ピアッツァ ワンオフマフラー 製作顛末記

プロローグ

「マフラーなんとかしたほうがいいよ」

ピアッツァの車検や整備は、大抵茅ヶ崎の巨匠のところに持っていっている。そのたびに言われるのがこの台詞だ。

元々排気ガスがガソリン臭い症状はあった。何年か前からマフラーからカラカラという音が発生し始めた。ここ最近は、明らかに排気漏れ感の漂う豪快な音を響かせるようになった。

排気音自体はそれほど悪いものではない(うるさいけど)。そこにビリビリビリという金属音が交じるのが不快なのだ。ただでさえすぐに壊れそうな不安感が漂う車なのに、それをますます助長させるビリビリ音が気に障るのだ。

ちょっと前の横浜オフで都筑PAに到着した際、そのあたりでダベっていた面々が一斉にこちらを見て笑っていた。

笑う対象はもちろん排気音である。他にも笑うポイントはたくさんあるかもしれないが、到着した瞬間にわかるものなど排気音ぐらいしかない。さすがにパッと見でわかるほどサビサビではない。

この車も、来年1月には車検を通さねばならない。

そこで思い出すのは例の巨匠の言葉だ。
さすがにこれはもう駄目だ。諦めた。やらざるを得ない。

選択肢など無い

純正部品が普通に出るのなら、注文して替えれば済む話なのだが、残念ながらそんなものはとっくに無い。

人気車種であれば社外品が存在していることもあるし、中古部品も多少は流通しているかもしれない。

しかし、JR130ピアッツァ用マフラーの社外品なんて存在しないし、製造後30年以上経っている(途中で交換していればその限りではないが)中古部品を買ったところで、早々に駄目になるのは目に見えている。

そんなわけで、選択肢はワンオフ製作しか無いのだ。ピアッツァに限らず、不人気な旧車ならどれも同じ話であろう。

後日談となるが、SOPでマフラーを製作していることを教えていただいた。
JR120用だが、JR120用触媒に交換すればJR130にも装着可能とのこと。
JR120とJR130では、バンパーの関係でサイレンサーの大きさが異なるが、JR130用の小ぶりなものも用意されているところが素晴らしい。

今回はワンオフ製作で勝手に盛り上がっていたのでそのまま突き進んでしまったが、最初から知っていればこちらにしたかもしれない。
今後マフラーを替えようという方は大いに悩んでください。

どこで?

ワンオフ製作なので、マフラー製作工場にクルマを持ち込んだ上で、現物合わせで製作してもらうことになる。

メリットは、自分の好み(形状、音量、音質etc)にできること。
デメリットは、特注なのでその分お値段が高いこと。
ただ、くどいようだが今回は他に選択肢がない。
メリットの方を楽しむしかないのだ。

大量生産の工業製品ならメーカーと品物を選ぶことになるが、ワンオフの場合は工場選びがそのままマフラー選びになる。ネットで検索して神奈川県内のマフラー屋さんを探す。そんなにたくさん出てくるわけではないが、それなりに見つかる。

市販品であれば品質・性能・価格あたりを重視すると思うのだが、「同じ車でワンオフマフラーを各社で作って比較した人」など存在しないだろうから、そんなものは比べようがないし、工場によって極端に変わるものと思えないので、それらはあまり重視しないことにする。

ダラダラ見てばかりいても決め手がない。そこで自分なりに基準を設けることにした。

  • いろいろやっていてマフラーもやるよ、という工場より、マフラー一筋xx年、みたいな工場
  • 商売熱心で手広く多数こなしている工場より、1台の車に向き合ってくれそうな工場
  • できれば自宅〜会社通勤圏内もしくは周辺

結果として選んだのが港北IC近くにあるEAGLETEC(イーグルテック)である。

奇しくも毎度おなじみハトリックスこと羽鳥板金工業所のすぐそば。それによって何となく親近感のようなものが湧いたことは否定しない。また、Webサイトのトップにあるキャッチコピーに、妙に心を惹かれたことも同じく否定しない。

診断

Webサイトに問い合わせフォームがあったので、ワンオフ製作を依頼したい旨を伝えた。返信はすぐに来た。

一度実車を見てみたいとのことだったので、日程を調整し、タイヤ交換と同じ日に持っていくことにした。

タイヤ交換は10:30、EAGLETECは15:00という予定だった。空いた時間で綱島の塗料のオカジマに行く。缶スプレー調色依頼をして時間を潰し、EAGLETECに向かう。

工場に着いてピアッツァを停める。

出てきたのは代表の英国紳士ことピーターさん。車を見るなり排気臭のことを指摘される。これは触媒が駄目だねえ、と。

早速リフトに乗せて下から覗き込む。もう見るからにボロい。元のスチール部分が全く無いほど、全て錆びている。そして、マフラー以外は思ったほどボロクソでもないことに、別の意味で驚く。

一般的にはリヤだけ、センターだけ、といった選択肢もあるだろうけど、これを見る限りその選択肢はない。全部替えるしか無い。

排気臭の時点で見え見えだが、触媒も替えるべきだとのこと。トヨタか日産の中古品を流用して装着するとのこと。

触媒みたいな、機能的には重要であっても、個人的に全然重要じゃない部品は、機能性さえ満たしていれば十分なので、そのような話は大いに助かる。ここはお金をかけたいところではない。

個人的にはマフラー以外も色々気になるので、持ち上げたついでに色々見てみる。

困ったことにモノコックに1箇所穴が空いていたりするし、燃料フィルター固定部が朽ち落ちていて金属バンドで固定していたりする。ちょっと前にハトリックスで直してもらったサイドシル近辺も、早くも塗装の奥から錆が顔を覗かせている。

こんな状態でも、入手してから20年、どうにかこうにか形状を保ち続けていることに驚く。全体的には、想像していたよりマシだった。絶対値としてはかなりボロいのだろうけど。

ざっと見てみたところで見積もりをいただく。
リヤ8万円、センター7万円、触媒(中古)4万円、計19万円(税別)。

比較対象がないので、高いのか安いのかはなんとも言えない。他車用含め、普通に売っている社外品マフラーの値段+工賃と比べ、大きく差があるかというと、極端な差はないような気がする。

そして何より、このピアッツァはボロいのだ。そのへんのクルマとは違う。各種のボルトやO2センサーはとにかくサビサビで、簡単には外れそうにない。そういった余計な労力も必要になる。それに加え、触媒は他社流用の現物合わせだ。

これだけ悪条件が揃った車なのだから、明らかに他車より作業コストが高い。そのことを考えれば、この価格は妥当だろうし、別の工場でもおそらく大差ない。

EAGLETECさん的には
「見積もりを持ち帰ってご検討ください」
といったところだったと思うが、これまでの会話の流れ等から、信頼して頼む価値があると感じられたので、もうこのまま頼んでしまうことにした。

今後の流れなどを確認する。11月下旬〜12月上旬ぐらいに入庫することで合意。時期が来たらまた連絡するということで一旦帰宅する。

入庫

数日後に連絡があり、できれば11/28(木)の午前中に入庫してほしいとのこと。思ったより早かった。

急ぎの仕事もなかったので、午前半休して9:30に入庫することにした。

そして当日。
EAGLETECの前に塗料のオカジマに行き、調色済みスプレーを受け取るつもりだったのだが、寝坊と渋滞によりその目論見はあえなく崩れ、そのままEAGLETECに直行する。

なんとか時間通りに到着。
ピーターさんが作業着で待ち構えていた。早速ピアッツァをリフトに載せる。

周りに置いてある部品をあてがって、テール形状とサイズを決める。形状はほとんど議論の余地なく単なるストレートパイプに決定。サイズは、純正は55mm。ピーターさんは何も測ることなく目視で断言する。60mmだとほとんど同じなので面白くない。結局70mmにした。

長さはこのぐらい、バンパーとの間隔はなるべく詰めてこのぐらい、といったようにいかにもワンオフらしい事柄を決める。音量は「控えめ」でお願いした。

ある程度決まったところで、ピーターさんはおもむろに作業を始める。どう見ても緩まないネジは全く外そうともせず、バッサリと切断機で斬る。そしてゴム部をこじってマフラーを外す。

外してみてわかったことだが、タイコの前に新たな穴とヒビ割れがあった。これがあの音の元凶か。これはもう大往生だろう。35年間ありがとう。

面白いのでそのまましばらく作業を見ていたが、あまりジロジロ見られていてもやりにくいだろう。適当なところで去ることにする。翌週の月曜か火曜には引き渡せるとのこと。

最寄り駅の小机駅には向かわず、横浜市バスで大倉山に出て、さらに綱島まで歩く。塗料のオカジマに寄り、スプレーを受け取ってから帰宅する。

ご対面

作業は順調に進んだようで、火曜日の夜、仕事帰りに取りに行くことになった。そわそわしてしまって微妙に仕事が手につかない。

横浜線で小机駅に向かう。そして駅からは徒歩。駅前なのに何もない。港北ICあたりまで、畑の中を街灯すら無い道を歩く。だだっ広いので余計に遠く感じる。

20分ほど歩いてEAGLETECに到着。ピカピカのマフラーが装着されたピアッツァは、まだリフトの上であった。

真新しいマフラーを下からジロジロと眺める。錆びた下回りにステンレスのパイプは明らかに浮いている。どう見てもマフラーの方がボデーより長生きしそうだ。仮にこのピアッツァが朽ち果てても、マフラーだけは誰かにもらってほしいものだ。

使われている触媒はトヨタや日産ではなくロードスター用だそうだ。外れなさそうだったO2センサーは普通に外れたので再利用したとのこと。

リヤのタイコとテールは実に格好良い。70mmというサイズは絶妙だった。大きすぎず、過度に純正チックでもない。程よいスペシャルパーツ感がある。そしてバンパーとの隙間も良い感じだ。センターのサイレンサーが随分小さいが、こんなので大丈夫なのだろうか。


始動

見栄えを楽しんでいたところで、おもむろにピーターさんがエンジンを始動した。

……音がデカい。これが英国紳士基準の「控えめ」か(笑)

サイレンサーの大きさからして、そりゃそうだろうなあ、という感じではある。しかし、ズッシリと響くような音質は実に良い。3000ccクラスの排気音に感じられる。

今更音量を下げてほしいと言ったところでどうしようもないのは判っている。まあこんなもんだと思うことにする。しつこいようだが音質は素晴らしい。だからこれで良いではないか。

クレジットカードで代金を支払う。見積額そのまんまであった。
所要日数(木・金・土・月)からして、実際はもっとかかっているのかもしれない。

iPadと無線のカード読み取り機を使い、領収書はメール送付。意外なところで近代的だ。クルマ屋さん関係は大抵アナログ一本槍なのだが。

出走

さて、そろそろ出かけるか。

運転席に乗り込み、エンジンを始動する。いつもの癖でアクセルを煽りながらキーを捻る。

ブゥオン! やっぱり音がでかい(笑)。

ピーターさんの誘導によりバックで路上に出る。その過程で、ブレーキランプが片方死んでいると指摘されてしまった。こんなところでオチがつくとは。

ソロソロと交差点まで出る。ATのクリープで走っている分には、音量は大して変わらない。T字路を左折してアクセルを踏み込む。

速い!
何だこりゃ。すげー速い。全く同じG200Wエンジンなのに!?
今までは一体何だったんだ??

音量のことが忘却の彼方へ飛んでいってしまうほどの速さ。笑うしかない。なんなんだこの速さは。

ステンレス化と触媒小型化で軽くなったとは言っても、せいぜいペットボトル数本分程度。幼稚園児一人分。それだけでこんなに変わるか?

ついこの間タイヤを替えて、空気圧が高めに設定されているのは確かだ。だから多少キビキビしている部分はあるかもしれないが、そんなレベルではない。

なんだかわけがわからないまま前に進む。一旦落ち着いたほうが良い気がしてきた。ブレーキランプの球を確認することも兼ねて、すぐそこのコーナンに寄ることにする。

サウンドチェック

コーナンの駐車場に停め、エンジンを掛けたまま後方に回る。当たり前だが、アイドリング中の排気音は先ほど聞いたものと同じ。これでは面白くないので、ドアを開けてアクセルを踏む。あ〜〜〜、これは良い音だ…(うるさいけど)

続いて、ボンネットを開けてスロットルを手で開けてみる。しかし、エンジン音の方が大きいのでよく聞こえない。これは無意味な行動だった。

平日夜で客が少ないとはいえ、あんまりブォンブォン言わせるわけにもいかない。エンジンを止め、ハッチゲートを開けて球切れ状態を確認する。

ブレーキランプの球は真っ黒になっていた。そしてテールランプもいかにもすぐ死にそうな状態だった。これは使い物にならない。両方とも交換する。

興奮状態も収まってくると、徐々に腹が減ってきた。すぐそばのロピアに寄り、菓子を買って貪る。そして帰り道を調べて帰路に着く。

走行感

港北から新横浜へ向かう道、そして環状2号と、だだっ広くて真っ直ぐな道を走る。

アクセルを踏まない限りは、穴あき純正マフラーそれほど変わらない。踏み込んだ途端に、これまでとはぜんぜん違う乾いた低音が鳴り響く。古い車ゆえ、防音処理もショボいのだろう。室内にガンガン音が入ってくる。しかし、以前の不快なビリビリ音に比べると、こちらのほうがはるかに良い。

まあ、運転手以外の乗員がどう思うかはわからないが…

そして信号待ちからの発進時など、ちょっと踏むとドンと前に出る。古くて鈍重なクルマだったピアッツァが、一気に別のクルマになってしまった。アクセルを踏むのが実に楽しい。元々悪い燃費がさらに悪化しそうだ。

とはいえ、これはあくまでゼロ発進の時の話。ちょっとした登り坂等では、いくら踏んでも音がデカいだけで全然進まない。これは単純にエンジンパワーやら何やらの問題であり、元々そういうものだ。

問題点もある。
元々4気筒にしてはアイドリングにしろ回転上昇にしろ、スムーズさを欠く状態だったのだが、それが目立ってしまう結果になった。妙に鼓動感を感じさせる状態になっている。Vツインじゃあるまいし、鼓動感なんて不要だ。

エンジン本体は元々バランス取りまでされたものを譲り受けている。更にその後ニッパオヤジの手によりヘッド周りをOHしており、それからせいぜい10,000km程度しか走っていない。疑うべきはエンジン以外だ。吸気系、点火系。とりあえず自分でやれるところからやってみるしかない。

エピローグ

自分の意志ではなく、不可抗力(経年劣化が酷い、そして純正部品がない)によりワンオフでマフラーを制作することになったのだが、結果的には大変満足している。久しぶりにピアッツァに対して高揚感を感じている。何故だかわからないが、単純に楽しい。ここ数年、否、ここ10年以上、正直言って楽しさよりも維持することの義務感の方が上回っていた気がする。

マフラー交換というものは、ちょっとクルマ好き、バイク好きであれば大抵一度は考えるものである。

20年以上前、当時乗っていたGPZ900Rに、貰い物のU.S. YOSHIMURAマフラー(ほぼ直管)をつけていたことがある。激しくうるさかったが、プラシーボ効果も含めてパワーもグンと上がった。あれはあれで面白かった。SRX400につけていたSUPERTRAPPも鼓動感満載で良いものだった。

しかし、ことJR130ピアッツァに関しては、「いかに維持し続けるか」ということばかり考えていたので、マフラー交換に限らず性能向上のことなど二の次、三の次であった。実際、たまたま巡ってきたエンジン交換、ミッション交換以外は何もしていない。

そんな中で実施したワンオフマフラー製作。これほどまでに大きく変わるとは、大変な驚きだった。これまでにない感覚、体験だった。今後のJR130ピアッツァに対する向き合い方が少し変わるかもしれない。

とはいえ、次にやることは給油口近辺やミラー近辺の錆取り&スプレー塗装と決まっているのだが(苦笑)

今回製作を依頼したEAGLETECさんには好印象しかない。何より、楽しそうに仕事をしているのが一番良い。もちろんマフラー自体の仕上がりも満足いくものだった。

マフラーの新規製作に限らず、他社製品の修理だろうとなんだろうと、何でもやってくれるとのこと。こういう工場は貴重だ。たまに英国に帰国してしまって暫く不在になるようなので、作業依頼や調整はお早めに。

One-off Muffler, THE MOVIE

調子に乗って動画を作った。スマートフォン単体で見ると音質が超貧弱になるので、ヘッドフォンまたはPC&スピーカー推奨。

どうでもいい話だが、One-offは和製英語かと思ったら、英国では通じるらしい。米国人はポカーンとするそうだが。

Photos

動画用の画像と同じもの。

「ピアッツァ ワンオフマフラー 製作顛末記」への2件のフィードバック

  1. ピンバック: タイヤ交換(GOODYEAR GT-HYBRID) | sabitori.com

  2. ピンバック: ピアッツァ 前後ショックアブソーバ交換 | sabitori.com

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