radioも使える。2004年頃にiPod Photo (60GB)を購入し、ずっと渇望してきたことをようやく実現できた。感無量である。
残る課題は、この快適な音楽再生環境をいつまで維持できるかということだ。快調に動く7618J、このアダプター一式(ヘッドユニットへのケーブル、iPhoneへの30pinケーブルも含む)、30pin to Lightning変換アダプターの3つが揃って初めて成り立つ。物理的な故障は仕方ないとして、とっくにディスコンになっている30pin to Lightning変換アダプターの動作をAppleがいつまで(どのiOSバージョンまで)サポートするかという点も課題になる。機器については予備を確保しておけばどうにかなるが、Appleの意向はアンコントローラブルだ。それが最大のリスクになろう。
補足
なお、ELECTRONICX社のこのアダプターは既にAmazon, eBayともに在庫無しである(2022/05/10現在)。Bluetoothユニット付き(Bluetooth 2.1なのに無駄に高い)はまだeBayに残っている。Bluetooth無しは、ELECTRONICX社のサイトには在庫があることになっている。それ以外に、ELECTRONICX社のOEM元であるYATOUR社の名前で売られている製品で、似て非なるもの(iPod/iPhoneではなくSDカード仕様だとか、iPod/iPhone+SDカードの複合仕様だとか)が存在しており、それがまだ売られていることは把握しているが、動くかどうかわからないため言及しない。興味がある人(2020年代にもなってそんな人いるのか?)は頑張って直接購入するなり、同等製品を探してほしい。