ピアッツァ 前後ショックアブソーバ交換

「このピアッツァには前後ビルシュタインが装着されている」

そんな謳い文句に踊らされて、錆びまくっているJR130ピアッツァXEを結果的に3万円買ってしまったのはもはや20年前、前世紀の話であるが、その時点で既にボヨンボヨンだったそのビルシュタイン(かどうかはわからない)を、遂に交換することにした。

前々から替える気はあったが、あくまで気だけであった。そこで遂に踏ん切りをつけたのは、マフラー交換で気分が高揚していたからだと思われる。

ちなみに、前オーナーの言うところの「ビルシュタイン」が「ビルシュタインだかなんだかわかんないですけど、純正じゃないっぽいショックがついていますよ」に変わったのは、既に買うことに決めたあとの話である。

ショックアブソーバ購入

そりゃあビルシュタインが良いのは判っちゃいるが、とっくに役割を果たしていない部品を替えるのだから、とりあえずピンキリのピンで十分だ。ショックアブソーバにおいてピンと言えば、米国で売っている純正交換用のアフターパーツである(米国じゃなくても売っているだろうけど、一番買いやすいのが米国)。以前交換した際は米国旅行してきた人に$16/本ぐらいで買ってきてもらったのだが、今回は潔く通販にする。

但し20年前とは違って選択肢が限られている。リヤはある程度の種類があるが、なぜかフロントがほとんど見つからない。唯一見つかるものがACDelco製品である。まさかACDelcoが自分でショックなど作っているとも思えないので何処かのOEMだろう。

早速注文しようとしたが、困ったことにACDelcoのショックをフロント・リヤともに在庫を持っている店がない。特にフロントの在庫を持つ店が限られている。そこで完全に消去法なのだが、amazon.com にてフロントACDelco($27.74/本)、リヤKAYABA Excel-G($15.90/本)という組み合わせで注文した。本来なら前後ACDelcoの方が気分的に良かったのだが、性能的にはどうせ純正リプレース用なので大差なかろう。ついでなので、スタビのエンドブッシュも注文しておく($9.55)。

注文時に表示されたデリバリー予定日は2020年2月〜3月であった。在庫があるはずなのに何故そんなに先になるのかは不明だ。たまにOrder statusを見たりしていたがあまり状況が変わらず、statusを見る頻度も落ちた頃に突如リヤショックだけが発送された。さらに数日後、フロントショック、ブッシュがそれぞれバラバラに発送された。せっかく複数個同時に注文して送料を節約したかったのに、苦労(というほどのものではないが)が水の泡だ。それなら別々の店でACDelcoの前後を買えば良かったと思っても後の祭りである。

まあいい。どうせ性能的には大差ないのだ。ほどなくして品物は日本郵便の手により届けられた。まさか年内に届くとは思っていなかったが、それにより年末年始休暇に作業できる機会が与えられた。高い送料を払った甲斐があったというものだ。

ショック交換(リヤ)

ピアッツァの前後ショック交換は比較的簡単で、プロに頼むレベルの作業ではないことは、20年以上前にIrmscherで体験してわかっている。確か雨の日だったのだが、どうしてもその日に交換したかったので、某ショッピングセンターの屋根付き駐車場の片隅で作業した。今になって考えると滅茶苦茶な話である。そのとき装着したGABRIELのショックは比較的短命に終わり、続いてIrmscher純正ショックに交換した。

仕事が暇だったので少し前倒しで突入した年末年始休暇。たまたま暇な1日が発生したので、天気は微妙だったが作業してしまうことにした。

なんとなくリヤ側から始める。トランクから荷物を出して、最初にやるのはこの儀式である。

前回水をかき出したのは2年か3年前の気がする。それだけ放置してこの程度で済んでいるのはハッチゲート交換の効果だ。

そしてまずトランクに土足で入り込み、上側のナットを緩める。錆びているのでWD-40を吹きかけて慎重に緩める。なんとなく少し緩めるだけでやめてしまったのだが、ここで外れる直前までナットを緩めなかったのは失敗だった。

ジャッキアップしてタイヤを外し、リヤショックとご対面。純正ではないことはわかるが、ビルシュタインなのかどうかはよくわからない。まあもう使わないからどうでもいい。さっさとロア側のボルトを外す。こちらは特に固くもなく普通に外れた。

そしてアッパー側のナットを緩めるのだが、錆びているせいで固い。ジャッキアップする前に極限まで緩めなかったため、ここで苦労する。ジャッキアップ状態の車のトランクに乗り込むのはあまり気がすすまないので前のめりでナットを緩めるのだが、体勢がよろしくないので腰と背中がとにかく疲れる。

ようやくナットが外れた。ロア側をずらして外してショックを抜き取る。古いショックが外れたので、新しいショックを箱から出す。安物とはいえ新品は気分が良い。ただ、MADE IN JAPAN製品をわざわざ送料を払って米国から輸入する違和感は拭えない。

この製品にはブッシュが2個、ワッシャーが3個、ナイロンナットが1個ついているのだが、全て形状が違っており、取り付け方がよくわからない。説明書はあってないようなもので、様々な製品の取り付け方を絵で示すものが1枚の紙にたくさん書いてあるだけのものだった。古いものと見比べたり、色々と組み合わせたりしているうちに最良の組み合わせが見つかったので、その方針でショックを差し込む。

アッパー側にもワッシャー、ブッシュを装着してナイロンナットを締める。緩め防止のダブルナットではなくナイロンナットになっているのは現代的だ(というほどでもないが)。そしてロア側を規定トルクで締める。ここまで来てようやく整備書を見た。4kg-mという単位が時代を感じさせる。

ホイールを装着し、規定トルクで締めて終了。続いて左側も交換。こちらはロア側が外れにくくて少々苦労したが、それ以外は右側と同じであった。アッパー側のナットが錆びていてなかなか外せなかったことまで同じ。シャシーやら何やらに錆が見えていることが気になってしょうがないのだが、今日の目的はショック交換なので、心を鬼にして見なかったことにして先に進む。

ここまでの所要時間は1時間ちょっと。トランク整理・ジャッキアップ・アッパー側ナット外しなど、あまり本質的ではないところばかり時間がかかる。ショック交換自体はやはり楽勝の部類であった。

ショック交換(フロント)

カップラーメンで昼飯を済ませてフロント側の作業に移る。同じくジャッキアップしてロア、アッパーのボルトを緩める。こちらはリヤとは異なりすぐそこにナットがあるので簡単に緩めることができる。

あっという間にショックが外れた。

確かに一部だけ黄色いのだが、刻印のようなものが見当たらないので正体不明だ。

そしてACDelcoのショックを開梱する。

こちらはMADE IN MEXICOであった。少なくともKAYABAのOEMでは無さそうだ。メキシコに工場があるショックメーカーを調べれば出元がわかるかもしれないが、超無名なところが出てきたらガッカリしそうなのでやめておく。

リヤとは違って、こちらのワッシャーとブッシュはあまり迷う余地がない。さっさと取り付けることにする。ロア側の締め付けトルクはフロントと同じであった。アッパー側は、リヤとは異なりナイロンナットではなかったのでダブルナットにする。ワッシャーの形状の関係で、元々装着されていた17mmではなく、同梱されていた14mmのナットを使い、ロック側だけ元々の17mmを使った。あまり気分が良いものではないので、たまに確認したほうが良さそうだ(幸か不幸か、バッテリー上がり防止のために毎度ボンネットを開けるので必ず見る機会はある)。

フロントは、リヤに輪をかけて簡単であった。これだけだったら左右で45分もあれば終わるだろう。

スタビエンドブッシュ交換・・・ならず

せっかくタイヤを外したので、ついでにスタビエンドブッシュも交換してしまおうと考えるのは比較的普通のことだろう。今回購入したものはフロントショックと同じくACDelco製品である。何故かブッシュが青色なのだが、格好良いので許す。しかも誇り高きMADE IN U.S.A.である。

早速スタビライザー(エンドではなくメンバーに固定している方)の固定ナットを外す・・・のだが、これがやたらと固い。フレームの中空部分に出ているところが錆びている様子で、これが悪さをしているようだ。こんなボルトを折ってしまったら大変なことになるので、WD-40を吹きかけながら慎重に外す。そしてエンドブッシュも外す。

なんとなく外した部品と新品を比べてみると、ボルトの全長が違っていることに気づく。なんともアメリカン・フィーリング。

さて困った。全長が異なる部品を装着して変なところに干渉するのは避けたいが、とりあえず装着してみたい気持ちも捨てがたい。とりあえずやるだけやってみることにした。

しかし、この全長の相違はやはり無理があったようだ。外せたものを装着できない、というのは素人整備あるある話だが、その次元ではないぐらいに入らない。色々と手を変え品を変えやってみたが、このボルトははやり無理だ。

そこで、ボルト類はそのままでブッシュだけ青いヤツに変えようとしたが、ブッシュの厚みが異なる関係でこれも無理がある。一応装着はできるのだが、ナットを締めようにもネジ山が顔を出してくれないのだ。こちらもやれることはやってみたのだが物理的に寸法が異なっているのだからどうしようもない。このブッシュは比較的固く、ちょっと手で押してみてどうなるものでもない。残念だが、これは無理だ。一旦諦めて作戦を考えたほうが良い。

仕方がないので、一旦外したブッシュを元に戻す。幸いなことに、ブチルゴムのように溶ける、というほどまで劣化していなかったので、タイヤローテーションの如く劣化が激しいところと激しくないところを逆にして装着する。これまでの数時間にわたる苦労が嘘のように簡単に取り付けられる。適正寸法って大事だ。

問題は新品の青いヤツをどうするかだ。パイプを切って長さを合わせた上で純正ボルトを使って装着するのが最も妥当な手段に思えるが、そこまでしてつけなくても良いのでは、という気もする。とりあえず現時点では交換必須なほど劣化していないのでゆっくり考えることにする。

ドライブフィール

全てのホイールを適正トルクで締めて試運転に向かう…前に、まず車高が上がっていることに気づく。これまでの劣化ショックによるナチュラルローダウンが解消されて本来の車高になったのだが、率直に言ってカッコ悪い。だからと言ってスプリングを切るまではしたくないので、この見た目に慣れるしかない。

そして試運転。まず家の駐車場から出る段差のところで明らかな違いがある。これまでだったらボヨンボヨンしていたのだが、それが一発でおさまる。それはあらゆる段差で同じことで、荒れ気味の舗装でも弾まずに走り抜ける。

曲がる際の車体のロールも軽減されて乗り心地も良くなっている。また、車線変更や追い越しのような操作も、ステアリング操作に対して的確についてくるようになった。一言でいえば「快適」である。

まあ要するにこれまでが酷すぎただけで、普通に走るようになっただけの話ではあるが、送料込みでも1.5万円程度、作業自体もかなり簡単な部類なので、どうせ比較的早く劣化するであろうこの安物ショック、次は何10年も粘らずにさっさと替えることにしたい。