2023GW 東北ツーリング Day3

耳栓のおかげで、寝付けなかった数10分が嘘だったかのように熟睡し、予定通り5時半に起きた。二段ベッドのマットレスはペラペラだったが特に気にならなかった。疲れていたのだろう。

さっさと朝風呂に出かける。それなりに混んでいる。皆が宿泊していたわけでもないと思うのだが、何故こんな朝早くからたくさん人が居るのか、地方の健康ランドに来るたびにいつも不思議に思う。

ロッカーに戻り、バイク用の服に着替える。よく寝れなかった場合はイマイチ気乗りしない瞬間だったりするが、この日はそんなことはなかった。身支度を整え、フロントで会計を済ませ、ブーツを履いて健康ランドを出る。天気は快晴。直ぐ側の駐輪場の停めたKのトップケースを開け、買ってあった菓子パンを食いながら地図を眺める。

前の日の晩にやっとけと言われると返す言葉がない

今日の予定は牡鹿コバルトラインを走るということ意外はあんまり決まっていない。どこか無理のないところから三陸海岸に出ることになるが、陸前高田や気仙沼から牡鹿半島まで南下するのはさすがに疲れる気がしたので、南三陸の海沿いを目指すことにした。

さて出発…と言いたいところだが、まずはガソリンを入れなければならない。さらにその前に、健康ランドのすぐそばにあるここに寄る。

岩手のチェーン店

コレだけ見ると面白くも何とも無いが、25年前にみちのくひとり旅でここに来た時はこんな面白くないロゴではなく、宇宙戦艦ヤマトのロゴそのものだったのだ。そして当時横手市に在住していたW夫妻と冷麺を食った思い出の場所でもある。

昔はコレだったんだよ。色々ケチがついたことは想像に難くない

建物は同じだが、地味に玄関の場所が変わっていたりする。何があったのだろうか。

今回もここで冷麺を食ってから健康ランドに行くつもりだったのに、謎の胃痛や八幡平降雪撤退事件等により無念の断念を強いられてしまった。まあそんなことをグダグダ言ってもしょうがない。記念撮影だけ済ませてさっさと駐車場を出る。反対側にあるガソリンスタンドで給油し、すぐそこにある北上江釣子ICから東北道に乗る。

岩手県のスーパーに行きそびれたため、代わりに前沢SAに立ち寄って土産物を買う。ついでに、あらためて地図を確認する。

ここは毎回寄っている気がしないでもない

南三陸へは一関ICまたは若柳金成ICで降りて東へ進むことになる。ナビは若柳金成ICを勧めるが、一関ICでも時間は数分しか変わらない。そういう時は一般道を選ぶのが信条だ。そのため、一関ICで降りることにする。

再び走り出し、先ほど決めた通り一関ICで東北道から降りる。Googleナビの言うとおりに淡々と一般道を走る。一関IC周辺だけはそれなりに栄えているが、ちょっと外れるとすぐに東北らしい農村地帯になる。

これもまた東北の代表的な光景の一つ

農村らしい真っ直ぐな道を淡々と走り、ようやく宮城県に入る。

宮城県に突入

北上川沿いを走ったりしながら南三陸に向かう。そして道の駅が現れ、海沿いに出る。道の駅はやたらと混んでいたのでスルーしてそのまま先に進む。

2011年に泊まったホテル観洋の前を通過

そして適当な駐車帯に停める。三陸海岸沿いを走るのはたぶん2011年以来。あれから干支が一回りしているのでだいぶ雰囲気が変わっている。

海は相変わらず綺麗だ

しかし防潮堤により高台以外から海を見ることは事実上できない

ここだけではなく、あらゆる海岸が防潮堤で覆われていて、標高が低い場所からは海を見ることはできない。

防潮堤だけではなく、道路も含めて何もかも嵩上げされていて、国道や県道は新しく整備された広くてキレイな道路が高いところを通っている。そのため道路状況は非常に良く、単純にツーリングロードとして考えれば極めて快適なんだが、それを素直に楽しむ気にはなれない。

被災した地元の方々がそれを望む気持ちはわかるんだが、果たしてこれが最善の策だったんですかね。

ここから先も同じような景色が続く。高所からの景色は素晴らしく、低所から見えるのはコンクリートの壁だけ。三陸らしい質素な海岸線を間近に見ることはできない。

道自体は良いんですよ1

道自体は良いんですよ2

道自体は良いんですよ3

釈然としない気持ちのまま走り続け、北上川の河口を新北上大橋で渡る。以前来た時は橋が流されてしまっていて通れず、数キロ上流側にある別の橋を渡った(そして、橋の先にあるダイソーでコンビネーションレンチを買ってトップケース台座のネジを締め直した)。そのため新北上大橋は初めて通ることになる。

長い橋が遠くに見える

新北上大橋を渡る

橋を渡り、左折してすぐのところにある旧大川小学校に寄る。

ここまで来たら寄らないわけにはいかない

この遺構を残すこととした判断を讃えたい

当たり前であることがどれだけ大事かを思い知る

ここにあるものは一つ一つが重い。感情がおかしくなってしまって直視できないものばかりなのだが、きちんと目を通すことが自然災害多発国在住民の義務だと言い聞かせて全部読む。

とにかく無事に帰ろう。五体満足で帰ることが何よりも大事だ。そう思いながら先に進む。

雄勝町を経て女川の道の駅に着く。ここも南三陸と同じく混んでいるが、昼飯時なのでスルーせずに寄る。2011年、2012年と来ていて、当時は一部の廃墟が残る以外は更地だったが、JR女川駅から道の駅にかけては、今やアウトレットモールのようなお洒落空間に変貌している。

まあこれはこれで1

まあこれはこれで2

食堂で食っているほどの時間の余裕はないので、魚屋で売られている寿司を買って食う。おそらく鮮度はそれなりに高く、且つ癖のない味の魚ばかりで、逆にそれぞれの魚の違いがよくわからないまま食べ終わってしまった。要するに貧乏舌なのだろう。

地元魚介類の寿司

幾つか土産物を買ったりしていると結構な時間になってしまった。牡鹿コバルトラインの入り口はすぐそこだが、先っぽまで走って戻ってくると結構な時間がかかる。こりゃ帰宅はかなり遅くなりそうだ。まあでも焦ってもしょうがない。とにかく無事に帰ろう。

女川の道の駅を出る。ほんの少し走ると、10年前に見たのと同じ、何も無くなってしまった光景がそのまま残っている。お洒落空間になったのは道の駅周辺だけで、それ以外は何も変わっていない。どうするつもりなのかの計画を知らないのでこれ以上何も言えない。

途中で道をそれて牡鹿コバルトラインに入る。元有料道路だけに走ること自体はなかなか楽しいが、東北随一の都市である仙台から近いせいか、かっ飛ばし系のバイク集団が多い。面倒くさいので何度か先に行かせる。そして残念ながら景観はパッとしない。海は殆ど見えず、尾根を走るわけでもないので空もあまり見えない。ほとんど林の中を走っているので、大館から十和田湖への樹海ラインを走っているような気分になる。

走ること自体は楽しい1

走ること自体は楽しい2

クルマが少ない(何しろ走りきった先に何もないので)のは良いのだが、かっ飛ばしに来ているわけじゃないので、自分的には景観の方が優先度が高い。いつか景色が良くなるんじゃないかと思いながら、そこそこ長い距離のワインディングを走り続けると、最後までパッとしないまま終わってしまった。

入って比較的すぐのところにある駐車場 結果的にここが一番景観が良かった

終点の小さい駐車場

終点から少しだけ登ったところにある「おしか御番所公園」駐車場

おそらく最後の「おしか御番所公園」が一番まともな観光スポットだと思われるが、そこまでは本当に何もない。走りに徹するなら良い道だが、そこまで徹する気がなかったので拍子抜けだった。まあ良い練習ができたと思っておく。

牡鹿コバルトラインは山の中の道だったが、石巻までの帰路は海岸沿いを北上することにした。こちらは相変わらずの防潮堤に囲まれた新造道路と旧態依然とした道が交互に現れる道で、景観的にも道路的にもあまり面白みはない。遅いクルマが多いのも面白みを下げる要因だ。眠くなってきて、そろそろ石巻市街地というところでコンビニが現れたので寄る。

ガムを補給して再び走り出す。ナビはさっさと自動車専用道路に乗せようとするが、以前通った石巻の沿岸部がどうなったか気になったので、ナビを無視して海岸線の道を選ぶ。

2011年に来た時は鯨の巨大缶詰が横たわっていたエリアは、案の定嵩上げされ、巨大堤防の如き道が延々と続いていた。その道路の内側では、お洒落な一軒家がポツポツと建ち始めている。それなりの被害を受けたであろう古い建造物もそこそこ残っているし、更地になったままの空き地もある。まだ10年ちょっとなので色々と途上なんだろう。女川と同じくよそ者には何も言えない。

そろそろ自動車専用道路に乗らなければならない、というあたりでスーパーが現れたので寄る。これが最後の買い物だ。

どっかのクルマの石畳ロゴみたいなマーク

土産物に加えてエナジードリンクを買う。高速走行に備えてBluetoothヘッドセットを久々に起動し、Radikoで地元のラジオを選局する。服のバタつきやジッパーの閉まり等を確認して出走。矢本ICから三陸沿岸道路に乗り、すぐにそのまま仙台東部道路に切り替わる。そのまま南下して常磐道に入る。混雑確率が高い上に遠回りな東北道を選ぶメリットは、一部対面通行がどうしても嫌な人以外にはない。

そのまま南下して鳥の海PA(何ちゅう名前だ)でトイレ休憩。ラジオをなんとなく野球に変える。暗くなる前になるべく距離を稼ぎたいが、いわき四倉PAでエナジードリンクを補給したりした関係で茨城県に入る頃にはもう暗くなってしまった。ラジオの野球中継は終わり、その後は何故か1980年代の昭和歌謡が流れ出す。眠気防止にはこちらのほうが都合が良い。

給油のため日立南太田ICで常磐道を降りる。相馬IC以南はETCツーリングプランの範囲内なので乗り降り自由。このプランは実に都合が良い。給油後、すぐ近くにあるセイコーマートに寄る。本州のセイコーマートに寄るのはたぶん初めてだ。せっかくなので北海道っぽいものを幾つか買う。

こんなところでセイコーマートに出逢えるなんて

ガラナジュースとグミ、あとはGRANDIA缶コーヒー

再び日立南太田ICから常磐道に乗る。時折現れる電光掲示板によると、三郷のJCT周辺で渋滞っぽい。いつものことだ。晩飯をどうするかも含めて要検討なので、谷田部東PAで一旦停まる。守谷SAの食堂は混んでいるだろうし、渋滞解消のための時間稼ぎも兼ねて、柏ICで一旦降りてラーメンを食いに行くことにする。

柏で猛々しいラーメンを食う

食い終わって渋滞情報を確認すると、期待通り渋滞は解消していた。その先の首都高速も問題ない。ごく普通にそのまま進み、往路は通れなかった小菅〜葛西の快走高架路を走り、湾岸線の大井PAで最後の小休止。その後も湾岸線をひたすら走り、疲れているのでそのまま横浜横須賀道路を逗子まで走った。

そのまま帰りたかったが、燃費を確認したかったので自宅近くのGSで給油。そして燃費を確認すると、なんだか異様に悪い。14.5km/Lって一体何事だ? 入力値を確認したが何も間違っていない。

釈然としないまま自宅に向かうと、ゼロリセットしたトリップメーターが全く動いていないことに気付く。当然のようにオドメーターも動いていない。なんだよコレが原因か。日立南太田IC付近で給油した時は問題なかったっぽいので、その間のどこかで壊れたに違いない。Kのオドメーター不動病は有名な持病なので、とうとう廻ってきただけの話だろう。

そして23:40に帰宅。予定より4時間ぐらい遅れたが、無事に帰るという最大の目的は達成した。

総走行距離は1738km(最後のオドメーター停止区間はGoogle Mapにて経路を作成したものとマージ)。燃費は19.1km/L。良いとはいえないが、10年前の9泊10日ツーリングと大差ないので、こんなもんだろう。

元々荷物が少なかった上に、パニアケース&トップケースの積載量を存分に発揮し、久しぶりに多めの土産物になった。

総括

約10年ぶりの疾走系ロングツーリング。さすがに疲れたが満足感は高かった。それなりに慣れ親しんでいるはずの東北は、以前とさほど空気感は変わっておらず、なんか帰ってきたなーという気分になれた。

八幡平には行きそびれたが、概ね予定していたルートを走ることができた。Google Mapの機能向上により、複数地点を指定した事前のルート検討がしやすくなったので、想定所要時間を大きく外すことがなくなった。ガチガチにルートを決めてそのとおりに走るのはあまり好みではないが、ある程度の道筋ぐらいは立てておいたほうがよい。

有名どころ(過去に印象が良かったところ)を中心に据えたので、初めて走る道というのはさほど多くなく、幾つかの農道・小岩井農場の奥の方・牡鹿コバルトラインあたりが初走行だった。磐梯吾妻スカイラインや鳥海ブルーラインは安定の楽しさだったが、時間に追われて蔵王エコーラインがテキトーになってしまったのが残念だった。翌日に上位互換の八幡平アスピーテラインを通る予定だったので余計に雑になっていた。

気候は3日間ともほぼ問題なく、1日目の最後に一瞬雨が降っただけだった。ただし時間帯によっては寒く、2日目の朝は冬支度を強いられた。さすが東北の春は遅い。

ひたすら整備していたKは、以前から頻発していたABS警告灯以外は何のトラブルもなく走りきった。ABS警告灯は1日目の途中から視界から外したのでどうでもよい。燃料ポンプの音量が時折大きくなって不安にさせられたが、これも以前からわかっていたこと。2020年の長野ツーリング時と同じだ。

元々寿命が近かったタイヤは、今回完全にとどめを刺したようだ。距離が伸びなかったので2017年からそのままだったが、遂に交換の時が来てしまった。

10年ぶりに装着したトップケースはやはり便利で、安宿2泊3日程度なら左右のパニアケースとあわせて十分な積載量だった。

フルサイズ一眼レフを入れたウェストバッグを肩がけしたまま走ったが、3日間も走っているとさすがに肩にくるようだ。肩紐がかかっている左肩だけ痛い。フルサイズを諦めるか、振動対策をしてトップケースに入れてしまうか、どちらかにしたほうが良いだろう。

アクションカメラでの動画は、良い道と思われるところで都度撮ったが、以前のようにわざわざYouTube用の動画を作るかと言うと、そこまでの気力はない。そして、再度見直すことがあるかというと、たぶん無い。じゃあ何のために撮ったのかと言うと、結果的にはよくわからない。実は要らないんじゃないか。

動画より、むしろ走行中の写真の方がよほど重宝する(動画撮影中にボタンを押すと静止画が撮れる)。動画はどうでもいいので、静止画をササッと撮れるソリューションがほしい。もし動画を取るなら360度カメラで撮っておきたい。今の中華カメラは画角がさほど広くないので記憶を振り返るという観点では若干力不足なので。

総じて満足感の高いツーリングだったが、やらねばならない課題を1つ残した。

後日談

オドメーターの問題は、やはりギヤ破損が原因だった。交換して復活した

ABS警告灯は、一応エア抜きをやり直したりして再リセットしたが、どうせまたすぐに再発するだろう。

テールカウルはトップケースなし仕様に戻した。次に2泊3日以上のロングツーリングに行くのはどうせ1年以上先の話なので。ちなみに、トップケースやパニアケースに囲まれているせいか、塗装色とカッティングシートの色の違いは全然気にならなかった。わざわざ塗らなくてもこれで十分だろう。滅多にこの仕様にならないし。