暗電流対策ならず

このピアッツァの暗電流の約25%をマルチドライブモニターが占めている、というのは以前の調査でわかっており、バッテリーをデカくするというショボい対処療法をしている。

マルチドライブモニターを外す気はないし、いくつか所有しているマルチドライブモニターをどれに入れ替えても暗電流が大差ないので、そういうものだと諦めていたところに「マルチドライブモニター内の電解コンデンサが劣化していることで無駄な抵抗が発生して暗電流を大きくしているのではないか」という説が現れた。

長年暗電流に悩まされているので、そそくさとその説に乗り、電解コンデンサ交換を試してみることにした。

事前確認

手持ちのスペア品を箱から取り出す。実車のセンターコンソールを外し、配線をスペアに移して動作確認する。少なくとも時計と燃料計は動いている。交換ベースとしては問題ない。

部屋に持ち込んで分解作業を始める。早速ネジを外す…と言いたいところだがどこにもネジがない。どうやら外装のヤワい金属フレームを強引に曲げてフロントパネルを外し、後ろから基板を押し出すようだ。なんともよくわからない設計をするものだ。絶対壊れない前提で作ったんだろうか。

左右2箇所ずつの爪みたいな部分を外側に曲げてパネルを外す

後ろの穴から基板を挟んでいるプラ部品を押して基板を抜き出す

出てきた基板は2階建て構造になっているので、プラ部品を外して開いてみる。電子部品とご対面だ。

デジパネコントローラーよりは余裕のある作りになっている

使われている電解コンデンサは7種類・9個。

下の基板に8個、上に1個

そしてコンデンサをネットで注文する。送料の方が高いぐらいの値段だ。送料がもったいなく感じられたので3セット分頼んでしまった。

キャラメルバトル

あとは部品が到着してから…と言いたいところなんだが、その前にやることがある。電解コンデンサは単に半田付けされているのではなく、振動防止のためか、他の部品とセットでキャラメル色の樹脂によって固定されている。この樹脂を除去するのが滅茶苦茶メンドクサいらしい。

とりあえず手持ちのアートナイフで突付いてみたが、何とも中途半端な硬さで扱いにくい。簡単にペロンとは剥がれてくれず、かなりの粘着力がある。そのくせしてネバネバしているわけではなくそこそこ固い。気温が低くて固まったキャラメルのようだ。

ナイフでやっていると手が滑って基板やら何やらを損傷しそうだ。その時、iPhone6sの電池交換をした際のキットにちょうど良さげな工具があったことを思い出した。これは樹脂なので損傷のリスクは下がる。

主にこの細長い棒を使う

このヘラでじわじわとキャラメルを剥がしていく。電解コンデンサを揺すってみて、それなりにガタガタする(樹脂との接合部が剥がれて動くようになる)まで剥がす。キャラメルを除去することが目的ではないので、ガタガタしたところでやめる。これを9本やらなければならない。1箇所やるだけで15分ぐらいかかる。やってられない。

そのため次の手段を探す。時計電池交換用工具セットの中に先端が細いピンセットがあったことを思い出した。これで掴んで剥がすことで多少楽になる。さらに、電解コンデンサ側の樹脂を精密マイナスドライバーでこそげ落とし、その余りをピンセットで掴んで剥がすとさらに楽をできるようになる。こうして9このキャラメル樹脂を剥がした。

救世主ピンセット現る

マイナスドライバーも使う

電解コンデンサ交換

これでようやく普通の電解コンデンサ交換作業に入れる。ちょっと前にデジパネコントローラーのクリスタルオシレーターを交換したばかりなので多少の慣れはある。しかしその時に比べて数が多い(前回2個、今回9個)。

吸取り線を使って古い半田を除去して部品を外し、同じ規格の新品に付け替える作業をひたすら繰り返す。

外した

同規格の新しいやつを装着

ようやく9個(1つどこかに行ってしまったので画像上には8個)

電解コンデンサ交換が終わった基板をフレームに戻して作業完了。なんだかんだで3時間ぐらいかかってしまった。プロならこんなの1時間もかからないんじゃなかろうか。これで動かなかったら悲しい。

装着結果

翌日、修理したマルチドライブモニターをピアッツァに装着してみる。今のやつと配線を入れ替えてキーを捻ると、無事に時計の0:00が浮かび上がった。おぉ、動いたぞ。

色々ボタンを押してみる。どれも動いていそう…なのだが、最後のFUELが問題だ。本来ならガソリン残量が出るはずなのだが、0が点滅している。このピアッツァの燃料計は動いたり動かなかったりするが、今はたまたま動いているタイミングで、デジパネ内の燃料計も、元々のマルチドライブモニターも32Lを示している。しかしこの修理したやつは0点滅。これはおかしい。

0が点滅している

本来こうあるべきなんだが…

再びマルチドライブモニターを分解して基板を引っ張り出し、作業ミスが無いか確認する。電解コンデンサの極性や、取り付け場所間違い等を確認するが問題ない。テスターで各電解コンデンサの導通(半田ミス)を確認したが、これも問題ない。基板のパターンを傷つけて断線している疑惑もあるが、可能な限りテスターで確認したところ問題ない。電解コンデンサの隣のペラペラなセラミックコンデンサを作業中に変に圧迫して壊した疑惑もあるが、少なくとも導通はあるっぽいので、足が折れたとかいうショボい破損は無さそう。47μF 16vのところを、16vが品切れだったので25vを使ったが、多分これは影響無いだろう。

もうやれることがなくなってしまった。仕方ないのでまた組み立てて、接点復活剤を吹いたりしてから再装着してみたものの、当たり前だが結果は同じ。直すつもりが壊してしまうとは。電子工作をするたびに何かやらかして自分に怒っているが、もう怒る気にもならない。

怒る代わりに、ダメの烙印を押した。

自分への戒めである

暗電流は?

そんなわけで燃料計が動かないマルチドライブモニターが出来上がってしまったが、そもそもの目的だった暗電流がどうなったのかは確認すべきだろう。仮に劇的に改善していたら、燃料計には目を瞑ってコレを使うという手もある(そもそも滅多に動かないし、デジパネにも燃料計はあるし)。

早速計測してみた。結果は以下の通り。

旧マルチドライブモニター装着時:54.6mA

コンデンサ交換品:53.8mA

マルチドライブモニターなし:37.1mA

マルチドライブモニター単体で考えると、暗電流は17.5mAから16.7mAに下がった。電解コンデンサ交換したマルチドライブモニター単体での交換前値が無いので正確な比較はできないが、以前の調査だと大差なかったので仮に同じだとすると、電解コンデンサ前後で比べると5%ぐらいしか良くなっていない。うーん、これをどう評価したものか…

結論

数日の期間と、送料合わせても1000円に満たない程度の出費を伴う作業だったが、期待に比べて効果が小さい。単体で5%、全体ではさらに小さい改善しか得られない。労力やリスクを考えると、わざわざやる価値があるとは言えないだろう。

ただ、FUELボタンが動作しない状態なので、どこかになにか変なところがある状態での確認だ。真の評価はこの変なところを解決してから下すべきなんだが、残念ながら自分の実力ではこれ以上は何もできない。渋々ながら暗電流と付き合い続けざるを得ないようだ。

そんなわけで、おとなしく今のマルチドライブモニターを使い続けることにして、センターコンソールを元に戻した。何ともさえない結果になってしまったが、やってみないとわからないことなのでどうしようもない。自分のチャレンジ精神(by 名古屋章)を褒め称えるべきだろう。

とはいえ、結論がわからないのに3セット分の部品を頼んでしまったのはチャレンジし過ぎだった。どうすんだよこの電解コンデンサ。