うちのK1100RSは、距離が進むにつれて、いわゆる定番と言われるところがきっちり壊れていく。近年ダメさに磨きがかかっているのがABSだ。昨年の東北ツーリング中に対処療法(リセット)を諦め、ありがちな手法で車検は通した。とりあえず乗る分には支障を感じないので放置していた。
K1100RSのABSには2種類あり、うちのは後期型のABS2と言われるものだ。こちらの壊れるポイントはABSユニットの内部だと言われている。これが駄目になるとメーター内のインジケーターがひたすら点滅する。リセットすれば一旦はおさまるが、また暫くすると再発する。バッテリーの電圧不足だから新品に換えれば直るとか、エア抜きのところから注射器で押したり引いたりすれば直るとか色々言われてはいるが、結局どうにもならなかった。
対策としては大きく以下に分かれる。オドメーターと違い「分解して自分で直す」は不可能に近いようだ。
1. ABSユニットを新品に交換する。
2. ABSユニットをリビルド品に交換する。
3. ABSユニットを取り払い、ブレーキラインを直結する。
4. 見なかったことにする(メーター内のインジケーターはゴニョゴニョして車検は通す)
正統派は1.だが、これは金額的にありえない。何しろモノタロウ価格はコレだ。俺のKが3台買える。
比較的メジャーな対策は3.だと思われるが、これをやるには懇意にしているバイク屋が必要だ。ブレーキラインの現物合わせ製作を頼めるようなツテはない。自分でやれるとも思えない。
そこで、さらにメジャーな4.に落ち着いていた(それ以上のことをやる気がなかった)のだが、たまたまABSユニットのリビルド品を譲っていただくことになり、2.をやることになった。
このリビルド作業を日本国内で請け負っているところはなく、米国アイダホ州のMoscowというところにあるMODULEMASTERという会社がやっている。ABS2のリビルド料金は$350。新品価格と比べたら十分適正価格と言える。
しかしこれも一筋縄ではいかない。これをやるには壊れたユニットを送る必要がある。つまり、ブレーキ無しのK1100RSを暫く放置できる場所が必要で、これまた非現実的だったのだが、リビルド済みのユニットがあるなら話は変わってくる。
ほどなくしてユニットが届いた。専用に作ったと思われる梱包材を使ってきっちりと梱包されている。
早速やろう…と言いたいところだが、どういうわけか暫く週末に予定が入り続けていて時間の余裕がなく、先送りになっていた。
交換作業
基本的には外して付けるだけ(だと思われる)なのだが、いかんせん外す部品が多いとか、ブレーキオイルを抜いたり入れたりするとか、作業量が多そうなので、作業時間としては丸一日確保しておきたい。なかなかその時間がなくて先送りになっていたが、2月下旬になってようやく色々と条件が合う日が来た。
寒い雨の日ではあったが、倉庫からVespaを外に出して雨ざらしにして、Kの作業場所を確保した上で交換を開始した。
まずはブレーキオイルを抜く。なんとなくリヤ側から始める。フロントも同様。
ユニットを固定しているボルトを抜く。下の方にある前後2箇所は普通のキャップボルトだが、特に前側が奥まっていてやりづらい。長いボールヘッドの六角レンチが必須だ。そして後ろの上の方にあるトルクスボルトを抜く。Vespaもそうだが、なんで外車はすぐトルクスを使いたがるんだろう。面倒だからやめてほしい。
ブレーキラインを抜く。使うスパナは11mmだったり10mmだったりするし、ネジ径も違う。間違えないようにしているのだろうけど、燃料ポンプの電極なんかとは違って、ここは間違えようがないと思うのだが。
ABSユニットに刺さっているデカいコネクタを抜く。角度的にすごく抜きづらい。
ここまで来てようやく気づいたのだが、ユニットにメインハーネスから伸びているケーブルが直結されている。
何だこりゃ、と思ってリビルド済みの方を見てみたら、何もケーブルは出ていないが、いかにもケーブルが通りそうな切り欠きはある。そして、それを覆っている蓋の上の方に、怪しい穴が空いている。
多分これは蓋で、どうにかやれば外れるに違いない。色々試したが、結果的には上にスライドして外す方式だった。ずらしてみると電極が顔を出した。
そうとわかれば話は早い。いま付いている駄目なやつも同じように外そうとするが、全然外れない。あの穴には意味があるようで、ここに突起があってロックされる仕組みになっているようだ。ここを開けることは何も考えていない作りだ。しかし今はこの蓋を開けたいのだ。
この丸いポチをドリルで削る。
この穴に、オイルシールのピックツールを突っ込んで強引に上方に蓋をずらすと見事に外れた。
これでようやくユニットを外すことができた。
リビルド品の取り付けを始める。外すのと逆にやるだけだ。
ケーブルを繋ぎ、あるべき場所に移動させ、巨大なコネクタやブレーキラインを繋ぐ。
ここで一休み。昼飯にする。長丁場の作業の昼飯は大抵カップラーメンだ。なんとなく九州名物にした。また行くことはあるのだろうか。
作業に戻る。取り付け自体は終わっているので、あとはブレーキオイルを入れるだけ。下手糞なのでちょいちょいオイルを漏らしてしまうが、とりあえずエア抜きまで終え、各部の増し締めをして作業終了。
なんとなくフロントブレーキのタッチが良くなった気がするが、気のせいかもしれない。早速乗りたいところだが、雨が降り続けているのでやめておく。
試乗結果
翌日、雨が上がったので試乗を兼ねてプチツーリングに出かけた。前日に感じていた「タッチが良くなった」という印象は同じで、以前は若干スポンジーだった(最奥まで握っても、まだじわじわと握り込めそうな感覚が残る)のだが、それが無くなっている。ブレーキホースをステンメッシュに変えても改善しなかったスポンジーさが、ユニット交換で改善された。
ABS効果を体感できるほどのブレーキングをしていないので、実際に効くのかどうかはわからないが、普通に走っている限りは明らかに良化しているので、替えた効果はあったと言えそうだ。
当たり前だが、ABSユニットからのエラー信号は発生しておらず、メーター内のインジケーターがつくことも無い。以前はエンジン停止・再始動後の出走時に頻繁にエラーになったが、この日の68km走のプチツーリング中(途中10回以上は停止・始動)に、その症状が再発することは無かった。
最初に話を戻すと…
2. ABSユニットをリビルド品に交換する。
3. ABSユニットを取り払い、ブレーキラインを直結する。
3.の対策も素人にはそれなりに難易度が高い(懇意のバイク屋に頼めるなら問題ない)のに対し、$350+送料で2.を実現できるなら、ABS機能を維持するという観点でも悪くないと思う。ただ、こちらも物理的な場所の問題や、米国とのやりとり等、色々と敷居が高いのは事実で、今回たまたまリビルド済みのユニットを譲っていただけた幸運に感謝するしかない。
まだ68kmしか走っていないので、本当に信じていいのか判断できかねるが、今回換装したのはテキトーな中古品ではなくきちんとしたリビルド品だ。基本的には信じて問題ないと思われる。
プチツーリング記録
これ以降はプチツーリングとしての記録。
三連休のうち、この日だけが晴れ予報ということもあって道路はどこも混んでいた。試乗なので遠くに行くつもりもないので、慣れている三浦半島一周に出かけた。
ブレーキのテスト(停止・再始動の回数を増やしたい)も兼ねているので、結構な頻度で路肩に停め、ブレーキオイル漏れが無いかを確認したり、写真を撮ったりして遊んでいた。結果的には特に問題はなく、極めて普通に68kmを走り終えた。
goodjobですね~
goodjobですね~
ワタクシはユニットを引き継いで交換作業をしただけで、実質的には月光さんのGreat jobですね。
あれを外して米国まで送る勇気はなかなか出ません。
素晴らしい作業ですね!
私のK11RSも同じ状態なので大変参考になりました。
ただ直結するのもアリかなと思っています。
勝さん
大変ご無沙汰しております。
直結用のブレーキホース作成が比較的容易にできるなら、それで全然OKだと思います。
ABSが本領を発揮する可能性はあんまり大きくないでしょうから…
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