全塗装なんていうメンドクサイことは、やらなくて済むならやりたくなかった。素人が多少がんばったぐらいではあまり良い結果は得られないということは、過去に何度かやって判っている。それでもやってしまったのは、壊れ方がよろしくなかったからだ。
きっかけ
台風や爆弾低気圧により、俺のK1100RSは3度もぶっ倒れた。1度や2度ではない、3度だ。
自分でコケたのはたった1度、津軽半島の高野崎駐車場から出る際、道路の段差に前輪を乗り上げた状態で停止してしまったために足が届かず、立ちゴケ同然に倒れてしまった、あの1度だけなのだ。それなのに、俺のK1100RSのアッパーカウルは補修によるヒビだらけで、ミドルカウルもアンダーカウルもガリガリになってしまった。
所詮はバイクだ。長く乗っていれば倒れたりぶつかったりもする。1度も転倒しないまま廃車を迎えるバイクなんて殆ど無いだろう。バイクは飾り物ではなく乗り物であり、走っていれば傷だらけなのが当たり前。大抵のことは「まあしょうがない」で諦めがつく。
しかし、それが自責なら納得できるのだが、その傷のほとんどが暴風での転倒に依るものとなると少々異なる。ホンダやマツダのパールホワイトが混ざって斑色になったカウルを見ていると、とにかくガッカリする。とても「しょうがない」とは思えないのだ。それも1度や2度じゃなくて3度ですよ、しつこいようだけど。
アッパーカウルが割れた時は、さすがにうんざり気味になり手放すことも一瞬だけ考えたが、今はその気はない。とりあえず、このカウルをどうにかしたい。
揺れる方向性
オークションにパールホワイトのアッパーカウルが出てくるのを待ちつつ、ヒビが入ったままのカウルで出かけているうちに「もうとにかくこのカウルをさっさと外したい!」という気持ちが抑えられなくなってきた。
他色のアッパーカウルを入手して塗るという手もあるが、他のパーツと同じパールホワイトに塗ることは素人作業では少々難しい。それならカウルなんて外してしまってネイキッド仕様にしてしまえばいいのだ。素のK100だってほぼノンカウルなんだし、寝かされたエンジンがデーンと見えるその姿は、迫力があって案外いい感じなのだ。
しかし、ネイキッド化はそんなに簡単ではない。アッパーカウルを取り払うということは、そのカウルに関係する部品を別の何かに取り替えるということに繋がる。ノーマルK100やK75Cのカウル類を装着するという手もあるが、個人的にはあまり好きな形状ではない。汎用品のライトやウインカーを付けることになるが、ウインカーのコネクターなんていう些細なことが障害になり、それほど単純な話でもない。ミラーはハンドルマウントになるが、これはR1100用、ハーレー用等が使える。それに加えて、やっぱり小さくてもいいから汎用のビキニカウルを・・・なんて妄想しつつ資金計画を立ててみると、これだけで意外とお金がかかることが判る。
そうなると、アッパーカウルを格安で入手し、板金屋で塗ってもらってもそれほど変わらない結果になる。ミドルやアンダーをどうするのかという課題は残ったままだが。
こうやって妄想している時間は案外楽しい。しかし、妄想しているだけでは、カウルを見るたびに発生するゲンナリ感は解決しない。
倒れる前提で考える
直すことはいいが、それだけでは困る。4度目の転倒を防ぐ対策も考えておかなければならない。2度あることは3度あった。ここに停めておく限り、バイクは風で勝手に倒れるものだという前提を置かざるを得ない。つまり、倒れてもオンボロにならないようにしておけばいいのだ。
最も手っ取り早い手段は、常時パニアケースを装着しておくことと、クラッシュバー(エンジンガード)の装着だ。これがあればアッパーカウルの損傷を防げる可能性が高まる。
Kシリーズには伝統的にクラッシュバーが純正で用意されており、K75やK100は勿論、K1100LTには装着車も多く見られる(1200以降どうなったのかは知らない)。しかし、K1100RSは、そのカウル形状のせいで、オプションとしても用意されていない。クラッシュバーを装着したければ、アンダーとミドルのカウルを外さなければならない。カウルをつけたままクラッシュバーを装着する実験(カウルへの穴あけ必須)をする勇気は俺にはない。
普通だったらここで妄想は止まり、クラッシュバー案は葬り去られるのだが、上述のようにネイキッド化改造さえも視野に入れていたこと、そして何より「倒れる前提で考える」必要があることから、このクラッシュバー装着案は俺の中では優先度の高い案として生き続けていた。
出品物で決まる
何となく決め手のないままの日々が続く。見るたびに萎えるのは事実だが、乗れないわけではない。つまり改造する必然性は無いのだ。何らかのきっかけが無いと話が進まないのだが、そのきっかけがやってきた。
K1100LT用のクラッシュバーがオークションに出品されたのだ。値段は即決価格で5000円。新品価格だと万単位するものなので、悪くはない。そんなに頻繁に出てくる品物ではないので、出てきた時が買い時だ。そんなピアッツァ乗りの格言が頭を過ぎり、それほど深く考えずに落札してしまった。クラッシュバーを使うかどうかを決めてもいないのに…
ちなみに、クラッシュバーを装着するために数多くの部品が追加で必要だと知るのは、かなり後の話。後の祭り。
クラッシューバーを付けるということは、今後の方向性として3つ考えられる。
- K100RS用のアッパーカウル、ミドルカウルを付ける
- アッパーカウルだけの状態にする
- ネイキッド仕様に改造する
落札時点では、いずれかと言うとネイキッド化に傾いていた。K1100RS用のアッパーカウルは、程度が良い(割れていない)ものはあまりオークションに出てこないし、出てきても高い。品番を調べると、K100用も同じものらしいのだが、これもあまり出てこない。そこで、安物部品を寄せ集めてネイキッド化改造する方向に進みかけたところに、K100RS 2V用のアッパーカウルが4500円で出品された。
割れていないようなので程度は良い。但し色は紺だ。コレを落札するともれなく全塗装が待っている。ネイキッド化ならとりあえずパールホワイトのままでも何とかなる(形状が異なっているサイドカバーをどうするかという問題はあるが、まあ無くても走れる)。
全塗装のメンドクサさは重々承知している。できれば避けたい。しかし、そもそも俺はK100RSのアッパーカウル形状が気に入って乗るようになったのであって、自分にとっては縦置き4気筒エンジンと同レベルで、Kに乗り続ける重要な要素なのだ。やはりアッパーカウルは必要だ。少しずつマインドがそちらの方に流れていき、競合は誰も現れずに4500円のまま落札した。
方向性を決める(自ずと決まる)
クラッシュバーとアッパーカウルは買ってしまった。ということは、
- K100RS用のアッパーカウル、ミドルカウルを付ける
- アッパーカウルだけの状態にする
ネイキッド仕様に改造する
のどちらかになる。
防風性能や純正らしいまとまり感を考えれば、やはりミドルカウルはあったほうがいい。ただ、人それぞれだとは思うが、個人的には、K100RSのスタイルの良さはアンダーカウルあってこそだと思っているので、ミドルカウルだけを装着するのはあまり気が進まない。残念ながらアンダーカウルとクラッシュバーが共存できないのはK1100RSもK100RSも同じなのだ。
ミドルカウルを取っ払ってアッパーカウルだけにするとどうなるかは、自分のK1100RSが何度もそういう状態になっているので判っている。案外悪くない。
ミドルカウルを付けないと、ラジエーターガードも装着しないことになるが、まあこんなのあってもなくても大差ないだろう。気になるなら適当な金網でもかぶせておけばいい(こういう妄想をしている時点では、それをどうやって装着するかという課題は黙殺され、後になって困る)。
結局、アッパーカウルだけにすることにした。勿論「ミドルカウルとラジエーターガードを塗らなくて済む、勿論買う必要もない」という、メンドクサさが先に立った理由である。
そうすると、どうしても全塗装せざるを得なくなるのだが、これは仕方がないので諦める。塗装対象が少なくなるだけマシだと思うしかない。
そして、どうせ変えるなら、トップケースを装着しないことにした。積載性は明らかに落ちるし、不便にもなるけど、せっかく見た目重視にするのなら後付け感の著しいトップケースは無い方がいい。
こうして主に出品物の都合により、ようやく方向性が決まった。
あとは作業するだけなのだが、その前に部品集めをしなければならないのであった。