茨城・福島 農道巡りツーリング

毎年書いているが、10月第1金曜日は弊社の創立記念日で休暇扱いのため、金・土でツーリングに出かけることが慣例になっている。昨年・一昨年は仕事の客先対応のため行けなかったが、今年はそのあたりは支障がなかったため、仕事的には問題はない。

過去数年に比べるとKの状態は良好なので、行き先としては10年以上行っていない北陸方面を考えていたが、雲行きが非常に怪しい。雨の可能性があるだけではなく、冬型気圧配置により山間部は初冠雪が見られそうなほどの極寒状態が予想されていた。そんなところに突撃するほどの気合も体力も持ち合わせていないので敵前逃亡を決め込み、天候の良さげな場所を探す。

どうやら太平洋側は問題なさそうなので、静岡・愛知または茨城・福島の沿岸部が候補となる。愛知よりさらに足を伸ばして紀伊半島という手も一応あるが、スケールがデカすぎて2日間では勿体なく、2泊3日で行くべきだと考えて却下。過去に1泊2日で強行したら滅茶苦茶疲れた。今の体力では無理だろう。だからと言って愛知や静岡の海沿いに行きたいかというと、5月末にピアッツァで行ってしまったのであまりそそらない。福島より先も似たようなもので、5月の東北ツーリングで通ったので、そこまで行く強いモチベーションがない。

結果的に、半ば消去法だが茨城・福島(南部)が残った。福島は会津や中通りは何度も行ったが、浜通りはロングツーリングの帰りに通っただけで未踏に近い。茨城も阿字ヶ浦やひたち海浜公園、袋田の滝あたりに何度か行った程度で、しかも全部クルマ。バイクで行ったのは筑波サーキットや大洗港の往復程度。どうしてもこの道を走りたい、というほど著名な道がないので、どうしても後回しになってしまう。

とはいえ北関東から東北にかけての人口が少なめなエリアなので、多くの国道や県道は快走路だろうし、広域農道もそこそこ多い。ちょっと調べてみると快走農道っぽいのがいくつか出てくる。国道や県道はどれが良いのかよくわからないが、これはツーリングマップルのピンク色を信じるしかなかろう。

さほど距離も伸びないだろうし、時間的な余裕もまあまあありそうなので、宿泊はキャンプにする。Kでのキャンプは2020年10月の長野ツーリング以来だ。丁度このあたりには、以前何かで見て目をつけていた福島県鮫川村の鹿角平観光牧場キャンプ場があり、ここに行くチャンスだ。良い機会なのでここを目的地とする。

このキャンプ場を中心として経路を検討し、1日目は茨城県の農道を走って勿来から北上してキャンプ場に向かい、2日目は近隣の農道を走ってから白河関跡あたりから栃木県に入り、那須の農道を経て宇都宮近辺に向かうという計画にした。走りたいルートはある程度ピックアップしたが、低山エリア故、比較的どうにでもなるので、あまりガチガチには決めないでおく。

久しぶりのキャンプツーリングだが、何を準備すべきかはもうわかりきっているので、さほど苦労することもなく荷造りは終わる。今回の計画に最適な二輪車ETCツーリングプラン 東北道・常磐道コース ミニに申し込んで準備完了だ。

Day1 茨城の農道

朝5時すぎに起きて食事やシャワーを済ませ、6時すぎに出発する。時は金なりなので逗子ICから横横に乗り、首都高湾岸線を走る。ベイブリッジから浮島あたりまで渋滞していてウザい。中央環状線を抜けて常磐道に入り、守谷SAで一休み。Highway Walkerをゲットして出走し、友部JCTから北関東自動車道に入り、友部ICで降りる。早速北関東らしいだだっ広く且つ遠方に山がある景色が現れる。

この何の変哲もない感じがまさに北関東

R355を少し走ってR50と交差した後、最初の農道「ビーフライン」に入る。名前の由来は不明だが、沿道に牧場があるからという説をいくつか見かけた。そんな農道いくらでもあると思うのだが。

名前はどうでもよくて肝心なのは道。ハイスピードコーナーと直線が交互に現れる、なかなかの良い道だ。

北海道ばり…とまではいかないが、なかなかのストレート

いきおい撮影のための停車が増えてしまう。

撮影欲を止められなくなってしまう

交通量もたかが知れたもので、Kを停めて前に後ろに行ったり来たりしていても滅多にクルマは来ない。

おそらくここがビーフラインのハイライト

しかし、良い道があっという間に終わってごく普通の田舎道になってしまうのが農道の性。やけにバイクが多い途中の販売店を過ぎると、道が急にさえなくなる。

この彼岸花&廃屋スポットを境にパッとしなくなる

それどころか、どこがビーフラインなのかさえわからなくなる。ろくに看板も出ないのが農道の欠点だ。Google Mapを見てもビーフラインという表示はあったり無かったりするのであてにならない。そこに文句を言ってもしょうがないので適当に走っていると、蕎麦畑に遭遇する。

茨城北部あたりから蕎麦畑が増える

その後、突如ビーフラインへの復帰に成功するが、もはや単なる田舎道になっており、交通量も増えてしまい、快走路でもなんでもない。

さっきまでと同じ名前の道とは思えないつまらなさ

この倒木を避けたあたりでビーフラインは終わる

最初は素晴らしかったビーフラインは、なんともパッとしない形で終点になった。ガソリンスタンドで給油し、少しだけR118を走ってから次の農道「グリーンふるさとライン」に入る。始まってからしばらくは、山というほどでもない丘を超えるような道が続く。まあまあじゃないか。

なかなかの快走路

県道33号に入ったところにある「藤ひろ」で昼飯にする。

ここで昼飯にする

いつもだったらスーパーの菓子パンや助六で昼飯にするのだが、先日読んだ「ドライブイン探訪」に感銘を受けたので、その地に根付いているっぽい食堂で、そこの名物っぽいものを食いたい欲が強かった。ドライブインと名乗る店があれば尚良かったのだが、この「藤ひろ」はなんとなく根付いているっぽかったのでここにした。中に入ると、いかにも地元民っぽい人たちが数組いた。期待通りだ。そして、名物っぽい「つけけんちんそば」を頼む。

つけけんちんそば 1000円也

温かいけんちん汁に蕎麦を入れたものもあるようだが、それに対してけんちん汁にざる蕎麦をつけて食うものを「つけけんちん蕎麦」と呼ぶ…のだろうか。キャンプツーリングだと野菜が不足しがちなので丁度良い。味の方は、まあ見た目の通りな感じで、値段なりの価値はあるし、勿論満腹になる。率直に言って、普通にざる蕎麦大盛りを食った方が満足度が高かった気もするが、今回は名物っぽいものを食いたい欲が強かったのでこれでいいのだ。

お代を払って店を出て向かうのは、2kmほど県道を下ったところにあるセイコーマート常陸太田和田店だ。すぐそこにグリーンふるさとラインの入り口があるのに、それを無視してあえて向かう。せっかく茨城まで来てセイコーマートを無視するわけにはいかない。田舎道なのですぐに着く。

すぐに着いてしまった

この看板がもたらす安心感は、北海道ツーリングをしたことがある人にしか伝わらないだろう

土産物のグミ&ジュースと、晩飯用の焼き鳥を買う

やるべきことは済ませたのであとは走るだけだ。来た道を戻り、再びグリーンふるさとラインに入る。ここから先は、この農道が本領を発揮する区間になる。

いきなりこんなのが現れる

路面状態も良い場所が多いが、強風で落ちた木の枝(下手すりゃ倒木も)が多くて気が抜けない

農道なので基本的には谷間や農地、農家の前を縫うように走るが、たまに景観が良い場所も現れる。

絶景というほどではないが、農道にしては良い部類

R461にぶつかったところで一旦農道は終わる。ここでなんとなく海の方に向かい、花貫ダムに寄る。特にそういう趣味は無かったのだが、なんとなくダムカードをいただく。このダムからは海が見えるらしいので、とりあえずそこまで行く。

初めて貰ってみた

少しだけ海が見える

R461を戻って暫く走ると、再度グリーンふるさとラインが始まる。相変わらず良い道ではあるが、快走感は若干落ちてきたような気がする。落葉や木の枝が増えたのがそう思わせるのだろうか。県道22号と合流したところで、ちょっと北上すると小山ダムがあるとのことなので行ってみる。またしてもダムカードをゲットする。

本日2枚目

またグリーンふるさとラインに戻って走り続ける。道そのものもそうだが、路面整備状態(木の枝やら何やらがやたらと落ちている)も含め、明らかに前半より悪化している。途中でいきなり視界がひらけて太平洋を望む場所が現れるまでは、特に整備状態の悪さにより、さほど楽しく走れない区間だった。

そして長かったグリーンふるさとラインは終わり、福島県に入る。なんとなく海沿いに出ようとしてナビの言う通りに走っていたら、倒木通行止めに行く手を遮られて諦める。あまり時間の余裕も無さそうなので、潔く海は諦め、ヨークベニマル勿来江栗店に寄って晩飯の買い出しをする。あまりコレといったものがなく、このあたりの名物もわからなかったので決め手を欠き、妙に時間を食ってしまった。セイコーマートで焼き鳥を買ってしまっていたのも悩ましさの一因だった。

福島でスーパーと言えばヨークベニマル

ここからはR289で鮫川村のキャンプ場に向かう。市街地を抜け、勿来ICを過ぎると一気にド田舎になり、周辺にはコンビニはおろか民家さえ無くなる。すごい豹変っぷりだ。道幅は十分広く、山間を貫く直線とゆるやかなカーブで構成されたこのR289、全くのノーマークだったが素晴らしい道だ(一応ツーリングマップルでピンク色にはなっているが、何のコメントもない)。

素晴らしい快走感

道はどんどん高度を上げ、本日3つ目のダムである四時ダムの入り口に着く。登坂車線から左折してダム専用トンネルを抜けたところが四時ダムだ。

3枚目ゲット

その後もひたすら超快走路が続く。交通量は極めて少なく、それなりに飛ばしても他車に追いつくことはない。

まさしく快走路

最近改良整備したであろう箇所もちらほら

茨城の2つの農道もなかなか良かったが、整備状況が良い快走国道の方がロングツアラーのKには適している。この日のベストロードは迷うことなくこのR289だ。交通量・カーブ半径・路面状況・道幅といった快走路であるための要素を非常にハイレベルで満たしている。絶景ポイントや展望台が無いのが唯一の欠点だが、それは求め過ぎというものだ。

快走できるは良いのだが、勿来市街地でもかなり強かった風が、標高を上げるとさらに酷くなっているのが気になる。今日のキャンプ場はよりによってだだっ広い牧場の片隅にあり、風を防ぐような林間や谷間ではない。余計なことを気にすると走りがつまらなくなるので頭から葬り去っていたが、鹿角平観光牧場の看板が出たところでいよいよ考えざるを得なくなる。快走国道から一本入るといきなり細い道になるが、舗装路なので特に問題はない。数分走ったところでキャンプ場に着く。

鹿角平観光牧場キャンプ場

画像じゃ全く伝わらないが凄い風だ。先客は1組のみ

こうして福島県鮫川村にある鹿角平高原牧場に到着した。期待してた通り良いところだ。草が刈られた10月でこの景観なので、初夏あたりに来たらより素晴らしい景色だろう。そうやって景色を堪能する余裕さえ吹き飛ばす強風に耐えなければならない。

キャンプ場の向かいにある砂利駐車場にKを停めて管理棟に向かう。ガラガラと引き戸を開け、受付のおばあちゃんに予約した者だと伝え、手続きを済ませる。ソロだと人と話す機会が極めて少ないので、いやー遠くから来たねえ、なんていう他愛のない会話が楽しい。いつもこんなに風が強いのかと聞いてみると、そんなことはないとのこと。そりゃそうだ。

キャンプ場代の1000円はPayPay、緑化協力金の200円は現金、という変則的な作法で支払いを済ませ、キャンプ場の作法について説明を受ける。バイクはキャンプ場の片隅にある巨大テントの屋根下に入れて良いとのことなのでそこまで持ち込むが、あまり踏み固められていない砂利なので出すのがたいへんそうだ。

これで雨や夜露の心配はなくなる

左右パニアケースを外し、シート上の防水バッグも外し、荷物を持ってサイトに向かう。サイトに出て、管理棟による防風効果が無くなると風をモロに受けてしまう。これは参った。せめてもの風よけのため、隅っこの方にある垣根のすぐそばに陣取ることにした。

何もないよりはマシだろう

本当にここで寝られるのだろうか、今からでもいわき市街地の安ホテルか週末限定営業健康ランドにでも行ったほうがいいんじゃないか、という邪念と戦いながら設営を始める。設営自体は大したものはないのでさほど時間がかからず終わる。なお、タープは追加料金1000円がかかるし、雨もふらなそうだし、風除けの役にも立つかどうか微妙(やたらと舞っていて風向きが定まらない)だし、何より強風故にメンドクサさが勝っているのでナシ。

ここをキャンプ地とする

ここからさほど遠くない温泉まで行くつもりだったが、こうも風が強いと、どうしても必要なこと以外の行動をする気力が削がれていく。昼間のつけけんちんそばはとっくに消化したらしく空腹感を感じたので、とりあえず晩飯にする。

まずは火起こし

パパッとライス(半分)を湯煎する

(しつこいようだが)画像からは全く伝わらないが凄い風の中、炭に火がつくのと、ライスができるのを待つ

とりあえず枝豆とビールで乾杯にする

二度焼きした焼餃子とライスの晩飯

セイコーマート製品を食っているとキャンプ感が高まるのは何故だ

これも焼いて食う

生酒と焼鳥の自分的定番キャンプ晩飯

焼き鳥セットに豚串が入っているのは北海道らしい(と勝手に思っておく)

寒いので湯煎した会津ほまれを追加投入

幸いなことに、飯を食っているうちに徐々に風が弱まってきた。ようやく普通のキャンプっぽくなってきた。これで空が満点の星空だったらサイコーなのだが、残念ながら雲が多めで明るい星しか見えない。ここには天文台があるぐらいなので場所の問題ではなく、天気の問題だ。どうしようもない。

ダラダラしていると、翌日の村内交通規制に関する村内放送が流れる。大紅葉の何らかの作業をするらしい。ほぼ村民は居ないであろう観光牧場に流す必要があるのか判断し難いが、ネタとしては面白いので別に構わない。

恒例のKenny Logginsのグランドキャニオンライブを流しながら酒を飲み、焼き鳥と枝豆をつまむ。遠路はるばる走ってきてこそ得られる満足感だ。同じことはクルマでも出来るが達成感が段違いだ。紙パックの会津ほまれを湯煎して呑み、さらに酔いを深める。

夜も更けてきて、食い物がなくなり、酒もなくなった。爆走したわけじゃないのでそれほど疲れてはいないし、明日はさほど早起きするつもりもないが、よく寝られるか怪しいので、あまり夜更かしはしない方が良いだろう。ほどほどのところで諸々の道具を片付けてテントの狭い前室に仕舞い、自分もテントに入って寝酒のバーボンを飲む。

こんなのをダラダラと書いてから眠りについた。風によりテントに何かが当たる音だとか、ふくらはぎを攣ったりとか、微妙に寒かったりとか、色々な理由で何度か目が覚めたが、基本的にはよく寝られた部類だろう。

Day2 鹿角平観光牧場の道

前夜と同じく大紅葉に関する村内放送が流れて叩き起こされる。眠いので二度寝したが再度村内放送が流れ、またしても目が覚める。諦めて外に出て朝飯の準備をする。

まあまあな天気だが、風は相変わらず強い

キャンプの朝飯はだいたいコレ

その後は撤収に入るが、なんだかんだで1時間近くかかってしまうのはいつものこと。朝は身体の動きが鈍いことと、大雑把に詰め込むと入り切らないのでそれなりの丁寧さが求められることが原因だろう。

ようやくまとめ終わった

まだ積載作業が残っている。これがまた時間がかかる

お世話になりました!

さてそろそろ行きますか

7時すぎに起きたのに出走は8:49。まったくもってキャンプツーリングの出発時間はあてにならない。

そして、出走して100mも走らない場所にサイコーの景観が待っている。

これは素晴らしい

ここは駐車場に入るときに通る道なので、当然前日もこの景色は見ているのだが、午前中と夕方ではだいぶ雰囲気が違う。夕方も悪くないが、このような場所だと、日が高い方が明らかに良い。

北海道かぶれの自分にとってはたまらない景色だ。ちょっと進んでは撮影、前後左右に動いて撮影、丘に登って撮影、なんてのをひたすら繰り返してしまい、全然先に進まない。似たような写真がどんどん増えていく。

一旦この観光牧場の端まで走り終えたが、逆方向も走らずに満足できるわけがない。一旦国道に出てから再度牧場に入り、反対方向に走る。上から見る牧場も良いものだ。

写真のタイムスタンプを見てみると、どうやら50分にもわたってここで撮影していたようだ。後で冷静に振り返ると馬鹿じゃねえのと思うが、いざその場に居ると、この素晴らしい景色の中で撮影欲を抑えて先に進むことなどできるはずがない。これは仕方がないことなのだ。撮影をテキトーに切り上げて後で後悔するより、撮影に時間をかけすぎて他の何かをできないことのほうがよほどマシなのだ。次にいつここに来れるかわからないのだから。

Day2 阿武隈高地を巡る道

とかなんとか書いたが、一応これはツーリングなので、いつまでも撮影に耽っているわけにもいかない。牧場内の道路の端まで来てしまったので、意を決して牧場を出る。

とりあえず目指すのは鮫川村の農産物加工・直売所「手・まめ・館」だ。温泉にも行きたかったが、撮影に馬鹿みたいに時間をかけすぎたのでさすがに時間の余裕がないので諦める。R349で行くつもりだったのだが、何故か牧場を往復してしまった都合上、R289と県道242を使うことになった。

このたまたま通った県道242がなかなかの道で、終始程よい道幅と路面状態が保たれた、好ましい田舎道だった。

超・典型的な東北の田舎道

県道249からR349に入ってすぐのところにある「手・まめ・館」で鮫川村の土産物を書い、そのままR349を北上する。ちょっと走ったところに名勝の「強滝」というものが現れ、せっかくなので寄ってみる。停めたらすぐそこに奥入瀬渓流のような清流が流れている。

緑色の紅葉(モミジ)が美しい。紅葉の時期は馬鹿混みしそうだ

これは良い流れだ

ここから出発してみてわかることだが、こんな渓流がしばらく続いており、なんでこんなに無名なのかと逆に聞きたくなるほどの景観だ。青森の奥入瀬渓流沿いのR103を何度も往復した自分が言うのだから間違いない。「福島の奥入瀬渓流」とか名乗れないのは、普通に民家やら何やらが点在していて観光地感が乏しいのが理由かもしれない。無粋な白い柵さえ取っ払えば奥入瀬渓流の下位互換だと思うのだが。

R349は、強滝より先も周辺の雰囲気、道路状況ともに好ましい雰囲気が続く。たまに良さげなところで脇道に入ったりすると、いかにも東北の田舎っぽい景観に出会えたりもする。

いい感じだ。これぞ正しい東北の田舎だ

脳内に「ふるさと」が流れる

決して馬鹿にしているわけではない。自分は島根と宮城のド田舎のハーフであり、こういう景色こそがルーツなのだ。こんな情景に落ち着きを感じるのは自分の生まれ持っている感受性そのものなのだ。

北海道や沖縄の絶景にはこれっぽっちも懐かしさは感じず、おぉースゲーと思うだけだが、それに対してこんな何の変哲もない田舎の風景に心惹かれるのは、自分の生い立ちと無関係ではあるまい。

次の行き先は、石川広域農道の入口がある平田村の道の駅付近で、Google Mapナビは県道を指示しているが、R349がいい感じなので、遠回りだとわかりつつそちらを選ぶ。これが正解なのかは県道と両方走らないとわからないが、少なくともR349は相変わらず良い道であり続けている。

走りやすい田舎道が続く

さすがにそろそろ平田村に向かうにはR349から出ないとまずい、というところまで北上してしまったので県道286に入る。こちらもまあまあだ。

東北感に溢れている

田んぼが近い

県道286はすぐに終わり、幹線国道R49に入る。こちらは残念ながら主要道路すぎて面白くない。ダラダラ走っていると左側に「平田ドライブイン」が現れた。事前に目をつけていたドライブインだ。

ドライブインといえばコカ・コーラの看板

まだ11時過ぎだが、混む前に入っておいた方が良い。そう思ってKを停めようとしたが、駐車場に大型バイクが大量に並んでいたのを見て怯んでしまい、停めずにスルーしてしまった。こういう集団苦手なんですよ。

じゃあどうするか。面倒だから道の駅に向かってしまうか、とか考えながら直進していると、ナビ用iPhone6sが電池切れの警告を出した。Lightningケーブルを繋いでいるのに何故そうなるのか。よく見たらドラレコもETCも停止している。そうか、またヒューズが切れたか。そう考えて広い路肩があるところでKを停めた。

ヒューズを見るためには右側のインナーカウルカバーを外さなければならず、
そのためにはプラスドライバーを使わねばならず、
プラスドライバーを使うためにはリヤシートの荷物を降ろさねばならない。

この面倒くさい三段活用をダラダラ遂行する。よくあるトラブルだし、事前に配線を見直していたにもかかわらず発生したでやる気が出ない。とりあえず次回はプラスドライバーはカメラバッグなりパニアケースなり、すぐに出せるところに入れておこう。

カバーを外してヒューズを確認すると、切れていない。じゃあどこかのギボシが抜けたかと考え、配線をグルグル巻いているビニールテープを外して見てみるが、何も抜けていない。そうならないようにビニールテープで巻いてあるので当たり前ではある。

じゃあ一体何なんだよ。ああでもない、こうでもないとあちこち見ているうちに、何故かライトスイッチがオフになっていることに気づいた。この後付電装機器の電源はポジションランプから分岐させているので、ライトをオフにすると電流がいかなくなる。オーマイガッ、お前が原因か。ただスイッチをずらすだけで済んだことに、わざわざプラスドライバーを持ち出して強風の中をああだこうだやっていたと思うと実に馬鹿馬鹿しい。

この行為には何の意味もなかった

しかし、この調査過程でヘッドライトのロービームが切れていることに気づいた。ライトバルブの予備は常時持参しており、それは工具入れの奥にある。つまりリヤシートの荷物はどっちにしろ降ろさなければならなかったのだ。これが怪我の功名というやつか。

持つべきものは消耗品の予備部品

さっきまでの不貞腐れ感は若干和らいだが、交換した中古バルブにコネクタがなかなか挿さらず、じわじわとイライラが募る。強引にやると古い配線が根っこから切れたりしかねないので慎重に作業するが、だから余計に挿さらないのかとさらにイライラする。

あーうざい

どうにかこうにかバルブ交換を終え、無意味に外したカバーを戻し、各種電装品やヘッドライトが問題なく動くことを確認し、ドライバー以外の工具や予備電装品箱をシート下に戻し、降ろした荷物を再度積む。これで無駄に30分ロスしてしまった。

これを時間調整したと好意的に捉えることにして、先ほど通り過ぎた平田ドライブインに戻る。まだバイクは数台残っているが、30分前に比べたら大したものではない。砂利駐車場に停めて店内に入る。

歴史を重ねていそうな外観

カウンター席のようなものはないので4人がけのテーブルに座る。この平田村あたりは歴史的な経緯により羊肉を食う習慣があり、ジンギスカンが名物らしい。手書きメニューの最上段がジンギスカン定食になっているのでオススメなんだろう。ここまで推されては食わないわけにはいかないので、ジンギスカン定食を注文する。

想像より小綺麗な店内

案外広々としている

奥の方の家族連れ(東北なので爺婆・父母・子供の三世代故、料理数が多い)や、別室の宴会グループが先客に居たせいで、出てくるのに少々時間がかかったが、ソロツーリング中にこうしてのんびり出来る時間は貴重なので全く気にならない。これがコンビニの菓子パンだったりすると全く休まらず、リセットもできないので、こうして店で昼飯を食うのも悪くないな、と思い直す。

そして出てきたジンギスカン定食。比較対象がないのでわかりづらいが全ての皿がデカいので量が多い。

うまそうだ

野菜と羊肉をタレに漬けてワシワシと食う。羊肉は臭みもなく柔らかい。野菜はシャキシャキしていて、タレも含めて完成度が高い。これをガツガツ食うのが実に良い。食っても食ってもなくならない感がまた良い。

カレンダーの裏紙を再利用した伝票をレジに出して1300円を払い、大いに満足しながら平田ドライブインを出た。食いすぎて眠くならないかが心配だ。

R49を北上し、先ほど無駄に作業した路肩を通り過ぎ、暫く走って道の駅ひらたに寄る。

道の駅到着

カラインジャーの歓迎を受ける

おそらくここが最後の土産物スポットになるので、乾麺や酒などのありがちなものを買う。ここの名物は辛いものらしいが、自分以外は辛いものが苦手なので諦める。

Day2 石川広域農道

さて、ようやく本日の目的ルートである石川広域農道のすぐそばまで来た。キャンプ場からここまでは50kmほどしかなく、一切寄り道をしなければ1時間程度で来れる場所だというのに、もう出発してから4時間も経っている。どうしてこんなに遅くなるのか。

よし石川広域農道に向かうぞ、と言いたいところだが、ガソリン残量が微妙だ。多分もつとは思うが、ガソリンを気にしながら快走路を走るほど野暮なことはない。面倒くさいと思いつつ、先ほど通り過ぎてしまったガソリンスタンドに戻って給油した。そして今度こそ石川広域農道だ。

道の駅を通り過ぎ、少し行ったところにあるラーメンショップの手前を左折する。何の看板も出ないので、知らなきゃ絶対に気付かないだろう。そして、曲がって50mも走らないうちに、いかにも東北の農道といった光景が現れた。

田んぼ・曲がりながら登る道・その先の山・そして軽トラ。完璧な組み合わせだ

幹線道路から50m入っただけでこれだ

いきなりこのような出迎えを受けると期待感が高まるが、昨日のビーフラインみたいに肩透かしを食らうのも農道にはよくあることだ。半信半疑で先に進んでみると、待っていたのは期待に違わぬ快走路だった。

右に左に曲がりながらアップダウンする

農道にしては両側に何もないことが多くて走りやすい

新緑の頃は緑のトンネルのようになるだろう

何度も現れるダウンアップ(アップダウンではない)が心地良い

下った谷底に交差点があり、それを過ぎてまた登る。北海道にありがちな作り

どこまでも続きそうな道

さらにスケールが大きいダウンアップ

忘れた頃に、この手の典型的な東北の田舎も現れる

田んぼを遠くに望み観たところで石川広域農道は終わる

特に看板も何も現れることもなく、センターラインが無くなって道幅が狭くなったことで、石川広域農道が終わったことを知る。いや〜満足感が高い農道だった。ここまで最初から最後までハイテンションで走れる農道は記憶にない。大概にして路面状況やら民家の急増やら、何かしら興醒めポイントが現れたりするが、ここはそんなものはなく最後まで良い道だった。昨日のR289とは少々特徴が異なるが、どちらも一級品のツーリングルートであることは間違いない。

これまでの自分の中での農道ナンバーワンは新潟県の小出郷広域農道だったが、それと双璧をなす農道だ。景観は小出郷広域農道の方が上だが、走りの楽しさは石川広域農道が上回ると言えよう。

Day2 帰り道

ここまで来るともう棚倉の市街地が近い。そのまま走ってヨークベニマル棚倉店に向かう。今度こそ最後の土産スポットだが、あまり大したものが売っておらず、東北ロゴ入りのプレミアムモルツ(中身は普通)だけ買う。いわゆる福島の土産物コーナーみたいなのが無いのは何故なんだろう。

ヨークベニマルともしばらくのお別れだ

棚倉からは白河方面に向かい、東北道ではなくその手前にある県道で白河関跡を通って栃木県に入り、那須方面に向かうという算段だ。昨日あれだけ良い道だったR289を西に向かって走るが、この区間は単なる棚倉〜白河の連絡道であり全然面白くない。ダラダラ走っているうちに、旧白棚線跡・現白棚線バス専用道路の看板が現れた。おぉ、そういえばそんなのあったな。そして県道280に入り、少し走ったところで、そのバス専用道路と交差した。

国鉄時代の看板がまだ生き残っている

地元民は一切気にせずバス専用道で犬の散歩をしている

全く予期していなかったが面白いものを見られた。そこから県道を数キロ走ると白河関跡に着く。中の方まで入ってみても面白そうではあるが、だいぶ時間が押しているので軽く眺めた程度で先に進む。

周りは普通の住宅地と農地で、関所感はない

那須に向けて県道76を南下する。悪くない道だが、さっきまでの石川広域農道が良すぎて見劣りしてしまう。次第に道が細くなり、栃木県との県境を超える。

こっちの方がよほど関所感がある

峠を超えるとまた道幅は広くなる。田んぼとデカい民家、土建屋の資材置き場が交互に現れる典型的な北関東の県道をひたすら南下する。悪くはないが特に面白くもない。道の駅伊王野を通り過ぎた先を右に曲がったところが、本日最後の広域農道「りんどうライン」だ。

これだけ派手に始まる農道は珍しい

この写真からもわかるように道自体はなかなかだが、残念ながら交通量が多い。観光地那須を走り、且つ三連休初日なので県外ナンバーが多い。自分もそのうちの一人なので何も言えない。他車がいなくなっても、またすぐに現れてしまう。その繰り返しだ。

誰もいなければ良い道

その印象は最初からほとんど変わらず、盛り上がりに欠いたまま那須の観光中心地帯に入ってしまい、さらに農道感が無くなる。もう単なる普通の道じゃないか。それでも、観光エリアから脱出するあたりの「りんどう大橋」からの景色の素晴らしさにより挽回する。この無駄に高いところを走って谷を渡る橋は、左右どちらを見ても良い景色だ。晴れていたら那須の山々がよく見えるに違いない。この時だけは360度カメラを入手しておくべきだったと感じたが、そう思えるような場所は限られているので無駄な投資だろう。

りんどう大橋から少し走ったところにある広い路肩で一旦Kを停める。さすが那須高原、日が落ちてくると急に気温が下がる。ウルトラライトダウンジャケットを着込み、グローブもメッシュから革に替える。

雲が多いので余計に寒く感じる

そして帰路を考える。本来は宇都宮に立ち寄って、LRTを見てみたり、縁のある場所(1年ほど住んでいたし、ちょっと前にも何度も出張で来ていたので、色々と行きたい場所はある)をウロウロするつもりだったのだが、今から行っても日が暮れてしまっている。その縁のある場所は市街地ではないところばかりなので、真っ暗で何も見えないことは容易に想像できる。これは今更行っても時間の無駄だ。

そんなわけで、潔く宇都宮を諦め、近くの黒磯板室ICから東北道に乗って帰ってしまうことにした。ETCツーリングプランの範囲は宇都宮ICまでなので、そこまでは追加料金になるが、さほど大した額ではないので諦める。宇都宮ICまで下道を走るのもやぶさかではないが、もうかなり暗くなりかけているので面白くないだろう。

そう遠くない黒磯板室ICから東北道に乗り、大谷PAで道路状況を確認する。先の方で若干の渋滞があるようだが、適当に時間を潰せば解消する気がする。その後も都賀西方PA、羽生PAで数分程度の小休止兼渋滞状況確認をしながら進む。自分の腹も減ったし、ガソリンも自宅まではもたないので、蓮田SAのスマートICで東北道を降り、R16沿いで晩飯のラーメンと給油を済ませることにした。

何故か自分の中ではツーリング帰路の山岡家が定番化している

疲労困憊時はこの猛々しいラーメンが最適だ

重くて押し引きがメンドクサく、パニアのせいで幅もとるのでクルマの駐車場に停めざるを得ないことが多いKにとって、巨大駐車エリアがあることが保証されている山岡家は実に都合の良い存在だ。他にも駐車場が広いラーメン屋はあるだろうが、ツーリングの帰り道のように疲れたときはくどいラーメンが食いたいのだ。山岡家なら駐車場も味のくどさもハズレがない。考えることすらメンドクサい時はここが最適だ。

R16を岩槻ICに向かって走り、途中のガソリンスタンドで給油する。そして岩槻ICから再び東北道に戻って浦和に向かう。エリア内乗降自由のETCツーリングプランでなければこんな経路は使わないだろう。このプランは実に都合が良い。高速道路は完全無料化がベストなのは間違いないが、それは現実味が無いだろうから、ETCツーリングプランが現実解としては最適レベルだろう。

岩槻ICから浦和まで、たった1区間の東北道はあっという間に終わる。期待通り渋滞は解消していた。そこから川口まで走り、随分と久しぶりの川口PAに寄る。記憶にある川口PAとはまるで違うオシャレ空間が待ち構えていた。

なんか違う

以前より3倍ぐらい広くなり、PA施設も新設された小洒落た建物になっている。しかし自分はガムの補給と、暇つぶし用Radikoの選局をしたいだけなので、そんな施設には入ることもなく川口PAを去る。

川口からひたすら南下して湾岸線を目指す。10年ぐらい前までは結構な頻度で東北に来ていて、年に何度も走っていた道だが、最近は数年に1回走る程度になってしまった。なんとなく懐かしさのようなものがある。ゴチャゴチャした小菅JCTも、その先の葛西JCTも特に混んではいない。

このあたりを走る時は大抵既に疲れ切っていてクラッチを握る気にもならず、他車を追い抜く気にもならないのだが、今日はそこまで疲れてはいないようで普通に走れている。いつものように大井PAで最後の休憩をして、金をケチって途中で降りたくなる気持ちを抑えてそのまま横浜横須賀道路に入り、逗子ICで降りて帰宅した。

総括

予想はしていたが、あまり走行距離は伸びなかった。そりゃ50分も撮影していたら伸びるわけがない。

とはいえ、白馬の手前の木崎湖まで行った2020年の長野ツーリングとほぼ同じ距離だ。木崎湖のほうが全然遠い気がしていたが意外だ。東京を抜けるための無駄な片道100kmが脳内でツーリングから除外されてしまって、結果としてそう思わせるのだろう。

費用はこんなものだった。道路代とガソリン代が大半を占める。さらに言えば、首都高速と横浜横須賀道路だけで4250円。高すぎ。燃費は19km/L程度なので悪くなく、単純にガソリン単価が高い。これはご時世なのでどうしようもない。

過去の集計は殆ど無いので比較できないが、1泊2日のキャンプツーリングにしては高く感じてしまう。

まあ距離や金はいいとして、満足できたかどうかが重要だ。行く前は期待より不安の方が大きかったが、結果的にはそれなりの満足感を得られた。やはり行ったことがない場所に行くことは単純に楽しい。R289や石川広域農道のような良い道も走れたし、ジンギスカン定食も美味かった。

またすぐにあのエリアに行きたいかというと、そこまでではない。でもまたそのうち行ってみたい(こんどはもっと北の方まで)という気持ちはある。行きそびれた場所も何箇所かあるし、キャンプ場からの星空も見たかったし。

撮影について

例によってPENTAX K-1 MarkII + TAMRON A09の組み合わせ。この組み合わせは比較的パープルフリンジが出にくいので晴天下で使いやすい。付け外しが面倒なのでフードをつけたままLowepro インバース100AWに横に突っ込んでギリギリ入る。それなりにデカ重だが1泊2日なら我慢できる範囲だ。2泊以上になると微妙かもしれない。

一応GRIIIも持っていったが、最初の数枚・キャンプ場・最後の数枚ぐらいしか使わなかった。K-1+FA43mmの時はそこそこ使ったのだが、ズームレンズで焦点距離が被るようになると急に使わなくなってしまった。今後もメインをズームにする場合は不要だろう。

食事やキャンプ場等のどうでもいい(と言っては失礼だが)画像は概ねiPhone13 Pro Max。記録写真程度ならいいが、景観も含めてちゃんと残したい写真には、色味が悪いし線も太いしで、あまり使いたくない。これまでのレビュー等をみた限り、iPhone15でもあまり劇的な変化は無さそうだ。期待しないほうがいいだろう。

車載カメラは以前と同じくAKASO V50X。動画はあまり撮らず(どうせ見やしない)、走行写真をメインにした。リモコンをハンドル左側にベルトで装着しておいたので、走りながらの撮影も簡単だった。この組み合わせはなかなか良かった。本当は動画を撮りながら写真も撮れるといいのだが(本体ボタンだと非常に操作しづらいが一応できる)、リモコンだと残念ながらできない。動画は諦めたほうが良いということだろう。GoProやら何やらの、もっと良いカメラなら簡単に解決できるのかもしれないが、年に数回しか使わないものとしては値段が高すぎて手が出ない。諦めが肝心のようだ。