ピアッツァ エンジン修理 Part1 どこに頼むか

ここ数年にわたって、エンジンの極めて不快な鼓動感と吹け上がりの悪さに悩まされてきたピアッツァ。思い当たる補機類はほぼ交換したものの全く改善には至らず、これはエンジン本体に問題があると言わざるを得ない、と自分の中では結論づけた。

不調なまま乗り続けるか、それとも直すか。

勿論直すに越したことはないのだが、以前から言われているバルブクリアランス調整だけで直るかというと、7:3で直らない気がしている。そうなると、かなりの工賃になるのは目に見えている。とても10万やそこらでは済まないだろう。

そこまで思いきれるかどうか、いつ踏ん切りがつくか、だけの問題だったのだが、5月末に箱根新道と芦ノ湖スカイラインを走った時の走行感が貧相極まりないものであり、我慢の限界を超えた。どうせ夏になったら乗らないのだから、長期間預けてしまっても何ら問題ない。ワンオフマフラー装着後の車検を発端にして色々と手を付け始めてから1年半、遂に踏ん切りをつけることにした。

どこに頼むか

問題はどこに頼むか。いすゞに強い、G型に強い、なんていう工場は望むべくもない。昔はあったが今はほとんど無い。G型の経験があればベター、そんなの無くてもいいからやってくれそう、という選択肢を探すことになる。

  • エンジンOHを売りにしている、もしくはやった実績を公開している
  • 純正部品がなくてもワンオフや流用を駆使してなんとかしてくれそうな雰囲気がある
  • 古い車、マイナー車に理解がありそう
  • できれば近いほうが良い

といった条件でネットを探る。結果的に、旧車に強い店、またはレースに強い店が主な候補となる。いわゆるチューニングショップでも、レースに強い店のほうがなんとかしてくれそうな雰囲気はある。

とりあえず自宅がある半島内で探し、比較的近いところに1件、エンジンに強そうでレース参戦実績もある工場を見つけた。昼休みに電話してみると「いすゞはできない」という明確な理由で断られた。これは何の問題もない。できそうもないことを無理矢理やろうとしてもお互い不幸であり、できないことはできないと断るのは大変重要なことだ。

続いて、同じく半島内にあるレースに強い店に電話してみる。こちらは「無いものは作る」というスタンスの店である。とりあえず見せてほしい、ということになり、訪問のアポを取る。少なくとも門前払いではなかったので期待はできる。

既にかなり暑くなっていた6月末、予定通り店を訪問してピアッツァを見てもらった。

圧縮を測定したり、シリンダー内をマイクロスコープで見てもらったりした結果、やはりバルブクリアランスが怪しいので調整する価値はある(ただし部品があれば)という話になった。持参していたサービスマニュアルにシムの部品番号が掲載されていたので、それのコピーを取ってもらい、在庫確認の結果待ちということになった。

数日後に電話が来た。シムの在庫は皆無で、他車流用もできないわけではないが開けてみないとわからない、ワンオフもできるかどうか約束できない、そして現在多忙で長期間にわたって修理待ちの車を置いておく場所もない、といった回答で、まあ要するにやんわりと断られているということである。こちらはどちらかというと車体に強い工場なので、エンジンに関してはあまり強気に出ないのかもしれない。お互いの都合が合致しないということなので、潔く引き下がり、他をあたってみる旨を伝えた。

選択肢を狭める

これまでのやり取りの結果、依頼先候補を狭めざるを得ないと感じた。具体的には、次のような条件になる。

  • 長期間にわたって置いておくことができる程度の企業規模(敷地面積なり何なり)がある
  • エンジンに強く、シム程度であれば難なくワンオフで作ってしまう類の工場である

特に前者が問題だ。預ける側は軽視しがちだが、工場側からするといつまでも場所を専有して解決策が見えない車両を扱いたくないのは明らかで、それは工場の建屋や敷地が場所が狭いところであるほど顕著になる。その条件により幾つかの工場が候補から外れた。もはや半島内だとか湘南エリアだとか言っている余裕は無くなり、県内であればベター、関東一円なら良し、といった方向性になる。

ここまで狭めてしまうと、候補自体が極端に減る。その中で、最もやってもらえそうで且ついすゞに縁がある小山ガレージに連絡をとってみた。これまでの2回は何となく電話にしたが、今回はメールにしてみた。依頼に至った経緯、近年の修理履歴、自作YouTube動画も添える。

問い合わせメールの返信は案外早く来た。とりあえず実車を見てみたい、とのことだが、かなり前向きで、やってもらえそうな雰囲気が感じられる。なお、ヘッドカバーを開けたりする調査工賃として5〜6万必要、但しそのままエンジンOH等の修理作業に入るのであれば調査工賃は不要、とのこと。

このあたりは自分の本業たるシステム屋視点からもよくわかる話である。問題解決というものは、最初のとっかかりの調査が肝で、以降はその見立てに沿って多少の試行錯誤を交えながら実施する。きちんと調査しないと見積も何もできない。それにはそこそこの時間がかかり、結果として工賃が発生するのは当たり前の話だ。それをきちんと事前に宣言して請求するのは正しい姿で、信頼できそうな会社と言える。

そんな能書きはさておき、そもそも引き受けてくれる(そんな雰囲気がある)だけで儲けものである。調査だけ実施して調査費用を払ったものの結局お断りになる可能性もゼロではないとわかっていつつ、そうなることはまず無いだろうと信じて、今後の段取りを詰める。7/10(土)の朝に持ち込み、そのまま入庫して調査に入る方向で、ということで話がまとまる。

小山ガレージ訪問

暑くなる前に家を出る。予定通りに進めばそのまま入庫して調査に入るため、この場所とはしばしお別れになる。

小山ガレージの工場は、横浜市内ではあるが最北東部の鶴見区のため、自宅からはそこそこ遠い。暑さに苦しみながら一般道を進んで1時間10分ほどで到着した。フロントの方、そして整備担当の方とピアッツァを前にして現象の説明等をしていると、そこに社長が現れた。こちらの社長さんの存在こそが、小山ガレージが小山ガレージたる所以である。後でわかったことだが、基本的に物事の最終判断は概ね社長判断で行われているようだ。

以前のメールの内容は社長に伝わっており、早速エンジンをかけてみよう、ということになる。そしてズボボボ音を聞いた社長が行動に出る。

・おい、ちょっと3番のプラグ抜いてくれ
 →整備担当の方がプラグを抜く
 →音を聞きながら何かブツブツ言う
・おい、3番のインジェクタを抜いてくれ
 →整備担当の方がインジェクタを抜く
 →また何か言う
 →タペット音はほぼ聞こえないので、これはECU、エアフロセンサー、O2センサーのどれかであると断言

ECUとエアフロセンサーは中古品に変えてみたがあまり変わらなかった旨を伝えると、じゃあO2センサーだろうと断言。

O2センサーは互換品を持ってきていて、変えてほしい旨を伝えてあったので、フロントの方がそのことを言うと、

・よし、じゃあそれに替えよう
・エンジンが冷えるまで待ってから替えよう
・お客さんには事務所で待ってもらってくれ

といった感じで、てきぱきと判断して物事を進めていく。そして俺とフロントの方は工場上層階の事務室に移動し、冷たいペットボトルのお茶をいただいてO2センサー交換結果を待つ。待ち時間にフロントの方から社長の様々な武勇伝を伺う。大変面白い話だったのだが、ここで内容を書くことは差し控える。

入庫確定

暫し待ったものの、結局O2センサーは固くて外れなかったようだ。工具を作って外すので時間をくれ、結果は後日連絡する、ということになった。以前自分でやろうとしたときもビクともせず、素人が無理してやって折ったら洒落にならないので諦めたのだが、プロがやってもSSTを作らないとできないのだから、さっさと断念して正解だった。

そのへんの説明も社長が饒舌に語ってくれたのだが、話の流れで以前ニッパで腰下OHをした際は20万ちょっとだった、なんていう話をすると「それはOHとしてはタダみたいな値段だ、うちはきっちりやるから60万ぐらいかかる」とのこと。価格は考慮しないと決めているので何の問題にもならない。いすゞはまだ部品はそこそこ出るけど、出るうちにやれることはやっておいたほうが良いといすゞの人にもよく言われる、なんていう話をされたので尚更だ。

というわけで、小山ガレージに入庫することが確定した。フロントの方に綱島駅まで送っていただく。その間に「他に問題があるところはないのか」等の話になり、フロントブレーキがスカスカで、且つ踏むと左に寄る現象を伝え、なんとなくそれも一緒にやってしまおうという話の流れになった。但しエンジンが首尾よく直ったらの話ではあるが。

綱島からは東急で横浜に出て、久しぶりに横浜ヨドバシを散策して最新型カメラを確かめたり、わざわざ日の出町で降りて「たかさご家」でラーメンを食ったりと、通勤していた頃は普通にやっていた行為を堪能してから帰宅した。そして、ピアッツァが居ないのをいいことに、空いている空間にヤフオクで安価で落札したスクリーンタープを建て、わざわざその中に入って焼き鳥を焼き、無事の入庫を祝った。

なお、この時点では「1ヶ月ぐらいで終わらせ、盆休み前には納車できるように進める」想定だったのだが、結果的にどうだったのかは…